REPORT
乳がん早期発見啓発セミナー Part2

日米両国に在住の日本人女性に、乳がんに関する情報を発信し続けている非営利団体BCネットワーク。同組織主催による乳がんの啓発セミナーが9月17日、ロサンゼルス郊外のガーデナで開催され、80名の参加者を集めた。前号のPart1に続き、講演内容をダイジェストでお届けする。

「婦人科系がん検診について」
産婦人科医 鈴木葉子

タスティンで開業している
婦人科腹腔鏡が専門の 鈴木医師

 がん検診の目的とは「早期に発見する」、それが一番です。罹患率と死亡率は違います。女性のがんの罹患率の1位が乳がん、5位が子宮がん。子宮がんには子宮体がんと子宮頸がんがありますが、ここでは子宮体がんのことを指しています。それぞれの違いを知ることが重要です。

がんとは、細胞が正常から異常に変わっていく状態です。それは、病理の先生が見て初めて分かるのです。検診とは、つまりがんの前の状態を発見することです。それによって根治することが可能になります。

みなさん、がん検診は怖いですよね。しかし、検診を受けることでがんになる前に分かるのが利点です。怖くないので是非行ってほしいと思います。

がん検診の内容には、細胞診、血液検査、画像診断があります。がんの種類によって対象年齢が異なります。家族歴があると検査開始年齢が早まることもあります。産婦人科学会ではマモグラムは40歳から、家族歴があれば35歳からの受診が推奨されています。検診には短所もあります。偽陽性の結果が出た場合、必要でない精密検査もしくは治療を伴い、患者への精神的負担が加わる点です。

乳がんのリスク要因は、初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産歴がない、初産年齢が遅い、授乳歴がない、閉経後の肥満、飲酒習慣、1親等の乳がんの家族歴などです。

マモグラムと超音波は
見るものが違う

乳がんの検査方法としては、まず触診が挙げられます。しかし、手の感度はそれほど良くありません。(腫瘍が)1センチくらいの大きさにならないと分からないのです。しかも、若い女性は乳房組織が張っています。乳房触診で見つかる前に発見することが重要です。生理が終わった後に、毎日のシャワーでひき連れがないか、リンパ節が腫れてないかをチェックしてみましょう。

マモグラムは、触診でも分からない小さながんを発見するものです。日本ではマモグラムは被爆するということで、超音波を毎年受ける人が多いようです。しかし、マモグラムと超音波では見るものが違います(マモグラムは石灰化を、超音波は小腫瘍を見る)。1年に1度のマモグラムであれば、被爆を心配する必要はありません。

子宮体がんは子宮の上部にできます。40代後半から50代にピークが来ます。リスク要因は閉経年齢が遅い、出産歴がない、肥満、糖尿病、高血圧、更年期障害のホルモン治療などです。子宮体がん検診を受けた方がいい場合とは、50歳以上もしくは閉経後で不正出血があるケースです。また、 エコー検査で子宮内膜が厚くなっている場合。閉経後は子宮内膜が育たないので、厚くなっている方は子宮体がんを疑って検診を受けてください。

検診方法はカテーテルを子宮内に挿入し、細胞診を行います。アメリカでは不正出血などがある場合以外は定期的な検診としては推奨していません。症状が出たら検診を受けるのが基本です。

子宮頸がんに関しては、婦人科検診の一つとして定期的な受診が推奨されています。がんの成長速度が遅いのが特徴ではありますが、日本国内では1万900人(2012年)がかかり、年間の死亡数は2900人です。30代後半から40代に多く発症します。原因はヒトパピローマウィルスへの持続的な感染です。性交渉を始めたら8割、9割の人が感染しますが、排泄とともに体外に出ていきます。しかし、免疫力が低い人の場合、適切に排出されないことがあります。一番良くないのは喫煙者です。ただし、クラミジアやリン病とは違い、ウィルスがあるからと心配する必要はありません。男性も感染しますが、がんを発症することは稀。

PAPスメアで検査を行います。性交渉の有無は関係なく、対象年齢が21歳以上に変更されました。ゆっくり成長するものなので、リスクがない人、新しい相手がいない人は3年に1度でいいでしょう。

医師として推奨したいのは、早期発見をし、根治を目指すことです。そのためにも1年に1回、自己管理の日を設けるようにしましょう。

取材協力:BCネットワーク http://bcnetwork.org

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