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日本に住む老親の介護と成年後見制度
文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)
- 2017年8月10日
今回は日本で暮らす親が高齢を迎え、健康上の問題から日常生活が困難な状況になり介護が必要となった場合のお話です。
日本に介護できる兄弟姉妹やその他の親族がいればよいのですが、いない場合はどうすればよいのでしょうか。私共のお客様(米国在住)の中にも、親の介護のため1~2年間程日本へ転居して暮らしたという人がいらっしゃいます。もちろんその間生活の拠点が米国から日本に移りますから住所変更などの手続きも発生しますし、米国には自分の家や家族がありますから何度か日米を往復しなければならないなど苦労されたようです。また日本に介護できる兄弟姉妹がいたとしても付きっきりで介護することは難しく、全面的に頼るのも心苦しい気がします。
身体介護とその費用
身体介護は主に食事や入浴、排泄、着替えなど身体に直接触れて行う介護のことですが、家族が世話をすることができない場合は日本の公的介護保険制度を活用して高齢者施設へ入所したり、また介護可能な家族がいても常時介護できない場合は居宅サービス(ヘルパーが定期的に自宅を訪問)を利用したりすることができます。
当然費用はかかりますが公的サービスなのでかかった費用の9割を国が負担してくれます(自己負担1割。一定の所得以上の場合自己負担は2割になる)。ただし自己負担額が少ないためこうした高齢者施設については入居希望者が多く、申し込んでもすぐには入居できないケースも少なくありません。そういった場合は公的サービスでない民間老人ホームを利用することもできます。(注)
その中で一つ考えておかなければならないことは親が認知症になるケースです。日本に限った事ではありませんが、高齢化と共に今後認知症の患者数が増えることが予想され、2025年には日本の認知症患者は約700万人、65歳以上の5人に1人が発症すると推計されています。認知症になれば介護する側の負担はさらに増すことになりますが、公的サービスとしてグループホームなどの高齢者施設に入居することができますし、公的サービス以外でも民間の老人ホームを利用することもできます。(注)
財産管理の注意点
一方新たに考えなければならないのが財産管理です。財産管理は預貯金や不動産などの資産を必要に応じて使用し管理することですが、親が認知症になり判断能力が低下するとたとえ親の財産であっても親自身を含め財産管理が自由にできなくなります。親の介護にかかる日々の生活費、介護施設や医療機関への費用を親の預貯金から支払うことができません。さらにその後、親が亡くなってしまってから発生する相続手続きについても不動産、生命保険等その他財産、借金などについて考えなければなりません。
成年後見制度の種類
成年後見制度は認知症など判断能力が十分でない者の行為の代理または補助する者を選任する制度で、上記のような預貯金の引き出しを含め財産管理の面で有効です。法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。
1)法定後見制度
既に認知症になってしまった場合に裁判所が後見人(家族以外を含む)を選定する方法で、支援内容も法律で決められていて家族の意思は反映されません。家族以外の人(もちろん専門知識を持った人)が選任された場合でも家族は裁判所の決定を拒否することはできません。
2)任意後見制度
本人が健康なうちに将来に備え後見人および支援内容を決める方法で、家族を選任することが可能です。
親の介護を行う子の立場からすれば、常に裁判所の決定に従わなければならない法定後見制度よりは、任意後見制度の方が便利かと思います。そのためにも親が健康なうちから親子で将来のことを相談する機会を作ってみてはいかがでしょうか。
後見制度を利用したい、調べたいという場合はインターネットで情報収集できます。専門業者(弁護士、司法書士など)のサイトもありますが、国(裁判所)や各地方自治体(成年後見センター)が開設するサイトがお勧めです。
なお、日本の後見制度は被後見人(ここでは親)が日本に居住していることが前提となっていますので、米国在住者が自分の親を引き取って介護する場合は注意が必要です。
また財産管理の面では後見制度の他にも、遺言の作成、生前贈与、民事信託(家族信託)などの制度があります。
(注)公的介護保険における高齢者施設や民間老人ホームについては当コラムの2017年2月1日掲載の「老後の日本帰国のための情報『高齢者施設について』」をご参照下さい。
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