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海外教育Navi 第24回
〜特別支援が必要な子どもとともに渡米する場合〜〈後編〉
記事提供:『月刊 海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)
- 2019年3月15日
海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。
Q.特別支援の必要な子どもを連れてアメリカに赴任します。渡航前にしておくとよいことや現地で気をつけるべきことを教えてください。
前回のコラムでは、アメリカにおける特別支援教育に関する法律や、障害認定について説明しました(前回記事へ)。今回はその続きをお話しします。
日本から持参できるとよいもの
障害認定のアセスメントを少しでも手助けするために、日本で受けた心理教育的アセスメントの結果報告書や医師の診断書等があれば、持参するとよいでしょう。また、日本の学校で特別支援教育を受けている場合は、個別の指導計画など、指導の内容やお子さんの状態(できること、できないことを含む)がわかる資料を持ってきておくとたいへん参考になります。
これらの書類は英訳されているとベターですが、日本語のままであってもそのコピーを提出することをお勧めします。
往々にして、日本の「通知表」はその子の直面している困難(できないことなど)に関しては触れずに書かれていることが多く、そうなると、バトンタッチして教育を行う現地校がその子どもの現状を把握するうえで参考になりません。お子さんに関して、どういうことができて、どういうことが難しく、またどのような支援がされていて、どの対応方法が効果的であったか等を申し送りとして書いてくれるように、ぜひ先生にお願いしましょう。
赴任が決まって日本を発つ前の少ない日数の中で、新たにアセスメントを受けられないこともあるでしょう。そんなときも、日常的にお子さんを見てきた学校の先生からのこのような報告はたいへん参考になります。また、親御さんの把握している範囲で、学校や家庭での情報やいままでの経緯も書き留めておき、提出するとよいでしょう。
現地校でアセスメントを受ける場合(日本で受けてきても十分な情報が盛り込まれていないと判断され、現地校で再度行う場合も含め)、日本語を話すバイリンガルの専門職員によるアセスメントができるまれなところを除き、基本的には英語で行われますが、言語を多く使わない尺度を使ったり、通訳を入れて行ったりします。
申し込みの仕方
住居が決まった時点で、居住を証明するもの(賃貸契約書等)と先述の資料を持って住居のある学校区の特別支援教育課に出向き、申し込みをします。親御さんとしては、先に学校を決めてから住居をと思われるかもしれませんが、まだ住民になっていない場合、具体的な相談には乗ってもらえないこともままあります。
法律では保護者が申込書にサインをした時点から90日以内に正式な措置が決まることになっていますが、お子さんの障害や状態によっては、仮措置としてすぐに支援サービスが受けられることもあります。
障害が認定されると、支援サービスの種類や頻度・時間数、支援サービスを受けるクラスのタイプ、必要な環境調整(試験時の時間延長などの合理的配慮)などを決めていきます。保護者もチームの一員ですので、納得のいかないことがあればどんどん質問し、異議があれば申し立ててください。建設的な意見や合理性のある希望であれば、もちろん取り上げてもらえます。
その後、それぞれの子どもにIEPが作成され、その子の現在の状態、障害カテゴリーと共に決定された上記の詳細が記載されます。これは法的文書となり、記載事項について学校には実行しなければならない義務が生じます。したがって、獲得したい重要な支援サービスやアコモデーションが口約束にとどまらずIEPに記載してあるか確認することをお勧めします。
幼児の場合
アメリカでは、0歳から特別支援教育の対象になります。アセスメントによって発達につまずきが確認できれば、カテゴリー分類せず、早期介入が始まります。幼児の場合も、アセスメント報告書や診断書に加え、いままで受けてきた支援がわかる資料を用意しておくとよいでしょう。3歳以上は居住の学校区の特別支援教育課で申し込みます。0歳から3歳未満は、各市町村にある「Early Intervention (早期介入)」という別の担当部署に申し込みをします。
現地語による支援サービス
日本語を話す専門の職員がいるごくまれな地域は別として、通常は英語で支援サービスが提供されます。
学校によっては「まだ英語が不十分だから」と、特別支援教育を始めることに積極的でないところもあるかもしれません。それは過去に、特別支援教育を受ける子どもたちのうち、英語が母語でない子どもたちの比率が高くなってしまったことに対する反省に基づいた姿勢です。
ただし、すでに障害が日本で認定されているお子さんの権利を阻むものであってはなりません。そのためにも、日本で支援を受けていた証明や資料を持参できれば、適切な支援介入への近道になります。たとえば、たんに「自閉症」といった診断名だけではなく、どのようなことで困って特別支援教育を受けていたかがわかる資料があることは、ここでも重要になるわけです。
アップルタイム
地域によっては、現地で特別支援教育を受けている日本人のお子さんを持つ親の会があります。その一つ、ニューヨークの「アップルタイム」(http://appletimeny.org)のウェブサイトには、有益な情報がたくさんあるので参考になるでしょう。
また、制度などに関しましては、私どもの相談室でも相談を受けつけています(電話:+1(914)305-2411)。
ニューヨーク日本人教育審議会・教育文化交流センター教育相談員
バーンズ 亀山 静子
ニューヨーク州公認スクールサイコロジスト。現地の教育委員会を通じ、幼稚園から高校まで現地校・日本人学校を問わず、家庭で日本語を話す子どもの発達・教育・適応に関する仕事に携わる。おもに心理教育診断査定、学校のスタッフや保護者とのコンサルテーション、子どもの指導やカウンセリングなどを行う。
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