物流を制すものはビジネスを制すか? 
第13回

船社の誕生と運賃同盟

19世紀の後半、英国を中心にした欧州各国は、アジアやアフリカ、南米を植民地にすると同時に、そこからの食産物を自国に輸送するため、海運を強化していった。英国ではP&O社、ドイツではHAPAG社とHAMUBURG SHUD社、20世紀に入り、デンマークではMAERSKラインが産声を上げた。

日本は日本郵船、また反日本郵船の旗を掲げ、大阪商船などが設立され、需要拡大の激しいアジアから欧州への輸送の覇権争いに割って入っていく。

日本〜上海航路で不毛な運賃競争の果てに撤退して痛手を受けたP&O社は、自社の既得権益を守るため、インドと欧州をつなぐ航路に運賃協定を提案。無用な競争を避けたい各船社が集まり、運賃同盟を結成した。これが1875年に設立された、カルカッタ運賃同盟である。

その後も世界の各地域で定期航路が開設されると、それに伴う参入船社が自社の利益を確保するため運賃の独自設定、維持や他社の参入を許可しないなどの優遇制度を設け、既得権益を守り続けた。

海運同盟は、内部規制として運賃協定、配船数の協定、積取比率(同盟各社の輸送シェア)の協定、運賃プール計算を実施し、また対外規制手段として、
(1) 運賃延戻し制:荷主が同盟船を利用し続ければ運賃の一部を払い戻しする制度。
(2) 二重運賃制 :同盟船に一手船積みする契約をした荷主に運賃を割り引く契約運賃制
(3) 闘争船配船 :同盟航路に割り込んできた盟外船を低率運賃で排除する配船
などを行っていた。

20世紀の初頭には、英国、ドイツ、ベルギーだけでなく、日本やデンマーク、フランス、チリ、米国の船社が協定に加入。アジアから欧州に向かう欧州運賃同盟は、各航路の運賃同盟の中でも最強の権限と拘束力を持っていた。

コンテナ船の出現

第二次世界大戦が終了し、日本が戦後の復興を成し遂げ、徐々に製造業が力をつけてくると、日本から欧州や米国への輸出が増えていった。同時に、1956年に米国のマルカム・マクリーン氏が建造した世界初のコンテナ船の登場は海上貨物輸送に一大革命をおこし、貨物の大量輸送を実現する。

20世紀の後半、特にコンテナ船の出現以降、貨物の性質は原材料から製品に代わってきていた。製造国日本から消費地である先進国、特に欧州、米国向けに大量の荷物が動き出す。

第二次世界大戦時、欧州はドイツ、イタリアの同盟国と英国、フランスなどの連合国が激突した経緯から、欧州全般にいまだ戦争の後遺症が残っており、消費力も戦前の状態には戻っていなかった。一方、戦勝国であり自国内の被害の少なかった米国は、まさに戦勝ムードもあり、外国のものを買い入れるだけの余力があった。

おのずと日本から出る製品は欧州に比べ、米国向けが増えていった。日本を起点にしてアジア・欧州を統括する欧州運賃同盟と米国向けに出す北米運賃同盟が、20世紀後半の運賃同盟の双璧であった。

コモディティレートの採用

発足当時の運賃同盟の運賃は、コモディティレートが採用された。これは貨物のバリュー(価値)に応じて運賃を設定することである。原材料のように、大量でしかも価格の安いものはベースカーゴとしての扱いになることが多く、運賃は当然、低く設定される。一方、機械のように価格が高いものは取り扱いにも細心の注意が必要であり、また、製品自体への梱包や貨物の固定なども必要なことから、運賃は必然的に高く設定されていた。

コモディティレートはコンテナ船以前の在来船の運賃に適用されていたが、コンテナ船導入後も長く同盟内で採用され、貨物のバリューによって運賃は異なっていた。また、同盟のタリフ(運賃表)には基礎となる運賃とは別に、原油価格の高騰下落の影響を調整するBAF(Bunker Adjustment Factor ) や為替の変動を調整するCAF(Currency Adjustment Factor)などが付加された。

当時最強といわれた欧州同盟には10数社の船社が加入し、日本・アジアから欧州各港への配船を行っていた。代表的な欧州の寄港地としては、英国はサザンプトン、フェリックストウ、オランダのロッテルダム、ベルギーのアントワープ、フランスのル・ハーブル、ドイツのハンブルグ、ブレーメル・ハーベンなどがあった。

船社もいくつかのコンソーシアムを組み、共同配船を行っていた。欧州系の船社が中心となって結成したTRIOグループや、日韓仏などの船社で構成されたエースグループなどがその中心であった。

1960年から1980年まで、運賃同盟は取り扱い数量において最高を更新し続け、黄金期を迎えるのである。この頃になると東アジアでは日本だけでなく、韓国や台湾も経済発展を遂げ、大幅に生産能力を向上させている。欧州、北米両運賃同盟を支えるのは日本と欧州、米国の船社のほか、韓国、台湾の船社も加わっていった。

絶頂を迎える運賃同盟にも、足元から亀裂が入っていく。加入船社の破綻や盟外船社の台頭である。

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赤岩寛隆 (Hirotaka Akaiwa)

赤岩寛隆 (Hirotaka Akaiwa)

ライタープロフィール

外航海運会社で20年以上にわたり北米定期航路の集荷営業に従事。北米駐在を経て2013年9月、北米唯一の海運、港湾、物流情報発信会社SHIPFANを設立。
「日本海事新聞」紙上に「ロサンゼルス便り」、 ロサンゼルスのフリーペーパーに「物流時報」を定期掲載するほか、物流コンサルティング、物流セミナー、港湾ツアーの開催、輸出入のマッチング業務を手がけている。ロサンゼルス港に「コンテナ物流研究所」を開設。

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