海外教育Navi 第114回
〜日本語、英語ともに中途半端のままで帰国になったら〜〈後編〉

Q.インターナショナルスクールに通っていますが、英語も日本語も中途半端なままでの帰国になりそうです。どうしたらいいのでしょうか。

前回のコラムでは、海外滞在中に気をつけておきたいことについてお話ししました(前回記事へ)。今回は、帰国後の言語のキャッチアップとブラッシュアップについてお話しします。

帰国後はキャッチアップとブラッシュアップ

友達といっしょに始められる就学前での帰国

結論から申し上げますと、この時期の帰国の場合には特別な対策は必要ないと考えます。

今回のようにインターナショナルスクールへ就学していた場合は会話レベルの英語力を身につけて帰国することになりますが、残念ながらこれらの英語力は帰国後には急速に失われていきます。

しかし英語を流暢に話せなくなったとしても、ヒアリングといわれる聞き取りの力は保持されやすいといわれていますので、将来英語を勉強するときの大きなアドバンテージになることは間違いありません。

一方、日本語の習得に関しては図2でおわかりのように、この時期はことばの機能を学びながら母語の基礎を身につける段階ですので、帰国時にそれが十分に身についていない場合には学習言語の習得にも遅れが出てしまう心配があります。しかし小学校入学後に本格的な日本語の読み書きの勉強が始まりますので、「日常会話を母語で行っていた」というような家庭内で母語環境が構築されていた場合には大きな支障はなく、帰国後の学校適応も比較的スムーズにはかっていくことができます。

学力の転移が期待できる小学生での帰国
図3

図3でもおわかりの通り、ことば1の母語とことば2の第二言語は、表面的には別のように見えても共に事象を認知したり学習のなかでことばや文章を深く理解したりするための役割を果たしているのです。そのため、外国語でコミュニケーションを取ったり文章を深く読み取ったりする力を身につけていれば、日本語でコミュニケーションをはかったり日本語の文章を深く読み取ったりするための力に代えていくことができるのです。

そこで、この時期の対策としては、海外で身につけた知識や学び方を生かしながら日本の学校への適応をはかっていくことが基本になります。

なおこの時期の帰国の場合には、日本の学校での学習経験がない場合も多いので、新たに「日本の勉強」をするという心構えを持つことも重要となります。

しかし日本語の習得が思いのほか不十分でご心配な場合には、編入予定地の教育委員会や学校へご相談ください。どの学校でも日本語の習得だけでなく遅れている日本の勉強をキャッチアップする対策も取ってくれます。子どもの学力状況によっては個別対応もしてくれます。

一方、英語力に関しては幼児期での帰国と同じように帰国後に失われていきます。しかしこの時期での帰国の場合には「聞く」「話す」に加え「読む」「書く」の四分野にわたって身につけた英語力ですので、将来に向け読み書きの英語力をブラッシュアップしていくことが重要な対策となります。

本財団でも、海外で身につけた英語力を帰国後も継続して伸長できるように「外国語保持教室」を運営しています。ぜひご活用いただきたいと思います。

自己実現が望まれる中学・高校生段階での帰国

中学生以降での帰国の場合は、日本語や日本の勉強のキャッチアップも必要ですが、「個性伸長」という考え方を持つことが大切です。この時期は国内生の学力や個性も多様なので、基本的に英語力を生かし自信を持った学校適応をはかっていくことが重要となります。

また多感な時期でもあるので、帰国後の学校生活でさまざまな戸惑いを感じる場面はどんな子どもでもあります。

そこで、この時期での帰国では、「帰国生受け入れ校」のような帰国生の個性伸長が期待できる教育環境で適応をはかっていくことが有効な対策だと考えます。

多くの帰国生受け入れ校では編入学も行っており、日本語指導専門の先生が日本の勉強のキャッチアップも行っています。また、これらの学校では英語教育にも力を入れていますので、今回のような学力実態のお子さんにとっても好ましい環境といえます。

しかしこの時期の帰国では、大学進学や将来を見据えた「自己実現」のなかで積極的に日本の勉強のキャッチアップや英語力のブラッシュアップをしていくという強い気持ちを持つことが望まれます。

日本と滞在国とのかけ橋に

帰国後の学校適応までの周囲の支援や本人のがんばりが、帰国生を帰国生たらしめると考えます。滞在中はもちろん、帰国後の課題にも積極的に取り組み、すべての帰国生が日本と滞在国とのかけ橋に育ってほしいと願っています。

今回の相談員
海外子女教育振興財団 教育アドバイザー  
平 彰夫

千葉県の公立小学校で教頭、校長を歴任。千葉県小学校長会理事、千葉県海外子女教育国際理解教育研究会副会長を経験。1998年より3年間、デュッセルドルフ日本人学校に教頭として赴任。この間、補習教室の教頭を兼任。2011年4月より海外子女教育振興財団の教育相談員。
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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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