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原油安、地域経済の脅威に
シェール・ブームの地に不安
- 2015年10月5日
シェール・ブームにわいたテキサス、ノースダコタ、ルイジアナ、コロラド、ペンシルベニア、アーカンソー、オハイオなどの石油生産地は、原油価格の下落で急速に景気が冷え込んでいる。
ニューヨーク・タイムズ(8月14日付)によると、テキサス州カーンズ郡はつい5年前まではほんの小さな石油の産地だったが、フラッキング(水圧破砕法)の導入によって状況が一変。生産量は州最大となり、人も増えて街がにぎわい、新しいレストラン、商店、ホテルなどができて学校や病院の建設も始まった。
しかし最近は、遠くから集まった労働者たちが解雇され、土地の賃貸料収入で突然金持ちになった農家は豊かな時期に購入した新しいトラクターの支払いなどが滞りがちになっている。
かつて多くの作業現場で使われていた簡易貯水タンクや簡易トイレは道端に積み上げられ、郡のヴィー・マローン財務官は「かつてはすべてが順調で、誰もが大金を得て、土地を借りたいという話を待っていたが、この年初あたりから突然ブレーキがかかった」という。
原因は、2014年夏に1バレル=100ドルを超えていた原油価格が45ドル以下に下落したためで、春に一時的に回復したものの、米国の代表的油種であるWTI原油は再び25%以上低下し、前週はリセッション以来の最安値を更新している。
この下落は、米国の記録的な生産増とイラクやサウジアラビアの生産増に加え、イランの石油も世界市場に流れ込むという見通しを受けて市場で売りが殺到したためだが、米業者の生産効率が高まったことも供給過剰に拍車をかけている。
一族が5本の石油・ガス井を持っているというカーンズ郡の看板製造業者エリオット・スクロス氏は、1年前には毎月5万ドルに上った関連収入が今は10分の1に減り、「人々は働かなくてもよかったが、このまま値が戻らなければ働くか物乞いをしなければならなくなる」と話している。
かつて土地1エーカー当たり4万ドルになることもあったカーンズ郡の採掘権は、今は1万5000ドル。今年は郡の税収も10年以降初めて下がり、その減少幅は20%以上となっている。
ロイヤル・ダッチ・シェル、シェブロンを含む多くの石油会社はこの夏、人員削減を強いられており、テキサス州のイーグル・フォードに優良資産を持つチェサピーク・エナジーは事業資金を確保するために配当の支払いを停止した。
リン・エナジーも、手持ち資金を蓄えるために投資家への配当を中断する意向を発表している。
これまで指標より高い取引価格の契約に守られていた生産者も、徐々に契約期限が迫ってきており、井戸関連の資産を担保にローンを組むにも、簿価切り下げで借りられる金額が制限されている。
コンサルティング会社IHSが66社を対象に実施した最近の調査では、15年は第1四半期だけで簿価切り下げ額が計約290億ドルに上り、14年通年の合計を軽く超えている。
イーグル・フォードでは価値の下がった資産の売買が始まっており、今後も業界の統合はさらに進行する見通しで、石油業界の就職斡旋会社スウィフト・ワールドワイド・リソーシズは、世界の油田労働者の解雇は17万6000人以上に達したと推定している。
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