今年2月、アカデミー賞主演男優賞をレオナルド・ディカプリオらと競ったブライアン・クランストンが再び賞レースに殴り込みをかけるのが本作「The Inflitrator」。実際にあった大捕物に貢献した潜入捜査官ロバート・マズールによる原作本の映画化で、クランストンはマズールに扮する。
潜入捜査官はある意味、命がけの俳優と言える。作り上げた人物に成りきって犯罪者と渡り合い、絆を築いていくが、少しでもボロが出れば捜査が台無しになるだけでなく、自分はおろか家族の命も危なくなる。本作でクランストンは、素顔は妻一筋のマイホーム・パパながら、潜入捜査の際には冷血でモラルが欠如したビジネスマンになりきったマズールをこれ以上ないほどにリアルに演じた。クランストンの強みは、どんなに冷血なキャラを演じても、自身が持つ暖かみのある好感度の高いパーソナリティーが滲み出ることだ。ユーモアのセンスも抜群の彼は、記者会見でいつも我々を笑わせ、そして、暖かい気持ちにさせる。エミー賞で受賞記録を作った出世作「Breaking Bad」に似た性質を持つ本作でのマズール役は、クランストンにとってハマリ役。映画賞狙いの公開時期とはズレており、また、小規模な作品ではあるものの、再びオスカー候補入りを果たしてほしい名演だった。
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