ウェブアクセシビリティの向上
- 2019年5月31日
『なぜ』このツール、この方法、このタイミング?など、オンラインビジネスやデザインの世界を一歩踏み込んで考えます。
スーパーマーケット入口のすぐ近くには障害者用のパーキングスポットが必ず数台設けられ、レストランのトイレは車椅子が動きやすいように広々としていて、階段のあるお店はエレベーターや坂になった別の入口も設けられている……などなど、現在のアメリカでは障害者も生活しやすい環境を作るための法律が厳しく定められています。1990年にADA(The Americans with Disabilities Act)が認められ、すべてのビジネスはこのルールに従うことが義務化されました。
そのルールが最近、WEB上でも課されるようになり、実際に訴訟問題が増加していることから、さまざまなニュースで取り上げられるようになりました。ウェブアクセシビリティに関する訴訟は2018年には2258件にも及び、2017年の814件と比較すると約3倍にも増えているそうです。起訴して弁護士代や損害賠償を被告人から奪おうとするバウンティハンター(賞金稼ぎ)と呼ばれる弁護士たちは、必ず勝ち目のあるWebサイトをターゲットに訴訟を起こすので、成功率が非常に高いということで、今後こういった訴訟はさらに増えていくであろうと見込まれています。
実際にこれまでどのような訴訟問題があったのかというと、たとえばレストランのHootersは、Websiteがスクリーンリーダーに対応していないということで盲目の男性に起訴され、Domino Pizzaも同様に、盲目の男性から「Appからオーダーしようと思ったらスクリーンリーダーに対応していなかった」と起訴されています。Burger Kingも盲目の女性から起訴されました。また、この女性はNikeに対しても訴訟を起こしています。
スクリーンリーダーとは、目の不自由な方がパソコンやモバイルデバイスを操作するために使用するプログラムの総称で、ユーザーは、音声がテキストを読み上げることでコンテンツ内容を把握することができます。スクリーンリーダーに対応するには、たとえば画像にはaltを入れて、対象画像の説明をテキストで示すことなどが必要になります。
レストランに限らず、スーパーマーケットのWinn-Dixieも盲目の男性から訴えられました。この男性は、ほかにも数多くのWebサイトに対して訴訟を起こしているそうです。食品関係に限らず、Rolex、Cricket Wireless、スキンケア商品を扱うGlossierなどもターゲットの対象となり、訴えられました。
エンターテインメント系も、多くの賠償金と弁護士費用を支払っています。BeyonceのOfficial siteも画像の説明が不十分と盲目の女性から訴えられ、Pharrell WilliamsのBillionaire Boys Club and Ice Creamもスクリーンリーダーでのアクセスができないと訴えらました。
とはいえ、訴訟が起こるのは大手の会社だけでしょ?と思っているビジネスオーナーの方々、お気を付けください。2018年に急増したウェブアクセシビリティに関する訴訟は、大手だけではありません。また、大手の会社は他社の被害を知り、自社は被害を被らないようにと対策を始めていますが、うちは大丈夫と思っている中小企業が次のターゲットになると予想されています。
障害を持つ方々も快適に、平等なサービスが受けられるようになるというのはもちろん良いことですが、昨今の訴訟事情を見ると、そういった権利を利用して賞金を稼ぐ、といったグリーディーな部分も目立ちます。こうしたバウンティハンターたちに足元を掬われないためにも、ADAフレンドリーなWebサイトにすることは重要です。
実際障害を持つ方々の人口は、一時的な障害も含め、全世界の20%にもなるそうです。ユーザーターゲット層を広げることは売り上げアップにもつながるので、訴訟から身を守るだけでなく、多くのユーザーの方に快適にWebサービスを利用してもらうという点でメリットがあります。
では、具体的にどのような対策が必要なのでしょうか?
たとえば、盲目の方でもスクリーンリーダーでコンテンツが読み上げられるように作成する、画像にはaltを入れて説明をつける、動画には読み上げ可能なキャプションをつける、カラーブラインドの方にも見やすいように色のコントラストをハッキリとする、文字を大きくした時にレイアウトが崩れない、などなど。
W3C のWebサイトに細かくガイドラインが書かれています。
https://www.w3.org/WAI/
無料でチェックできるツールなどもオンライン上にありますが、多くのレッドフラッグを表示して危機感を与え、サービスの申し込みにつなげるケースもあるそうです。
弁護士事務所やWeb制作会社、またウェブアクセシビリティを専門にする会社も最近では増えてきているようです。会社やサービスによって金額はさまざまですが、大体専門会社だと、Webサイトのチェックだけで最低7000ドルから、会社によっては15000ドルからというところもありました。そこからページやボリューム、サイトの複雑さなどによって金額が変わるそうです。チェックだけでは当然改善されないので、レポート内容に応じてWebサイトを変更する必要があり、その費用が別途かかることになります。サイトのボリュームや変更内容によって異なり、1000〜50000ドルまで、修正にかかる費用はさまざまです。
一方で、AIによるチェックを365ドルから行っているところもあります。マニュアルチェックと比較すると信憑性が無いという意見もあるようですが、それで十分というところは何もしないよりはベターという考えのようです。
弊社ではADAやProp65、GDPRなどのレギュレーションに詳しい弁護士事務所と提携し、クライアント様の要望に応じて対応しています。お気軽にお問い合わせください。
<参考>
ADAとは?
https://adata.org/learn-about-ada
ウェブアクセシビリティに関する訴訟が2250を超える
https://www.boia.org/blog/over-2250-web-accessibility-lawsuits-filed-in-2018-could-they-triple-in-2019
https://www.adatitleiii.com/2019/01/number-of-federal-website-accessibility-lawsuits-nearly-triple-exceeding-2250-in-2018/
2018年のウェブアクセシビリティに関する訴訟で学べる4つのポイント
ウェブサイトに対する障害者への対応を求める大量の訴訟
https://www.cbsnews.com/news/a-flood-of-suits-demand-websites-accommodate-the-disabled/
ビヨンセのパークウッドエンターテインメントがウェブアクセシビリティをめぐって訴えられる
https://www.theguardian.com/music/2019/jan/04/beyonce-parkwood-entertainment-sued-over-website-accessibility
Credit Unionsがウェブアクセシビリティ訴訟をめぐりやり合う – バーガーキングやスーパーマーケットも
https://www.microassist.com/digital-accessibility/credit-unions-grapple-with-web-access-lawsuits/
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