「お金じゃなくて仕事を」ホームレス対策
ニューメキシコ州アルバカーキで

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 ニューメキシコ州アルバカーキが、ホームレス対策として導入した、「お金より仕事を」という取り組みが注目されている。
 12月7日付のニューヨーク・タイムズの記事(“Albuquerque, Revising Approach Toward the Homeless, Offers Them Jobs”)によると、アルバカーキ市では、2015年の夏以降、街角で物乞いをする人たちに罰金を科したり連行したりすることを減らした。代わりに、ホームレスが多く集まる場所を定期的に訪問し、巨大なビルボードなどを使って市民に寄付を呼びかけた。ホームレスに小銭を恵むのではなく、寄付をしてそのお金でシェルターなどのホームレス支援プログラムを強化するのが目的だ。
 さらに、毎週2回、市内各地でホームレスの人を集めて車に乗せ、公園や空き地などで清掃作業の仕事をしてもらう取り組みも始まった。時給は9ドルで、サンドイッチやチップスなどの昼食もつく。
 きっかけは、2014年に統合失調症をわずらうホームレスの男性が、アルバカーキ市警によって射殺される事件が起きたことだった。
 もともとアルバカーキ市警は、射殺率がニューヨーク市の8倍にものぼるほど、悪名高い警察だ。ホームレスを含む精神疾患をもつ人たちが警察の暴力の被害者になっている、という指摘があり、司法省も厳しく批判してきた。
 前述の射殺された被害者の遺族が、市から賠償金500万ドルを受け取り、それをもとに、市にホームレス支援チームができた。
 清掃作業に参加した40代の女性は、働くことで、路上生活で失った誇りを取り戻せる、と話す。一方、20代のドラッグ中毒の男性は、清掃に参加した後、給与をもらうとすぐにドラッグを買うために姿を消した。
 ホームレスの急増は、全米の各都市で問題になっており、オレゴン州ポートランドなどが緊急事態を宣言した。アルバカーキの取り組みは、こうした都市の注目を集めている。

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