老後の日本帰国のための情報
「介護保険」(前編)

文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)

介護保険は本コラムの1、2回目で紹介した医療保険とは異なる制度です。医療保険は病気やけがをして医療機関で治療を受けた際に給付される公的サービスですが、介護保険は高齢者が加齢または傷病により体の自由がきかなくなり、介護を必要とする状態になった場合に受けられる公的サービスです。

(1)介護保険制度の概要と加入該当者

介護保険制度は高齢化の進展とともに加齢による寝たきりや認知症の高齢者が急増するなか、社会全体で高齢者介護を支える仕組みとして平成12年(2000)に施行されました。国が介護費用の大部分を負担する公的サービスであり、米国にはない制度です。医療保険と同様に、日本国内居住者であれば誰でも加入することができる、大変ありがたい制度なのです。

医療保険のように、75歳以上は別の制度(後期高齢者医療制度)になるといった仕組みはありませんが、介護保険は2タイプの加入者(被保険者)に分けられます。
●第1号被保険者:65歳以上の人
●第2号被保険者:40歳以上65歳未満で医療保険(健康保険、国民健康保険など)加入者

第1号、第2号被保険者によって、保険料や給付内容が異なります。また介護保険の場合、保険者(保険制度の運営者)は各市町村となります。

(2)介護認定と介護レベル

介護保険は国が介護費用の大部分を負担するわけですから、誰でも気軽に受けられるというわけではありません。加齢や傷病によって体の自由がきかなくなり、介護を受ける必要がある状態にならなければサービスを受けることはできないのです。たとえば医療保険のように、ある日体調が悪いので自分で病院へ行って診察を受けてすぐに給付を受ける、ということはできません。

そのため介護認定では実際に介護が必要かどうか、どの程度の介護サービスが必要かを事前に審査することが求められます。審査を希望する場合は各市町村に連絡し審査を受けますが、そこで認定を受けて初めて介護保険サービスを利用することができるのです。

介護認定は、必要な介護の度合いによって要支援1~2、要介護1~5の7段階に区分されます。数字が大きいほど状態が重く、多くの介護が必要となります。それぞれの基準内容についてはここでは紹介しませんが、インターネットで「要介護認定」を検索すると、いくつかのサイトで参照することができます。

では次回、介護保険で受けられるサービスの内容や、毎月支払う保険料について紹介します。

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、成年後見など日本在住の老親のサポート)を行う。

●豊富な実績に基づくていねいなサポートで
ひっきりなしに持ち込まれるお客様からの国際手続きに関する多種多様なご依頼、ご相談(お悩み)を断り切れず休日返上で対応しているうちに、気がつけば(年金、日本帰国といった当初の事業以外の)あらゆる分野のノウハウを備えたオールラウンドコンサルタントに。当社で対応できないケースでも、的確な解決方法や提携先の他分野専門家を紹介します。

ホームページ:ライフメイツ(ライフメイツ社会保険労務士事務所)
 日本帰国・年金・国際手続き相談室
 企業経営改善・助成金相談センター
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