日系2世兵士を「記念切手」に! ホワイトハウス署名活動、3月20日までに10万人めざす

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

 ハリー・ポッター、バットマン、ペンギン、エルビス・プレスリー、マザー・テレサ…。アメリカの「記念切手」になった有名人、歴史上の人物、キャラクター、動植物は、数え切れない。

 しかし、その中に、第2次世界大戦で勇敢に戦った「日系アメリカ人2世の兵士たち」がいないのは、おかしいのではないか?彼らこそ、記念切手の題材にふさわしいのではないか?

 オバマ大統領、いまこそ彼らを切手に!そう訴える運動が、いまアメリカで盛んになっている。

記念切手の実現をめざすグループがつくったデザイン案Courtesy of TheyDeserveAStamp.org

記念切手の実現をめざすグループがつくったデザイン案
Courtesy of TheyDeserveAStamp.org

 アメリカ人であるのに、日本の血を引くという理由で差別され、強制収容所に送られた。家族と名誉を守るため、自分を裏切ったその国に、あえて忠誠を誓って戦地に赴いた。「自由と平等の国・アメリカ」の旗をふって、ヨーロッパ戦線の激戦地で体を張り、ナチスのユダヤ人強制収容所を解放した。多くの命が失われた。

 受けた勲章の数は、米軍史上最多。日本語を駆使し、沖縄上陸作戦や戦後の日本占領統治を通じて、アメリカの情報戦争勝利と日本の民主化、日米の戦後の友好にも、大きく貢献した。

 そんな彼らに、せめて「記念切手」で報いたい。遺族らが中心となって呼びかけ、ホワイトハウスのウェブページ「We The Petition」で、2月19日から、署名活動が始まった。

 米国郵政公社(USPS)は、記念切手の候補や推薦を受けつけている。毎年、さまざまな記念切手が発行されるが、人物や歴史に限っていえば、まだ多種多様なアメリカを反映しているとは言いがたい。

 日系2世の兵士たちを記念切手に、という動きは、実は10年前から続いているという。しかし、USPSは動かなかった。

 2017年は、強制収容から75年という節目の年を迎える。高齢化で、多くの2世がこの世を去っていく。時間はあまり残されていない。今度こそ、オバマ政権になんとか聞き入れてもらいたい、という願いを込めて、署名集めに至った。

 全米組織の「Go For Broke National Education Center」や、ハートマウンテン強制収容所のドキュメンタリー制作などで知られる映画監督のジェフ・マッキンタイア(Jeff MacIntyre)さんらが、運動を後押しする。

www.StampOurStory.org

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 ホワイトハウスのウェブページ「We The Petition」には、さまざまな団体や個人から、さまざまな請願が投稿される。ここで、30日以内に、10万人の署名を集めることができれば、オバマ政権がその請願の内容に目を通し、なんらかの返答をしなければならないことになっている。

 過去には、1984年に、レーガン大統領が「ヒスパニック系アメリカ人」の記念切手発行のために尽力したことがあったという。

 署名は、アメリカ以外の国に住んでいる人や、外国籍の人でもできる。入力しなければならない情報は、名前とEメールアドレスだけだ。

 運動の中心的役割を担っている、日系3世のウェイン・オーサト(Wayne Osato)さんによると、日系2世の兵士のおかげで解放されたという記憶や記録が多く残っているフランスから、署名してくれた人もいるという。

 10万人を集めなければならない期限は、3月20日(日)までだ。目標数には、まだまだ遠い。オーサトさんらは、日本からも、日系人の歴史に関心のある人たちに、ぜひ署名してもらいたい、と願っている。

 いまのアメリカでは、大統領候補になろうともいう人間が、差別や偏見、移民排斥を、声高に叫んで、人気を博す。それが、テレビで当たり前のことのように流れている。

 たかが切手、されど切手、である。アメリカ人とは誰か。愛国心とは何か…。その定義と理解を正し、深めるきっかけになるはずだ。

⚫︎ホワイトハウスの署名サイト
https://petitions.whitehouse.gov/petition/get-postmaster-general-honor-story-japanese-american-world-war-ii-veterans-commemorative-stamp

⚫︎2世兵士の記念切手実現化をめざす運動のサイト
TheyDeserveAStamp.org

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佐藤美玲 (Mirei Sato)

佐藤美玲 (Mirei Sato)

ライタープロフィール

東京生まれ。子供の時に見たTVドラマ「Roots」に感化され、アメリカの黒人問題に対する興味を深める。日本女子大英文学科アメリカ研究卒業。朝日新聞記者を経て、1999年、大学院留学のため渡米。UCLAアメリカ黒人研究学部卒業・修士号。UMass-Amherst、UC-Berkeleyのアメリカ黒人研究学部・博士課程に在籍。黒人史と文化、メディアと人種の問題を研究。2007年からU.S. FrontLine誌編集記者。大統領選を含め、アメリカを深く広く取材する。

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