海外教育Navi 第73回
〜日本へ帰国後、子どもの学校での適応〜〈前編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。

Q.帰国後の適応で、学習以外のことで留意すべき点を教えてください。

海外で現地校やインターナショナルスクールに通っていた場合、日本語や日本の勉強をする時間を十分に取れなかったというご家庭も多いでしょうから、帰国したときに日本の学校の勉強についていけるかどうか、心配になるのは当然です。

ところが帰国した子どもたちに話を聞くと、勉強に追いつくのもたいへんだが「日本の学校の習慣がわからないのがつらい」「日本の学校のやり方になじめない」という感想が多いのです。帰国した子どもには日本の学校の習慣が大きな壁の一つになっているようです。

帰国した子どもにとって、何が違和感となるのか

海外の学校、特に欧米系の学校と比べると、日本の学校は平等を大切にしているといえるでしょう。「みんなと同じ」であることが重視され、基本であり絶対的なことと考えられているところがあります。その結果、高い識字率などに表れているように多くの児童生徒が平均的な教育を受けることができています。

これに対して海外の学校では一人ひとりの個性を尊重し、できないことよりできたことを褒めて自信を持たせる教育が多く行われているといえます。意欲のある子どもには高いレベルに挑戦させる一方で、遅れている子どもにはそれぞれの進度に合わせた形で個別に指導する制度ができています。

日本の学校では「みんなと同じ」にするため、学校内の行動の一つ一つに細かいやり方やルールが決まっていて、その多くが全員でいっせいに取り組むものになっています。このような根本的な違いが帰国生には適応の難しさを招くことになります。

日本の小学校のいま

日本の一般的な小学生のおよその1日について見てみましょう。

朝、その日に使う教科書、楽器や書道道具、宿題、提出物等をそろえます。それらを持ち、学校で決められた帽子があれば、それをかぶり家を出ます。

集合場所から上級生を先頭に5、6人で集団登校をします。車等に注意しながら歩いて登校すると校門の前で先生たちが待っています。大きい声で「おはようございます」とあいさつをします。靴箱の前で上履きに履きかえ、教室に向かいます。全校朝礼では決められた並び順があり「前へならえ」の態勢できちんと並びます。朝礼の間は体を動かさず、先生や上級生等の話を聞くようにします。

教室に戻ったら、授業が始まります。30〜40人が決められた座席に座って担任の先生が来るのを待ちます。授業の始まりには日直の児童の号令があり起立・礼、「これから国語の授業を始めます」「よろしくお願いします」などと唱和します。

授業中は基本的に席に座っていなければなりません。発言は先生から求められたときに手を挙げ、指名されてから立って発言します。筆記用具はおもに鉛筆で、ボールペンは許されないことが多いです。そして全員が同じ勉強をします。

昼食は、給食当番がかっぽう着や前かけをつけて給食室から給食を運び、教室で先生やほかの児童に配って皆で食べます。給食当番は順番に回ってきます。食べる前には「いただきます」食後には「ごちそうさまでした」を唱和します。給食当番は食器の片づけもします。

授業がすべて終わると帰りの会があり、教室を掃除します。掃除のやり方も学校によって決まっています。放課後はクラブや学童保育で学校に残る場合もあります。

係には当番制の日直や給食当番のほかに、体育係や楽器係など授業のときに先生の手伝いをするものや生き物を飼育している場合は飼育係など日常的に割りふられたものもあります。

以上は仮想的なモデルですが、日本の小学校では教科以外にも行うことが多くあるのがわかります。

どのような違いがありますか

お子さんが現在通っている海外の学校と日本の小学校とはどんな違いがあるのでしょうか。もし、現在通っている学校の様子をあまりご存じないのでしたら、ぜひ、この機会に学校を実際にご覧になってください。ふだんからその特徴についてメモを取っておくと帰国後の学校に説明するときに役立ちます。

帰国後、子どもは次の点に違和感を覚えがちのようです。

*全員がいっせいに同じことをすること、協調性を求められること。
*卒業式など式典の準備に多くの時間をかけること。
*授業中、決められた席に静かに座っていなければならないこと。
*日直・給食・掃除など当番の仕事があること、そのやり方がわからないこと。
*和式トイレなどの使い方がわからないこと。
*授業中、自由に発言できないと感じること。
*海外で自信があった科目でもよい成績が取りにくいこと。
*成績が周囲や平均との差でつけられがちなこと。
*大規模校だと、児童生徒数が多く埋没してしまいがちになること。
*トイレは友達数人でいっしょに行くというような暗黙の了解があること(特に、女子中学生の場合)。
*上級生への敬語・あいさつ(特に中学・高校生の部活動)。
*通学する際の交通機関の混雑。
*制服着用、校則。

また、帰国生としての立場から嫌悪感を覚えるのは次のような点があるようです。

*「英語をしゃべってみて」とよく言われること。
*「帰国生」とひとくくりに見られて、英語ができないのかと言われること。
*滞在していた国について、よく知りもしないのにからかってくること。

→「第74回 〜日本へ帰国後、子どもの学校での適応〜〈後編〉」を読む。

今回の相談員

海外子女教育振興財団教育相談員
中山 順一

帰国子女の受け入れを目的に設立された国際基督教大学高等学校で創立2年目から38年間勤務。6000人以上の帰国生徒とかかわった。2008年より教頭。教務一般以外に入試業務(書類審査を含む)も担当した。2017年より海外子女教育振興財団で教育相談員を務める。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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