【ニューヨーク不動産最前線】
世界のアールデコ界の首都

先週、私のアパートが入っているビルでまたドラマ撮影がありました。夕方ビルに帰ってみると、狭いロビーに50〜60人の役者さんや撮影隊が集まっていて、さらに照明がロビーをガンガン照らしていて、前もって聞かされてはいましたが、一瞬「どこ?」と思ってしまいました。

ニューヨークでは、しょっちゅういろんな所で映画やドラマの撮影をしていますが、実は建物の中での撮影を許可しているビルは少ないのです。セキュリティの問題があるので、不特定多数の人が出入りするのは危険だし、住民の迷惑にもなるので、ボードの許可が下りないからです。

私たちのビルは、ボードプレジデントが(自称)俳優だということもあり、かなりこういうことには寛大です。もちろん、建物使用料が入るのでビルの収入にもなるし、うちのビルでは住人も大っぴらに反対する人はいません。でもそれだけではないようです。先週は設定が70年代のドラマだったそうで、俳優たちのいでたちがどうもレトロな感じがしたのですが、それがこのビルの雰囲気ととてもマッチしていました。

私たちのビルは築88年のPre-Warビルで、かつアールデコ様式なので、今回の撮影にはぴったりだったのかもしれません。アールデコとは1920年代、30年代に流行し、直線的な幾何学模様のデザインが特徴の様式です。私のように特に建築の専門家でなくとも、一度見れば記憶に残る、単純かつ美しいデザインです。

そういえば前から思っていたのですが、ニューヨークってアールデコ様式のビルがとても多いです。思いつくだけでも、クライスラービル、エンパイアステートビル、ロックフェラーセンター、ラジオシティ(劇場)などなど。町を移動していても、有名なビルもそうでないものも、住宅ビル・商業ビルを問わず、あらゆるところにアールデコの建物があります。もちろん内装もアールデコです。

そう思って少しネットで見てみると、ニューヨークは「世界のアールデコ界の首都」だそうです(参考:https://artdeco.org/what-is-art-deco/artdeconyc)。その少し前に流行したアールヌーボーの曲線的で繊細な様式に比べて、直線的で男性的な感じのするアールデコは、20世紀初めに摩天楼の建設ラッシュだったニューヨークの発展と力強さのシンボルだったのかもしれませんね。余談ですが、私はくねくねしたアールヌーボーよりも、すっきりとしたアールデコの方が好きです(笑)。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

ライタープロフィール

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2021年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

この著者への感想・コメントはこちらから

Name / お名前*

Email*

Comment / 本文

この著者の最新の記事

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. ニューヨーク市内で「一軒家」を探すのは至難の業です。というのも、広い敷地に建てられた一軒家...
  2. 鎌倉の日本家屋 娘家族が今、7週間日本を旅行している。昨年はイタリアに2カ月旅した。毎年異...
  3. 「石炭紀のガラパゴス」として知られ、石炭紀後期のペンシルバニア紀の地層が世界でもっとも広範囲に広が...
  4. ジャパニーズウイスキー 人気はどこから始まった? ウイスキー好きならJapanese...
  5. 日本からアメリカへと事業を拡大したMorinaga Amerca,Inc.のCEOを務める河辺輝宏...
  6. 2024年10月4日

    大谷翔平選手の挑戦
    メジャーリーグ、野球ボール 8月23日、ロサンゼルスのドジャース球場は熱狂に包まれた。5万人...
  7. カナダのノバスコシア州に位置する「ジョギンズの化石崖群」には、約3 億5,000 万年前...
  8. 世界のゼロ・ウェイスト 私たち人類が一つしかないこの地球で安定して暮らし続けていくた...
ページ上部へ戻る