日本映画『未来のミライ』『万引き家族』
アカデミー賞直前レセプションで思いを語る

Text & Photos by Haruna Saito

左から、細田守監督、松崎薫プロデューサー、千葉明総領事

2019年2月24日に、第91回アカデミー賞授賞式が開催される。今回のアカデミー賞には、日本映画が2作品ノミネートされた。外国語映画部門では、是枝裕和監督による『万引き家族』、長編アニメーション部門では、細田守監督による『未来のミライ』。

授賞式に先立ち、ロサンゼルスの総領事公邸では、2月4日に激励レセプションが開催された。会場には細田守監督と、『万引き家族』のプロデューサーを務めた松崎薫さんが登場。記者会見を行った。

『未来のミライ』細田守監督
「家族」の日常を描いたからこそ、世界で共感された作品

自身のこどもと家族から着想を得た『未来のミライ』への想いを語る、細田守監督

この作品は、家族の間で起こる出来事をこどもの目線から見た映画です。ここで描いている出来事は、うちの奥さんや親戚の間で実際に起こったことが多いんですね。お母さんの小さい頃やひいおじいちゃんの時代など、親戚が過ごしたさまざまな人生の一部をこどもの視点で見て、家族の人生の中から人生の意味を考えて、自分の人生を一歩ずつ歩いていく、というような作品です。なので、劇的なシーンがあるわけではなく、どこにでもあるような、日本の片隅でどこの家庭でも経験したことのあるような出来事を中心にまとめています。

本作は96カ国で配給され、多くの方に「この映画は非常に美しい映画だ」と言っていただきました。外国の方が日本のオリエンタリズムに感心したというよりは、日本の片隅のお話が、世界各国で彼らの家族と何ら変わらない話として響いたのではないかと思います。こどもの日常を描きながら、それが同時にインターナショナルというものに通じる表現であったということが、すごく嬉しいなと思っています。

こどもというのは面倒くさくて大変で厄介で、自分の自由時間がなくなるじゃないですか。でも、小さいこどもと一緒に過ごすことでこんなに幸せなことがあるんだろうかと、今まで自分が味わったことのないような幸福感や満足感があって。こどもと過ごすことは、人生の中で何か大きな意味を投げかけてくれているのではないかと感じました。それがこの映画を作るきっかけとなったわけです。アニー賞を受賞した際のスピーチでそれを一言にまとめて話したら、会場からものすごく拍手が起こ
りました。「ああ、(アメリカの)皆さんにもそう思ってもらえたんだ」と、小さいこどもと過ごすことは世界中の人々の人生にとって重要なことなんだと、再認識できました。

「家族」というテーマは、「現代」を切り取る際に必要不可欠なモチーフであると思いました。今の日本をどういうふうに捉えて表現するかに限らず、いろいろな国で家族の問題というものに関心があると思うんですよ。現代を、人間同士の環境を、国同士の関係をどう考えるかというのが、家族の関係に集約されていると思うんですね。世界中の映画作家たちと同じ言語、同じモチーフで語り合って交流していく時に、「家族」というモチーフはなくてはならないものだと思います。どの国でも共通していて、文化的な特別な壁を超えなくても一緒の問題について考えたり感動を共有したりできる、とても大事なテーマだと思います。

 

『万引き家族』松崎薫プロデューサー
クスッと笑える、是枝監督らしい作品が高評価に

『そして父になる』から『万引き家族』までの5作で是枝監督とタッグを組んできた松崎薫プロデューサー

前作の『三度目の殺人』が、福山雅治さんと役所広司さん主演という比較的規模の大きな作品でした。そのため『万引き家族』に関しては、もう少し是枝監督ファンに喜んでもらえるような“小さな作品”にしたいというのが監督の考えで、私たちもそれに倣って制作に臨んでいました。それがここまでの広がりを持ったことに関しては、少し驚きました。アメリカで何度かスクリーニングを行った際の感想としては、「家族や(人と人との)繋がりみたいなものを考えさせられた」というコメントが多かったです。是枝監督がずっと取り組んできた作風が皆さんに評価されており、シンパシーを感じますね。

作品タイトルに関しては、最初のプロットの段階では『万引き家族』だったのですが、その後、監督は違うタイトルで台本を作って制作を進めていました。作品が仕上がった後に、タイトルについてもう1回みんなで話し合って『万引き家族』になったんです。その前は文学的なタイトルをつけていて、『万引き家族』の方がマーケティング的にはキャッチーなんじゃないかと思ったんですね。

日本人がみんな万引きしていると思われる、というようなコメントがネットに出ていましたけど、私はそんなふうに思うことがちょっと不思議と思っていて。是枝監督の作品にはちょっとクスッとさせる作風があるので、『万引き家族』というタイトルによって、ちょっとしたコメディ感というか、ちょっとした笑いを含んだものが伝わるんじゃないかなと思っていました。

制作中の監督とやりとりで印象に残っているシーンは、後半の尋問の部分ですね。最初は尋問の部分がものすごく短かったんですね。結構撮っていたんですけど、このシーンがとても短くなっていて。もう少し長い方が世間の眼差しのようなものが分かりやすく伝わるし、そこである種の感情のクライマックスも来るんじゃないかと思って、なるべくそこを伸ばした方がいいんじゃないか、という話をしました。最終的に、このシーンは少し伸びました。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

齋藤春菜 (Haruna Saito)

齋藤春菜 (Haruna Saito)

ライタープロフィール

物流会社で営業職、出版社で旅行雑誌の編集職を経て渡米。思い立ったら国内外を問わずふらりと旅に出ては、その地の文化や人々、景色を写真に収めて歩く。世界遺産検定1級所持。

この著者の最新の記事

関連記事

ページ上部へ戻る