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宅配激増にアパート大家泣く
賃貸暮らし、ネット購入の増加で
- 2015年11月7日
- 2015年11月20日号掲載

賃貸アパート暮らしの増加とオンライン・ショッピングの普及という二つの流れを受けて、アパートの大家が大量に届く小包の取り扱いに苦慮している。
ウォールストリート・ジャーナルの10月20日付の記事(“Web-Shopping Deluge Boxes In Landlords”)によると、米国のオンライン小売売上高は2013年の2630億ドルから、15年には3340億ドルに増える見込みで、19年には4800億ドルに達すると予想されている(フォレスター・リサーチ調べ)。
今やアパートの管理事務所は小包の集配センターと化しており、担当者は到着荷物の記録、入居者への連絡、保管場所の確保などに追われている。
10州とワシントンDCで169棟を管理する米アパート経営14位のカムデン・プロパティ・トラスト(Camden Property Trust、テキサス州)は今年、全世帯約5万9000戸の小包の受け取りを停止した。同社が14年に受け取った小包は約100万個に上り、最近は年50%のペースで増えていた。小包1個につき約10分の生産性が失われ、従業員の時給を約20ドルで計算すると損失は年約330万ドルに上ったという。
8万3000戸を所有する業界10位のアバロンベイ・コミュニティーズ(AvalonBay Communities、バージニア州)は、一部の物件で電子ロッカーを試験導入し、配達員がロッカーに小包を入れ、住民はそれを開く暗証番号を受け取るようにしている。ほかに、暗証番号入力キーパッドと監視カメラを設置した上で入居者に荷物保管室への入室を認める大家や、各戸の玄関ドアを開けて荷物を置く許可を求める大家もいる。
ニュージャージーからフロリダにかけてアパート3万1000戸を管理するゲイブルズ・レジデンシャル(Gables Residential、ジョージア州)のクリスティーナ・サリバン副社長は「従業員ができるだけ小包に関わらない方法を目指している。ミドルマンになりたくない」と話す。
一方、10万8000戸を管理する業界最大手エクイティ・レジデンシャル(Equity Residential、イリノイ州)は、今年300万個の荷物を受け取る見通しで、少しでも管理を容易にするため荷物の大きさや重さを制限している。デイビッド・サンティ最高業務責任者(COO)は「あるアパートの事務所を訪れて高さ5フィートの像が入った約500ポンドの木箱を見た時、扱う荷物はせいぜい50ポンドまでだと思った」という。
ハーバード大学住宅研究合同センターによると、国内の賃貸住宅世帯数は04年以降、年平均77万戸のペースで増えている。今は空室率が低く売り手市場で、大家は厳しい規則を導入できるが、今後は高級市場を中心に新築アパートが増えるため、宅配荷物の受け取りを拒むと下げ市場の時に入居者が減るリスクもある。
現在、荷物を預かってもらえないカムデンの入居者は最寄りの郵便局か宅配業者の集配所で受け取るか、送り先を職場や友人、家族宅にしなければならない。
ヒューストン在住のある入居者(26歳)は、オンライン購入の回数を減らし、母親のアパートに送るようにしたが「荷物の受け渡しはほとんど基本サービスで、建物の保守点検をやめると言っているようなもの」と不満を隠さず、賃貸契約の期限が来たら更新しないつもりだという。
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