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- 海外教育Navi 第109回 〜こどもに日本を習得させるには〜〈前編〉
海外教育Navi 第109回
〜こどもに日本を習得させるには〜〈前編〉
- 2022年11月1日
Q.海外暮らしが長くなり、子どもは現地にどっぷりつかっています。日本語も怪しくなってきました。帰国の目途は立っていません。このままでよいのでしょうか。
はじめに
渡航前の講話・個別の面談では次のことを強くお願いしています。
- 異文化・マイノリティー体験を大切にして、現地で「思いっきり、活動してほしい」。発見・驚き・感動(ときにはつらい体験)などの生活体験を通しての「異文化習得」を目指してください。
- まず、現地で通う学校の成績を上げることを大切にして、現地で「思いっきり、勉強してほしい」。
- (たとえば、英語を学習言語とする学校へ通学する場合は)英語の習得がすべての学習の土台となるので、現地では「思いっきり、英語を勉強してほしい」。
☆現地にいても日本語・日本の学習をすることは大切なので「毎日、少しずつでも日本語・日本の勉強をしてほしい」。
海外暮らしのなかで
帰国の予定がはっきりしないなどの状況で海外暮らしが長くなってくると、子どもは現地の生活や学習にはすっかり適応したものの、日本語が怪しくなってしまったり、日本の学習がまるではかどらなくなったりということも起きてきます。
親御さんのなかには、帰国等に伴うこれから生じるであろう子どもの苦労への心配、日本人としてのアイデンティティや素養をいかに育んでいくかの悩み等に直面されているかたもいらっしゃると考えます。
日本人としてのアイデンティティ
海外で暮らす皆さんのお子さんに対しては、やはり、日本人としてのアイデンティティや素養を身につけて成長してほしい、あるいは厳しい表現ですが身につける必要があると考えます。
海外で暮らす子どもたちは、現地の「自然、気候、地理、文化、宗教、言語、対人関係等」からさまざまな影響を強く受けながら成長し、学習しています。日本に生まれ、育ち、学習してきたお子さんとは異なった考え方や感性を持っているはずです。
日本と海外、2つ〈dual〉(あるいは多数〈multi〉)の考え方等を身につけていることが、海外生・帰国生の強みともいえます。
日本語(母語)を習得させる
お子さんの渡航時の年齢、海外暮らしの期間(他言語での学習期間)など、環境により異なる点はありますが、日本語(母語)を習得させるための一般的なアドバイスとして次の点を挙げます。
<「生活言語」を伸ばす>生活のなかで使われていることばを繰り返し聞くこと、話すことで言語は身についていきます。小さなお子さんでは日本語で「たくさん話しかける」、「たくさん読んで聞かせる」など、家庭内はできるだけ「日本語」の環境にしてください。
たとえば英語と日本語とは、表面的にはまるで別モノのように見えますが、「言語(ことば)」という点では同じです。親が、自分の言語を使って「言語(ことば)を使う力」を育てる必要があります。そしてその力は、ほかの第二、第三の言語にも通用していきます。
上の図を見てください。まず1つ目の言語(母語)を育てることが、2つ目の言語を身につけるためにも重要であり、親の大きな責任でもあるのです。
<「学習言語」を習得する>「生活言語」は、生活のなかでいつの間にか使えるようになっていきますが、学校の授業を理解するために必要な「学習言語」は意図的な取り組みをしなければ身につきません。
たとえば日本語と英語の2つの言語を見ても、言語として共通の要素はありますが、語彙や語法などは学年が上になればなるほど複雑になり、異なってきます。2つの言語を同時に同じレベルで身につけていくことはかなり高いハードルとなり、2つとも中途半端になることもあります。
そのため、たいへんだと思いますが、お子さんといっしょに学んだり励ましたりしながら学習言語を身につけさせるよう手伝ってあげてほしいと思います。
<1つの言語が年齢相応に使えること>皆さんのお子さんにとって、母語として日本語を習得することは大切ですが、より大切なことは「1つの言語が年齢相応に使えること」です。場合によっては「日本語の学習の比重を下げる」、「ほかの言語を母語とする」などの選択も必要で、その方がよいときもあります。
※次回に続きます。次回記事は11月15日(火)に掲載予定です。
海外子女教育振興財団 教育アドバイザー
後藤彰夫
千葉県と東京都で教員、ワルシャワ日本人学校教諭を経て、東京都の公立学校で教頭・副校長・校長を歴任。2013年から6年ほど本田技研工業株式会社で教育相談室長を務め、2019年より海外子女教育振興財団の教育相談員。東京都海外子女教育研究会、全国海外子女教育・国際理解教育研究協議会事務局長も務める。
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