アーロン・エッカートという俳優の存在を初めて知ったのは映画「Erin Brockovich」でのワイルドなバイク野郎、ジョージ役。「セクシーでワイルドな新顔俳優。今後が楽しみ」と思ったものだ。
その後、彼は、次々と映画に出演。大作、話題作での主役や重要な役をこなしたり、地味なインディー映画にも出演したりとバラエティーに富んだ仕事のチョイスをしている。「Thank You for Smoking」で実力をアピールし、「The Dark Knight」の悪役トゥーフェイスで世界的な知名度をアップした。「Battle Los Angeles」ではマッチョな兵士を、「Olympus Has Fallen」ではアメリカ大統領を演じ、キャラクターもバラエティーに富んでいる。そんな中、最新作「Sully」と「Bleed for This」を観た時、「熟した俳優」という言葉がピッタリの演技を見せていて嬉しくなった。
筆者はこれまで多くのタレントにインタビューしてきたが、取材した回数がダントツ多いのがアーロン。作品の規模に関わらず、できるだけ記者会見やプレミアに出席してプロモーションに貢献する彼は、映画記者にとって嬉しい存在だ。出席率のみならず、受け答えからも真面目な性格なのが感じられる。加えて、ティーン時代に外国に住んだ経験があるだけに、なまりのある英語や文化の違いに抵抗がないのも日本人の筆者としては嬉しい。
「Bleed for This」では、ハゲで中年太りのトレイナー役に挑戦したアーロン。記者会見に現れた彼は、しっかり髪の毛があったので、頭髪について突っ込むとユーモアを交えてこう答えてくれた。
「毎日、頭を剃ってハゲのメイクをしたんだ。撮影が進むうちにハゲた自分に慣れたけど、こうしてポスターを見る度に『可能性はあるから、向き合うんだ!』って自分に言い聞かせている。ハゲが理由で死ぬことはないからね(笑)」
経験から学び、次なるステップへ
「熟した俳優になったね」と言うと少し照れた顔を見せるアーロンに、これまでのキャリアで学んだこととこれからのキャリアについて聞いた。
「これまで36本の映画に出演したけど、そうした映画がぼくのキャリアを証明するものだとは思わないし、ぼくという人間を定義するとも思っていない。監督がぼくの起用を決めるのは、ぼくが彼らのために闘うって分かったからだと思っている。大作だとぼくの仕事ぶりがより大きく知られるけれど、ぼくは小さな作品にも出ているから、監督はぼくが何ができて何ができないかが分かる。『Bleed for This』をはじめ、これまでの出演作の監督にぼくを起用した理由を聞いたことはない。ぼくはただ、彼らがハッピーになるようベストを尽くし、良い結果になるようがんばっているだけなんだ。ぼくはプロの俳優になって20年近くになる。失敗もたくさんした。良い映画にも出たし、イケてない映画にも出た。そうした経験から学ぶんだ。この20年でいろいろなことを学んだよ。ほかの俳優の態度を見て、自分がどうすべきかというのも学んだ。そして、今、ぼくは演出に興味を持っている。ぼくの視点をみんなに見てもらいたいって思うようになったんだ。今年は脚本の執筆に時間を費やした。それを監督しようと思っているんだ。こじんまりしたドラマの長編映画をね」
お金はクレイジー?!
平均で年に2本は出演作が公開されているアーロン。預金残高もさぞかし潤っていることだろう。ギャラの使い道について話す彼は、戒めのような言葉で締めくくる。
「俳優もスポーツ選手も親に恩返しをするか、家族の生活を楽にしてあげようとするだろ。ぼくも同じさ。もちろん、自分のものも買ったよ。車や家とかね。そして、モンタナに牧場も買った。ぼく自身と家族のためにね。寄付もしたよ。お金は……クレイジーだよ」
俳優から監督への転身は、「Sully」のクリント・イーストウッドの影響だろうか。イーストウッドやショーン・ベンら先輩のように、監督としての才能を開花させる日が待ち遠しい。
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