海外教育Navi 第70回
〜母親として、渡航に対する不安と心構え〜〈後編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。


Q.母親の私が引っ込み思案で外国語も苦手です。渡航に前向きになれるアドバイスをください。

前回のコラムでは、渡航に向けての心構えを3つご説明しました(前回記事へ)。今回は、その続きをお話しします。

(4)子育てキーワード5つ

次に引っ込み思案な子どもを元気に動けるようにする、家庭でできる子育てのヒントを考えていきましょう。キーワードは5つあります。

●キーワード1「信頼」
子どもとの間に、頼りにされる人間関係を築いていますか。

信頼関係の構築には家庭の日常で、どれだけコミュニケーションを取れているかがカギになります。

思春期になると親との会話も少なくなります。自然な成り行きです。それでも大切なのは、親は「ダメなものはダメ」と伝えながら、子どもとの会話のキャッチボールを心がけることです。

●キーワード2「観る」
目の前の子どもの特徴や状態を観察できていますか。

日々観察していると子どもの様子がおかしい、元気がない等と、子どもの変化に早めに気づいて、声かけをすることができます。

●キーワード3「聴く」
子どもの話にしっかり耳を傾けていますか。

子どもは話を聴いてもらえたと感じれば話しはじめます。大きな味方を得た気持ちにもなり、前向きに動けるようになります。さらに、自分の気持ちの整理もでき、自分も聴き上手に成長していきます。

●キーワード4「話す」
子どもの立場も考えて、自分のことばを明確に伝えていますか。

「話す」とは親が一方的に話すことではありません。話のキャッチボールをしながら “相手の考えや思いやりを尊重しつつ、自分の伝えたいことを話す” ことです。

「アサーション」といわれる話し方を知っていますか。アサーションとは、自分も相手も大切にする表現方法です。主張は行い、相手も傷つけない。お互いに意見を出し合って双方の納得いく結論を出そうとすることで、訓練が必要です。詳しくは、インターネットで「アサーション ダイレクトコミュニケーション」と入れて検索してみてください。

●キーワード5「協働」
子どものことを相談できる人や協力してくれる人はいますか。

親は自分の子どもだからとひとりで悩みがちです。誰にも相談せずに自分で解決しようとしがちですが、周りの人の力を借り、相談できる人を見つけて協力してもらいましょう。

子育てには悩みはつきものです。自分だけでは思いつかないよい解決策も見つかり、新しい発見もあります。

行動できる子にするには、兄弟や友達と比較せず、その子自身の個性を尊重し、成長したところを認めていくことも大切です。そしてご紹介したこの5つのポイントを日々、家庭のなかで親が自ら実践していってほしいと思います。

(5)親の愛あるメッセージ


海外駐在体験は親子ともども新しい世界に触れ、驚き、不安、悩み、喜びが入りまじる体験をすることになります。

私の異文化発見は多岐にわたりました。なかでも現地の親たちと触れ合い、自分の子どもへの褒め方、叱り方、そして努力したところを認めてあげることばかけの素晴らしさに触れ多くを学びました。

子どもはお父さん、お母さんが大好きです。特にいちばん近くで日常を支えてくれるお母さんから笑顔でプラスのことばをかけてもらえたら、子どもはどんどん前向きに行動していくでしょう。

体操をしていた娘が参加したカリフォルニア州の州大会の試合当日、配布されたプログラムガイドにこの大会に出場するある選手の親が書いている文章を見つけました。

Dear Stephanie,
We know you have been practicing so hard for this competition. We’re very proud of you. Thank you for being our daughter. Good luck!
With Love,
From your Mom and Dad.

(ステファニーへ。私たちはあなたがこの日のために、できるかぎりの練習を重ねてきたことを知っています。とても誇りに思っています。私たちの子どもでいてくれてありがとう。がんばってね! お父さんとお母さんより)

まずは親がプログラムガイドの広告用のひとコマを購入するという発想にびっくり。さらにこの内容を読み、子どもたちへの親の接し方の多様性を学びました。

皆さんもこのようなことをお子さんに伝えてみませんか。お子さんの心は温もりで満たされることでしょう。

「子育ては親育ち」。親子ともども異国での新発見を楽しみ、親自身の成長へとつなげてください。

今回の相談員

海外子女教育振興財団「渡航前配偶者講座」講師
小木曽 道子

ドイツとアメリカ・ロサンゼルスに合計10年間滞在。アメリカではふたりの娘を現地校に通わせ、現地校のボランティア活動に参加。地区教育委員会で2カ国語諮問委員会の議長を3年間務め、海外から転居してきた親子をサポート。帰国後、海外子女教育振興財団「現地校入学のための親子教室」の講師を務め、現在は「渡航前配偶者英語講座」のWEB講師および「外国語保持教室」のサポートスタッフを兼務しているほか、東京都青少年・治安対策本部青少年課青少年応援ナビゲーター、「日本マチュピチュ協会」理事、カウンセラーとしても活動している。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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