北カリフォルニアの偉大なる自然
- 2018年9月17日
- カリフォルニア州
カリフォルニア州は総面積が日本とほぼ同じ、南北に長く東西は比較的短いという形も似ている。日本の47都道府県には数え切れないほどの見どころがあり、多くの自然も残されているが、カリフォルニアも然り。
太平洋に接する西側、シエラネバダ山脈のある東側、砂漠や禿山が広がる内陸、いずれも異なる生態系を持ち、同じ州でありながらまったく別の自然が広がる。今回は、北カリフォルニアであまり知られていない自然豊かな場所を、そこに棲む生き物とともにご紹介したい。
秋に見たい、サケの遡上
2018年は図らずも山火事で有名になってしまった、州北部のレディング(サンフランシスコから北へ車で約3時間半)。この町の周辺では、秋になるとサケが遡上する姿を見ることができる。
サクラメント川上流で生まれたサケは、春になると雪解け水とともに400キロ先のサンフランシスコ湾に向かう。大海で約2年間過ごした後は、産卵のため川を上っていく。生まれた時の水の匂いを記憶しているらしく、ナビもないのに生まれ故郷に戻ってくるのだ。故郷に辿り着くと、最後の力を振り絞って子孫を残そうとする。
自然環境の変化や乱獲により、今では天然のサケはごくわずかとなってしまい、実際にサケが遡上するさまを川岸から確認するのは難しいかもしれない。しかし、アンダーソンという町にある「Coleman National Fish Hatchery」というサケの孵化場に行くと、川底を埋め尽くすほどの無数のサケが上流を目指して飛び跳ねている様子を見ることができる。サケの壮絶なる生命力、自然の偉大さや尊さを感じずにはいられないはずだ。
太平洋に面した港町モントレー
サンフランシスコから車で南へ約1時間半、California State Highway 1沿いにある、歴史ある港町モントレー。“風光明媚”という言葉はこの町のためにあるのかと思えるほど、大海と町並みが見事に調和した場所だ。
太平洋に面しているものの、湾になっているので波も穏やかで、ここでは海鳥や海洋生物を間近で楽しむことができる。砂浜や岩場にのっそりと横たわるアザラシ、水面を低空飛行していくブラウンペリカン、人懐っこいカモメ、目を凝らせば野性のラッコが時折顔を出すのも見えるだろう。海と生き物を眺めながら海辺のレストランやバーでゆっくり過ごすのは、至福のひとときだ(A Taste of Montereyというバーがおすすめである)。
モントレー湾の自然をより身近に体験できるクルーズやツアーもあるし、カヤックやパドルボードをレンタルして海に漕ぎ出すのもいいだろう。「モントレーベイ水族館」ではジャイアントケルプが繁茂するモントレー湾の水中が再現され、そこに棲む生き物たちの展示が充実している。缶詰工場の跡地が残るレトロな町並みには、お土産屋さんやシーフードを楽しめるお店が軒を連ね、海辺の観光地らしいのどかな風が流れる。
北アメリカのモナーク蝶越冬地
そのモントレーから北に向かって歩いて行くと、パシフィックグローブという瀟洒な町がある。モントレーの隣にあっても観光地ずれしていないこの町は、山の手らしい品のある雰囲気で、静かに食事やウィンドウショッピングが楽しめる。4月にはアイスプラントというピンクの花が一面に咲き乱れ、海辺の散歩道を鮮やかに彩る。
そして閑静な住宅街の一画には、北アメリカの蝶の象徴ともいえるモナーク蝶(日本名:オオカバマダラ)の越冬地がある。モナーク蝶の一生は、サケに勝るとも劣らないほどの旅路だ。カナダやアメリカ東海岸で生まれた蝶は、飛行機の接続便のごとくシャーロット経由、テキサス経由などさまざまなルートで、温暖なフロリダやモナーク蝶のメッカ、メキシコを目指す。距離にして3000~4000キロもの大移動だ。
アメリカの西部の寒い所で生まれたモナーク蝶が目指すのは、カリフォルニアの海岸。人間もモナーク蝶も温暖で気持ちのよい場所が好きなのは共通のようだ。もしかしたらフロリダやメキシコ、パシフィックグローブに着く前に、あなたの住んでいる地域に寄り道をしているかもしれない。
パシフィックグローブよりもさらに壮大なスケールのモナーク蝶の越冬地があるのが、サンフランシスコとロサンゼルスの中間あたりのピズモビーチ。毎年11月から2月にかけて、なんと3万頭もの蝶が海辺の木立に集まってくる(ちなみにこの町のベーカリーのシナモンロールは絶品!)。
薄暗い早朝に木立を訪れると、木の上でお互いを温めあうように鈴なりになっている彼らの姿は、枯れ葉のようにしか見えない。そのうち目が慣れてくると、その枯れ葉のいくつかがきらりとオレンジ色に輝くのが見えるはず。枯れ葉だと思ったものがすべて蝶だと気づいたとき、その規模に驚くことだろう。太陽の光を感じると鮮やかなオレンジ色の羽を広げて一斉に大空へと飛び立っていくモナーク蝶、まさに壮観である。
シリコンバレー近郊でハイキング
シリコンバレーのような都会の近くでも、豊かな自然を楽しむことができる。シリコンバレーの西側はサンフランシスコ同様に霧が多く発生するので青々とした森林があり、そこから東や南へ行くとカリフォルニアのイメージそのものの乾燥した茶色の山が多くなる。
ウォーキングやハイキングができる場所は数々あるが、なかでもおすすめなのが、Rancho San Antonio Preserve。アップルの本社があることで知られるクパチーノ市にある。15キロもの山道のハイキングコースや、こどもでも歩きやすい平坦なトレイルなど、その日の気分と体力にあわせて大自然の中を歩いてみよう。
鮮やかな青のブルージェイがけたたましく飛んでいったかと思えば、野性のターキーが草原を走り抜け、運が良ければウズラなど都心ではまず見かけない鳥にも出会える。野性のシカやウサギ、リスも棲んでいる。California Ground Squarrelという地リスは、ほかのリスと違って木々の間を飛び跳ねることはなく、ひたすら地面の上を這うように歩き回る。なかなかの愛らしさだ。
ヨセミテ、セコイア国立公園など名だたる観光地だけでなく、サンフランシスコやシリコンバレーのような都会の近くにもこれほど多様な自然がある北カリフォルニア。カリフォルニア在住者があまり州外に出たがらないとの噂もなるほど、納得だ。真のカリフォルニアの魅力を感じるには、有名な観光地だけでなく、その全土に広がる多様で豊かな自然が大注目だ。
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