押さえておきたい
バイリンガル教育のカギ

基礎が確立する中学生期
知力が広がる高校生期

中学生頃までに、言語力の基本となる部分はすべて学びます。ですが、こどもたちを見ていて思うのは、言語力や人としての成長度合いは高校時代でまったく変わるということです。もちろん個体差はあります。言葉だけの意味でいえば、幼少期から中学生くらいまでが吸収できる時期。一方、高校生になると理解や知識、探究心、知的好奇心に広がりが出て、知力が大きく伸びます。

弊校に通う生徒で、中3までは日本語力が十分でない子がいました。ですが、高校に入り弁論大会に出ているのを見ると、高1、高2と年を経るごとに目に見えて成長していくのが分かりました。

アメリカの大学を目指す場合、高校ではもう日本語は必要ないと思うかもしれませんが、実はそうではありません。大学受験では、個人の能力や特技をアピールする必要があります。高校生の間に補習校に通うなどして日本語での学習を継続していれば、バイリンガルの才能を育てたとレジュメに記載できるのです。

また、大学を卒業した後、日系企業で働く人は多くいます。その時に、日本人のビジネスレベルで読み書きや敬語を使っての会話が確実にできる人材であれば、即戦力になるというのはいろいろな企業で言われています。

一方、日本の大学を受ける場合も、帰国子女枠で入学することは簡単でも、実際に講義についていけずアメリカに帰って来る生徒がいます。なんとか大学を卒業できても、日本の企業に入れるほどの日本語レベルがない場合もあるのです。高校生の間にどれだけ日本語での思考力、知識、理解を深められるかが、お子さんの将来を左右することになるでしょう。

あらゆる手段を考えて
言語学習のサポートを

地域によっては、通える範囲に日本語の補習校や塾がない場合もあるでしょう。昔は通信教育、今はそれに加えてオンライン受講などで勉強しやすい環境になりました。また、日本でドリルなどを買ってきて、保護者が教師となって指導するご家庭もあります。

中学・高校の年代で渡米した場合、英語が苦手、現地校の生活が不安というこどももいます。英語力を上げるのに良い方法としては、現地校の先生に家庭教師をお願いすることです。学校や地域にもよりますが、アメリカでは公立の先生でもアルバイトを認められている場合があります。もし引き受けてもらえなくても、信頼の置ける知り合いで英語を教えられる人を紹介してもらうといいでしょう。

現地校では海外からの生徒を受け入れると、たとえば「ジャパンデー」などを設けて、その国の文化を学ぶ時間を作ってくれることがあります。日本人という特性を生かして積極的にクラスの生徒と関わることで、日本に興味を持ってもらいましょう。殻を破って、草の根の日米交流にトライすることが大事です。

保護者としてできることは、現地校のボランティアや課外活動に積極的に参加すること。また、英語がネイティブではない保護者の方と友達になり、アドバイスをもらうなどして味方を作ることも必要です。その繋がりでお子さんに友達ができることもあります。積極性やサポートする姿を見せることが、お子さんにもいい影響になるでしょう。

バイリンガル教育の心構え

「こどもに将来どんな人間になって欲しいか」の明確なビジョンを描くことは重要です。それは、医者になれとか◯◯大学に入れという親のエゴを押しつけることではなく、「世界で活躍できる人」「日本に貢献できる人」など、「この子の人生はこういう風になって欲しい」という思いを持つことです。過干渉でも放任でもなく、背中を押してあげられるように、こどもとよく話をすることが大事。親が志を持って、彼らがどういう人生を生きたいかをサポートすることが第一歩となります。

取材協力
ロサンゼルス補習授業校 あさひ学園
岩井英津子専務理事

1980年代、商社駐在員として渡米。あさひ学園教員のち管理職を経て2014年から現職。2010年教育カウンセラー資格取得。
https://www.asahigakuen.com
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