メッセージ性の強い映画を作ってきたスパイク・リー監督が、シカゴの犯罪を題材に反暴力をコメディータッチで描く「Chi-Raq」は、2500年前のギリシャ喜劇「女の平和」のリメイク(?)。アテネとスパルタの間で長年続く戦争に辟易した女性たちがセックス・ストライキを起こして平和を勝ち取るという同喜劇を、2大ギャングの抗争で多くの人命が失われるシカゴに舞台を換え、女たちが立ち上がるストーリーにした。コメディーの要素を取り入れつつも感動シーンをしっかり描き、同地区で熱心に活動する白人神父や混血妻を持つ白人市長を登場させて黒人だけの映画にしていない演出、そして、問題なのは銃ではなく、雇用の場の少なさといった社会問題だと訴求して大団円を迎える力量に舌を巻く。
敵対するギャングのボスに扮するのは、ニック・キャノンとウェズリー・スナイプス。マライア・キャリーの元夫キャノンは、コメディアン兼司会者として有名だが、実はドラマ演技も上手い俳優。映画主演作「Drumline」の演技に感心していた筆者は、本作で彼の才能を再び堪能できて嬉しかった。脱税で服役後、映画界に復帰したスナイプスが、本作でコミカル演技を披露しているのにも注目したい。また、アンジェラ・バセットとジェニファー・ハドソンの重厚演技にはひれ伏してしまった。
ちなみにタイトル(「しゃいらっく」と発音)は、「イラクのように戦場化しているシカゴ」という意味で、地区の呼び名として実際に住民が使っているとか。
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