老後の日本帰国のための情報
「介護保険(後編)」

文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)

2回にわたって紹介している日本の介護保険制度。前回は介護保険制度の概要と利用可能な該当者について説明しました。今回は受けられるサービスの内容、保険料についてです。

(3)受けられるサービス

具体的な介護サービスの内容として食事、排泄、衣服の着脱、掃除、歩行の支えなど日常生活に関わるものがありますが、介護認定基準によって受けられるサービスは異なります。またサービスを受ける場所によっても、①居宅サービス、②地域密着型サービス、③施設サービスに分けられます。

①は介護サービス事業者に自宅に来てもらってサービスを受ける形態、②は必要に応じて通所したり緊急コールで事業者に自宅へ訪問してもらうなどの形態、③は介護施設へ入所してサービスを受ける形態となります。①の居宅サービスの利用については、自宅でもなるべく不自由なく生活できるよう、介護福祉用具の購入や自宅の改修(スロープや手すりの設置等)といったサービスが含まれます。

こうした介護サービスは認可を受けた介護サービス事業者から提供されることになりますが、かかった費用のうちの9割を国が負担してくれます。つまり、費用の1割だけを自己負担分として支払えばいいのです。ただ、近年の急速な高齢化の進展で介護制度のための支出が増えていることから、第1号被保険者については、所得が一定の金額を超える場合は平成27年(2015)から2割負担となりました。

(4)保険料

誰でも加入できる介護保険ですが、保険制度である以上毎月の保険料の納付が求められます。第1号被保険者の場合は各地方自治体ごとに前年の所得によって保険料額が設定されます。その支払いは自分で納付する方法のほか、年金受給者は毎月の年金受給分から控除される方法もあります。2015~2017年度の保険料の全国平均は、月5514円となっています。一方、サラリーマンなど第2号被保険者は健康保険料同様毎月の給与額によって決められます。2016年の一人当たりの平均額は5352円の見通しとなっています。

なお、米国から日本に移住した場合の最初の年は日本における前年の所得がありませんので、低所得者扱いとなり保険料は安くなります。たとえば「夫72歳、妻68歳」のケースで米国から東京都内に転居した場合、夫婦二人分の合計保険料は次の通りです。2年目以降は前年の所得に応じて保険料が変わりますが、ここでは「夫:年金収入250万円/妻:年金収入75万円」と想定して算出しています。

■転入した年:約57,000円 (月額:約4,700円)
■2年目:約156,000円(月額:約13,000円)

(備考)
  ・端数処理しているので目安としてください。
  ・支払いは月単位となります。
  ・第2号被保険者(40歳以上65歳未満)の介護保険料は上記より安価です。

いかがでしょうか? 制度の概要についてお分かりいただけたと思います。高齢化が進み、介護を必要とする人の数は増加の一途です。そのため現状の介護施設だけでは足りず、希望してもすぐには入所できずに数年待機させられるケースもあります。そうした背景もあり、できる限り居宅(自宅)サービスを行うというのが現在の介護サービスの流れとなっています。その一方で公的介護サービスではなく、民間業者による高齢者施設が現在増えています。介護保険による公的介護サービスに比べれば利用料は高くなりますが、スムーズに施設へ入居することが可能です。

※高齢者施設についてはコラム第4回「高齢者施設」をご覧ください。

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、介護・葬儀・相続など日本在住の老親のサポート)を行う。

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