海外教育Navi 第89回
〜日本の理系の大学に進むための準備〜〈前編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。


Q.子どもは日本の理系の大学に進みたいといいます。帰国生が理系を選択するのは不利になりますか。

帰国生枠で大学受験する人の多くが、英語力を生かして文系の学部・学科を選んでいます。帰国生枠の入試では、理系を選択すると「キコク」を生かせないともいわれますが、帰国生にとって理系への進学は難しいのでしょうか。

今回は、大学入試における帰国生の理系選択の概況とその準備について考えてみたいと思います。

帰国生枠の大学入試とは

大学入試改革に伴い、2021年度の入試から制度が変更され、選抜方法の名称も変わります。帰国生枠の入試は「特別選抜」として実施する大学もありますが、「総合型選抜(AO入試)」、「学校推薦型選抜(推薦入試)」のなかに含めるなど、出願できる区分も大学によってさまざまです。また、国際バカロレア資格(International Baccalaureate Diploma)を取得または取得見込みの帰国生は「国際バカロレア選抜」に出願することができます。

帰国生枠の入試では、書類審査、学科試験、面接の3つの面から審査されるのが一般的です。文系の場合は学科試験で外国語(おもに英語)と小論文が課せられますが、理系の場合はさらに数学と理科(1〜2科目)が出題されます。なお、英語に関しては外部検定試験の結果を提出させ、筆記試験を行わない大学も増えつつあります。

理系の場合、数学や理科の筆記試験がなくても、小論文で数学や理科に関する内容を含む課題を出題したり、面接でそれらの基礎学力を問う口頭試問やテストを課したりして、入学後の授業についていけるだけの数学や理科の学力があるかをはかる大学もあります。

数学や理科の学習内容は、日本と海外の学校では異なる部分もあるため、理系を希望する場合は日本の高等学校で学ぶ数学や理科の学習内容および日本の試験の出題形式への準備が必要です。海外の現地校やインターナショナルスクールでは、授業や試験で関数電卓やグラフ電卓の使用が認められていますが、日本の入試ではほぼ認められていないため、計算機を使わずに問題を解けるようにしておく必要があります。

理系を選択する帰国生は、日本語で数学や理科の用語を理解し、未習部分があればそれを補い、日本の入試問題に慣れておく必要があるため、文系を選択するよりも難しいといわれるのかもしれません。

帰国生受け入れ校へのアンケート結果

「帰国生が理系進学する際の課題」について帰国生を受け入れている学校にアンケート調査を行ったところ、日本人学校出身の生徒の場合は、帰国生だからという理由での課題は特に感じられないという回答でした。

一方、現地校やインターナショナルスクール出身者の場合は、理系科目のカリキュラムの違い、特に数学の学習内容や進度の違いによるキャッチアップの必要性を挙げる回答が多くありましたが、「国語力・日本語の文章読解力」を課題として捉える学校が多数見られました。

どうして理系への進学でも「国語力・日本語の文章読解力」が重視されるのでしょうか。

理系の教科においても、教科書の内容を理解するには「国語力・日本語の文章読解力」が必要です。さらに大学入試では、理系の教科の問題でも、問題文をよく読み、内容を整理して問題の意味を理解することがまず大切です。そしてこれまで学習した知識を関連づけて解答までのプロセスを考え、解を導き出さないといけません。また、帰国生入試の小論文では、課題を整理・要約し、自らの考えを日本語で提示する能力が評価されるため、理系を選択する場合でも「国語力・日本語の文章読解力」は重要なのです。

→「第90回 〜日本の理系の大学に進むための準備〜〈後編〉」を読む。

今回の相談員

海外子女教育振興財団 教育相談室長
植野 美穂

東京学芸大学附属高等学校大泉校舎の開設に携わり、以降数学の教師として帰国子女教育にかかわる。同大学附属国際中等教育学校の開校に開設準備室長として関与し、2007年から同校教諭。09年より海外子女教育振興財団の教育相談員、14年より教育相談室長。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

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ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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