海外教育Navi 第20回
〜出国・帰国時期にともなう子どもの生年月日の注意点〜〈後編〉

記事提供:『月刊 海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団に所属するプロの相談員たちが一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。

Q.出国や帰国の時期によっては子どもの生年月日に注意しないといけないと聞きました。どういうことでしょうか?

前回のコラムでは、諸外国における学齢の基準日について説明しました(前回記事へ)。今回はその続きをお話しします。

帰国後の学年・学校選択

日本に帰国するのが義務教育期間であれば海外での学年にかかわらず年齢相応の学年に戻りますが、高等学校への入学や編入学においては影響が出る場合があります。

義務教育期間での帰国
上述のように、我が国の教育制度では義務教育期間(小学校1年生から中学3年生まで)であれば、海外においてどの学年であっても、帰国後は年齢相応の小学校・中学校に編入することになります。

帰国して2週間以内に住民登録をした段階で、地元の教育委員会から地域の公立学校を指定されますので、私立や国立の学校に編入する場合を除いて指定された学校に通うことになります。

高等学校への進学
高等学校への進学には義務教育9カ年の教育課程修了資格が必要です。特に海外において学年が遅れている場合や3月末までに9カ年の教育課程を終えられない場合は早めに帰国して、日本の中学3年生に編入して義務教育修了資格を得るのが一般的です。

欧米の学校やインターナショナルスクールの多くは、9カ年の教育課程を終えて「日本の義務教育修了」資格を得るのに6月までかかりますが、この場合は夏休み等に高等学校の編入試験を受けて9月から高等学校に編入する方法もあります。

高等学校への編入
海外の高等学校に在学し、中途で帰国した場合は日本の高等学校に編入することになります。この場合、編入学年はあくまでも海外での高等学校における取得単位によって決まってきます。取得した単位が少なかったり海外で学年が遅れたりした場合、学年は下がることになります。

現在では国内の多くの私立、国立および公立の高等学校等が帰国生の編入を認めていて、編入試験を実施しています。

しかし、高校3年生の1学期までと限定して編入を受け入れている学校が多く、2学期以降も認めている学校は極端に少なくなりますので、帰国時期や学校選択には注意が必要です。

大学への進学

大学進学資格を取得するためには、一般的に日本の学校で12カ年の教育課程を修了(高等学校卒業)し、さらに入学する年の4月1日の時点で18歳以上になっていることが必要です。

海外で学んで日本の大学に進学をする場合は、「海外の学校教育において12年の教育課程を修了する」「外国における12年の課程に相当する学力認定試験に合格する」「国際バカロレア、アビトゥア、バカロレア等の外国の大学入学資格を保有する」「大学において個別の入学資格審査により認められる」という条件のいずれかを満たすことが必要になっています。

また、海外で生年月日の関係や飛び級等で学年が上がり、18歳よりも早く上記の大学進学資格を得て帰国した場合であっても、4月1日の時点で18歳になっていないと大学に入学することはできません。

ただし千葉大学など一部の大学では、いわゆる飛び級入学を認めている場合があります。

高校生が海外の高等学校の12カ年の教育課程を修了せず途中で帰国した場合は、国内の高等学校に編入して卒業するか高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定)に合格する必要があります。

帰国生枠での大学入試における資格条件は、同じ大学であっても学部や学科等によって違うのが一般的なので注意するようにしましょう。

また、大学によっては帰国生枠受験をAO入試の中に含めている場合もありますので、受験に臨む際には希望する大学における条件等をあらかじめ調べておくことが大切です。

なお、高等学校の入試と同じように海外の学校の修了時期のずれから、海外で12年間の教育課程を修了してくると日本の大学の4月始業に間に合わなくなるケースもありますので、その場合は秋入学制度のある大学を選ぶか、翌年まで入学を待つ必要があります。

まとめ

海外と日本では学齢(学年)基準日や始業時期が違うために、お子さんの生年月日によっては日本の学年とのずれが生じます。

海外での学校選択やどの学年に入るかについては、お子さんそれぞれの適性や気持ちを考えて決めることが大切です。

さらに帰国時期についても勤務先の事情等もあって希望通りには行かないことと思いますが、中学校から高等学校、大学までの入試、編入の見通しを持って、計画的に進める必要があります。

海外での在留年数や帰国時から受験までの期間、海外での学年、取得資格等を考えながら帰国の時期を考えるようにしましょう。

今回の相談員
海外子女教育振興財団教育相談員
熊谷 勝仁

1971年から東京都の公立小学校に勤務し、北京日本人学校やハンブルク日本人学校への赴任を経験。帰国後は教頭、校長、さらに東京都教育庁人事部管理主事を務めた。2008年から新渡戸文化学園で校長・理事、11年から明星学園理事、帝京大学教育学部客員教授を歴任し現在に至る。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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