[新春インタビュー] シルク・ドゥ・ソレイユ「KURIOS」ロサンゼルス公演に出演中
ヨーヨー世界チャンピオン「BLACK」
文/佐藤美玲(Text by Mirei Sato)
- 2016年1月1日
世界中で人気がある「シルク・ドゥ・ソレイユ」(Cirque du Soleil、以下略称シルク)の話題作、「KURIOS」がロサンゼルスで2月7日まで上演中だ。このショーに、日本人のアーティストで、ヨーヨー世界チャンピオンの「BLACK」さんが出演している。さまざまな分野のトップパフォーマーが集まるシルクだが、ヨーヨーの演目が採用されるのはこれが初めてだ。夢を叶え、シルクの歴史も変えた、BLACKさんにインタビューした。
ロサンゼルスのドジャースタジアムでの公演。こけら落としである初演日(2015年12月9日)は、私も鑑賞しましたが、観客側からは凄まじい熱気と興奮を感じました。出演者側としてはどう感じましたか?
プレミア公演にはVIPの皆さんやメディアの方々が多くお越しになり、皆さんからの評価・感想は、その都市での集客を大きく左右します。
もちろん我々アーティストはプレミア公演も普段の公演も等しく全力を尽くすのみですが、それが目の肥えた観客の皆さんに喜んでいただけたことは大変嬉しかったですし、演技を通じたコミュニケーションが成立していることを強く実感しました。
初演日には、シルク創業者のGuy Laliberté氏も鑑賞されたそうですね。何かお話はされましたか?
私がKURIOSで実際に演技を行っている様子をGuy氏にご覧いただいたのは、実は今回が初めてでした。
シルク・ドゥ・ソレイユ初のヨーヨー・アーティストとして私への評価は、シルクにおける「ヨーヨー」という演目そのものへの評価、すなわち今後、第2・第3のヨーヨー・アーティストの活躍の場を作れるかどうかに直結します。
慌ただしい中だったため、交わした会話は「素晴らしかった」という一言だけでしたが、お褒めいただけたこと、前向きな評価をいただけたことにホッとしました。
実際に会場で観覧した際、ビッグ・トップ(移動型のテント)というサーカス独特の会場が生み出す、アーティストと観客の一体感が心地よかったです。観客との距離も近いため、アーティストの演技もさらに精度を要求されるのではないかと思いましたが、いかがでしょうか?
KURIOSのステージは、ビッグ・トップで公演される他のショーと比較し、高さを低めに設計されています。アーティストの目線を少しでも観客の皆さんに近づけることで心の距離を縮め、より世界観を共有し楽しんでいただきたい、という狙いからです。
演技の精度という意味では、「ソロ演目である」という部分が大きいです。多くの演目が複数名で行われる中、ヨーヨー演目の出演者は私一人です。皆さんの視線が私一人に集中するため、ヨーヨーの技はもちろん、身体の動きを含め、一挙手一投足気が抜けません。
BLACKさんは、シルクに出演する初めてのヨーヨー・アーティストだと聞いています。「サーカスという舞台で前例のない演目を演じる」という点で、どんな苦労やチャレンジがありますか? また、それに対して、どういった工夫や努力をしていらっしゃいますか?
まず大前提として、ヨーヨーは小さな道具なので大舞台で見栄えがしない、という問題がありました。そこで、パフォーマンス専用の巨大ヨーヨーを開発しました。競技用のヨーヨーは直径が1mm違うだけで使い心地が大きく変わるのですが、私のヨーヨーは平均より20mm以上大きく、設計をイチから考え直す必要がありました。
鳥取の金属加工会社「菊水フォージング」様にご協力いただき、3年以上の期間をかけて開発しました。ヒモももちろん特注で、長いヒモ・重いヨーヨーから生み出される遠心力に負けずヨーヨーを操れるよう、スポーツジムに通いトレーニングもしました。
また、振り付けを考案する際も、ヨーヨーという分野においては参考になる先人がほとんどいないので、他の分野のパフォーミングアートを参考にしています。バレエやフィギュアスケート、社交ダンス、TVゲームやアニメを参考にすることもあります。
先人がほとんどいないということは、言い換えれば自分で開拓する余地が無限に広がっているということですので、先入観にとらわれない自由な発想を心がけつつ楽しんでいます。
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