海外教育Navi 第25回
〜帰国後、子どもの学校適応とストレスケア〜〈前編〉

記事提供:『月刊 海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。

Q.帰国後、子どもが見せるシグナルについて教えてください。

大人の想像をはるかに超える子どものストレス

帰国後の学校適応に関する相談は多くはありませんが、なかには深刻なものも少なくありません。海外滞在期間や帰国時の学年、子どもの性格等さまざまな違いはありますが、子どもが帰国後に感じるストレスは大人の想像をはるかに超えているのです。

通常これらのストレスは帰国して数カ月で落ち着き、徐々に編入学した学校への「帰属意識」が芽生えてきます。しかしさまざまなストレスを克服して適応するまでの過程は個人差が大きく、「前の学校に戻りたい」と言う場合もあります。なかには一応の適応状態は見せるものの「心から日本の学校がよいとは思えない」と、長い葛藤の期間を持つ帰国生もいます。

なお、これらの傾向は日本人学校出身者にも見られますし、帰国後にインターナショナルスクールへ編入した場合にも見られますので、帰国生の誰もが一定の期間は感じるものだといえるでしょう。

しかし、ここで避けたいのは「自己喪失感」を帰国生に抱かせてしまうことです。苦労して海外で身につけたさまざまな力や感性は帰国後さらに伸長させていきたいところです。

そこでここでは、「帰国後に子どもが見せるシグナル」に目を向け、子どもが帰国後に感じるストレスとその基本的な対処法について考えていきます。

帰国後の子どもの世界

子どもが帰国後に感じるストレスの度合いは、子どもの性格や環境への対応力に左右されます。また、帰国したことを親御さんは「戻ってきた」と受け止めるのに対して、日本での生活経験が乏しい子どもは「新しい国での生活が始まった」と感じていることも忘れてはなりません。

学校生活ではこれらに加えて、「子どもの世界の特殊性」も輪をかけることになります。子ども同士の理解は、対等な出会いから始まります。一般的な傾向として、帰国生はそれまで学校でしてきたのと変わらない自分を出すしかないでしょうし、受け入れる側の子どもも「まだ日本の生活に慣れていないから」というような配慮はあまり見られないでしょう。

そこで、帰国生は親御さんが予想もつかないところでさまざまなトラブルやストレスに直面することになります。

日本語力の未熟さから意思の疎通がうまくできなかったり遊び方が違ったりすることが何度かあると、友達からは「変わっている」という受け止め方をされたり、「ガイジン」とからかわれたりすることがあります。

学校文化や校風への適応
海外の現地校ではその国が定めた独自のカリキュラムで授業が行われますので、独自の「学校文化」が形成されています。また、日本人学校も日本国内の学校に準じた教育を行ってはいますが、語学教育をはじめ設置国の特色を生かした教育を行っています。

一方、「帰国子女受け入れ校」と呼ばれている帰国後の学校を見ても、中高一貫校、男子校や女子校、なかには「進学校」と呼ばれている学校もあり、それぞれの学校には独自の校風や学校文化が形成されています。

そこで、帰国生がこれまでとのギャップを乗り越え適応をはかる過程において、生活指導や校則違反等で先生から叱責されて、理不尽に感じる場面も生まれることになります。

学習内容や授業方法への適応
日本人学校に通っていた場合には、基本的に学習内容の面に関してはそれほど心配する必要はありませんが、現地校やインターナショナルスクールの場合には、一般的に「学習面や指導方法への戸惑い」が見られます。

学習面においては帰国後3カ月以内で4割、6カ月以内には6割以上の子どもがこれらの課題を克服するといわれていますが、一年以上たってもキャッチアップを必要とする子どもも1割程度います。

十分な適応には、海外に滞在していた期間だけかかるともいわれますので、子どもはしばらくストレスを抱えながら授業を受けることになります。

その他のストレスの要因例
・掃除当番や給食当番
・休み時間の過ごし方
・部活動内の上下関係
・名前の呼び方、呼ばれ方
・電車やバス等での通学

「第26回 〜帰国後、子どもの学校適応とストレスケア〜〈後編〉」を読む。

今回の相談員
海外子女教育振興財団 教育相談員
平 彰夫

千葉県の公立小学校で教頭、校長を歴任。千葉県小学校長会理事、千葉県海外子女教育国際理解教育研究会副会長を経験。1998年より3年間、デュッセルドルフ日本人学校に教頭として赴任。この間、補習教室の教頭を兼任。2011年4月より海外子女教育振興財団の教育相談員。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

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ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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