NFL開幕!
今季スーパーボウルも昨季と同じ顔ぶれ?
文&写真/金岡美佐(Text and photos by Misa Kanaoka Seely)
- 2015年9月5日
いよいよ9月10日にNFLが開幕する。2月上旬のスーパーボウル終了後、開幕まで7カ月と長いが、3月にはフリーエージェンシー解禁、4月にはドラフト開催、5月と6月には散発的な練習実施、7月末にはトレーニングキャンプが始まるため、オフシーズン中も話題には事欠かない。不祥事で話題を提供してしまう選手も少なくなく、今年はリーグのポスターボーイでもあるニューイングランド・ペイトリオッツのQBトム・ブレイディが渦中の人となった。
インディアナポリス・コルツと対戦した今年1月のAFCチャンピオンシップで、ブレイディが規定値よりも低い空気圧のボールを使用していたという「デフレートゲート」が発覚。4カ月を費やした調査の結果、決定的な証拠はないが、チームのスタッフが意図的に空気圧を下げていたことをブレイディは恐らく知っていただろうという歯切れの悪い結論に達し、チームには罰金処分とドラフト指名権の剥奪が言い渡され、ブレイディには4試合の出場停止処分が科された。

オフシーズンも注目の的になったトム・ブレイディ
Photo © Misa Kanaoka Seely
処分を不服としたブレイディはリーグに異議を申し立てたが、認められず、連邦地裁へ提訴。開幕まで1カ月を切った8月12日、裁判所の命令で和解協議が開かれたが、処分の完全撤回を求めるブレイディとNFLとの間で協議は難航した。この記事が読者の目に触れる頃には決着が付いているはずだが、真相がどうであれ、ペイトリオッツのファンはブレイディの言い分を支持するだろうし、常勝チームを嫌うアンチ派は2007年の「スパイゲート」の前例があるだけに疑いを拭い切れない人も多いだろう。
ブレイディ抜きでも勝ちたいペイトリオッツ
そのペイトリオッツだが、ブレイディの出場停止処分が発表された時点から今季のAFC優勝候補に挙げられている。ペイトリオッツは今オフ、NTビンス・ウィルフォークやCBダレル・リービスなどのディフェンスの主力選手が他チームへ移籍。オフェンスもブレイディとTEロブ・グロンカウスキを除き、プロボウル級の選手がいない地味な顔ぶれだ。しかし、ブレイディがシーズン序盤中に復帰し、ビル・ベリチック監督が健在なら、今季もスーパーボウル出場を狙えるとアナリストの評価は依然として高い。
もっとも、ペイトリオッツにとって願ってもいないシナリオは、ブレイディを起用せずに勝ち進むこと。プロ入り2年目の控えQBジミー・ガロポロが活躍すれば、今季のみならず、将来も安泰する。奇しくもブレイディが先発QBに定着したのもプロ入り2年目。当時の先発QBドリュー・ブレッドソーが故障欠場した2001年、代役から主役へ昇格し、そのままスーパーボウル優勝の頂点まで上りつめた。そのブレイディも今年は38歳。ペイトリオッツはそろそろ後継者を見極めたい。
2年ぶりに王者復活なるか?シーホークス
そのペイトリオッツを相手に、逆転のタッチダウンまで残り1ヤードを獲得できず、スーパーボウル2連覇を阻まれたシアトル・シーホークスは今季もNFC優勝候補に挙げられている。オフシーズンにはQBラッセル・ウィルソンをはじめ、生え抜きの若手選手との契約延長をすませ、主戦力を長期的に確保。更にニューオーリンズ・セインツとのトレードでTEジミー・グラムを獲得。RBマーション・リンチを軸としたラン主体の攻撃スタイルに変わりはないが、スーパーボウルで泣かされたゴールライン前では、身長201センチ、体重122キロの高さとパワーで圧倒するグラムの加入で攻撃の幅が大きく広がる。

4年、8760万ドルで契約を延長したラッセル・ウィルソン
Photo © Misa Kanaoka Seely
これまで地区優勝を争ってきたサンフランシスコ・49ersが昨季から急激に失速しているのもシーホークスにとっては追い風だ。4年ぶりにプレーオフ出場を逃した49ersは、チーム首脳陣との不仲が伝えられたジム・ハーボー監督を事実上解任。LBパトリック・スミスなどディフェンスの主力選手の引退が相次ぐ中、才能に恵まれながらも警察沙汰が絶えなかったLBアルドン・スミスを遂に解雇し、前途多難のシーズンが予想されている。
今季見逃せない選手

Photo © Misa Kanaoka Seely
JJ・ワット(テキサンズDE)
昨季のディフェンスMVP。本職は敵のオフェンスラインを押し破ってQBにプレッシャーをかけたり、ランプレーを封じたりする役目だが、6年1億ドルの大型契約を手にした昨季はオフェンスでも出場。3回もタッチダウンパスを受ける万能ぶりを発揮した。攻守両面で活躍し、素行面でも模範的なワットは好感度抜群。すっかりリーグの顔的存在だ。ラインの左右内外と守備位置がよく変わるが、左腕につけた黒いブレースが目印だ。

Photo © Misa Kanaoka Seely
オデル・ベッカムJr.(ジャイアンツWR)
昨季のオフェンス新人王。11月のカウボーイズ戦で見せた片手キャッチの記憶が鮮明に残っている人は多いはずだ。エンドゾーンに背を向け、ジャンプしながら腕を高く突き出し、右手に吸い付かせるようにボールを捕らえたタッチダウンは、近年のベストプレーと絶賛された。片手キャッチはルイジアナ州立大時代からお手の物。試合前にも欠かさずドリル練習を行っている。ジャイアンツの試合を見に行くなら、開場と同時にスタジアムへ入りし、練習風景もお見逃しなく。
今季注目の試合
シーホークス対パッカーズ(9月20日@グリーンベイ)
シーホークスと並んで今季のNFC優勝候補に挙げられるのはQBアロン・ロジャース率いるグリーンベイ・パッカーズ。昨季は開幕戦でシーホークスに敗れ、NFCチャンピオンシップでも再びシーホークスに敗れてシーズンが終了した。NFCチャンピオンシップではシーホークスを前半無得点に抑え、第4Q残り1分半までリードしていたが、延長戦の挙句の果てに逆転負け。今季もプレーオフで再対決する可能性が高く、この試合はその前哨戦となる。
ペイトリオッツ対コルツ(10月18日@インディアナポリス)
昨季のAFCチャンピオンシップの再現だ。あの試合でコルツにインターセプトされたボールからデフレートゲートへと発展。ブレイディにとっては因縁の試合で、昨季の圧勝はボールとは無関係だと証明したい。コルツはQBアンドリュー・ラックがデビューした2012年はワイルドカード、2013年はディビジョナル、昨季はカンファレンス優勝戦へと着実にプレーオフを勝ち進んでおり、この調子でいけば今季スーパーボウル出場も夢ではない。
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