海外教育Navi 第84回
〜コロナ禍のオンライン学習の進め方〜〈後編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。

Q.コロナ禍で現地校もオンライン授業で、子どもも親もストレスをためがちです。留意すべきことを教えてください。

前回のコラムでは、オンライン学習についてよく聞く質問とアドバイスをご紹介しました(前回記事へ)。今回は、子どもの心情や対策についてご説明します。

子どもが困っていることは

国立成育医療研究センターが行った「コロナ×こどもアンケート第3回」(保護者と小1から高3までの子ども計1万676名対象。2020年12月報告)によると、生活の変化として多く挙げられたのは次の通りでした。①友達と会えない(76%)②学校に行けない(64%)③外で遊べない (51%)④勉強が心配(50%)。相談したいことは①コロナにかからない方法(46%)②学校・勉強のこと(44%)③友達のこと(27%)と続きます。

コロナでいやな気持ちになる

小学生以上の子どもの回答全体で、①コロナのことを考えるといやな気持ちになる(42%)②イライラする(40%)③集中てきない(26%)など不安を感じる子が多くいます。前述のアンケートの第4回2021年2月の報告書には、小学4〜6年生の15%、中学生の24%、高校生の30%に中等度以上のうつ症状が見られました。保護者の心の状態は①心になんらかの負担かある状態(30%)②気分障害・不安障害に相当する心理的苦痛を感している状態(10%)③深刻な心の状態のおそれかある(12%)と約半数に影響を及ぼしています。

好きなことをして気晴らし

国立成育医療研究センター「コロナ×こどもアンケート第4回」によると、最も多かった親子のストレス対処行動は①好きなことをして気晴らしする。親は続いて②誰かに話して理解や慰め励ましを得ようとする③いやなことそのものを解決しようとする④別の視点から見ようとする⑤気持ちを吐き出す(紙に書くなど)となります。

親にもひとりの時間は素敵な息抜きです。親子で深呼吸や体を動かすのもお勧めです。

こんなときは注意!

ストレスが大きいと子どもは腹痛や頭痛などを含めさまざまな反応を発信します。

①不安を訴える・怖がる・夜眠れない・怖い夢を見る・おもらしをする。
②朝起きられない・身体がだるい。
③いつもよりイライラする、よくしゃべる・食べる・泣くなど。
④自分の体を傷つけたり、ものを壊したりする(眉毛やまつげを抜くなど)などです。

これらが現れても慌てなくて大丈夫。ただし日常に支障を来すときは、きちんと向き合い年齢に応じた対応と必要なら専門家へ。もしお子さんが「いつもとちょっと違う」と感じたらその気持ちがどんなものであれ、否定せず聞き、受け止めます。「そうだったの」などのことばを添えたりがんばっているところを見つけて褒めたりしてあげましょう。

インフォデミック

最後に「インフォデミック」に惑わされないために。

これは “Information” と “Epidemic” の造語で、SNSの普及で真偽不明な情報がまことしやかにたやすく拡散する状況を表しています。

たとえば、新型コロナウイルスの感染の発祥地が中国であることから、アジア人がウイルスをまき散らすという噂と、それを信じる人々から差別や暴力にあった日本人の話もありましたね。

子どもたちは課題提出のためにネットでいろんな調べ物をします。そんなときに大切なのはすべての情報を鵜呑みにしない、フェイクにふり回されない、信頼できる情報かを見極めること。そしてニュース映像は見せすぎない、自分のことのように捉え不安になる場合もあります。

「コロナだから〇〇できない」ではなく「コロナだから〇〇できた」という体験をぜひ! 春はもうすぐそこまで来ています。

今回の相談員

海外子女教育振興財団「現地校入学のための親子教室」親クラス講師
つちや みちこ

海外生活カウンセラー。ジャムズネット、多文化間精神医学会会員。上智大学卒業。夫のアメリカ駐在で13年間をイリノイ州、カリフォルニア州、ノースカロライナ州で過ごす。3人目の子どもはアメリカ生まれ。帰国後、教育評論家の尾木直樹氏が主宰する臨床教育研究所「虹」の研究スタッフに。子どもたちと体験したアメリカの学校についてまとめた『わくわく学校レシピ』(文芸社)を出版。2009年より海外子女教育振興財団「現地校入学のための親子教室」親クラス講師。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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