押さえておきたい
バイリンガル教育のカギ
- 2019年9月30日
- 2019年10月号掲載
学ぶ力をつける小学生期
第二言語の習得過程には2種類あります。3〜5年間で生活言語が、5〜9年間で学習言語が育成されます。学習言語とは、思考や論理的な分析ができる言語能力のこと。つまり、読み書きや文章問題、複雑な教科学習に必要な言語能力です。
小学生期では、一般的に5年生までにしっかりと読み書きの能力を身につけておけば、言語力が保持しやすいといわれています。逆に読み書きの能力が十分でないと、帰国などで環境が変わったら身につけた言語力が失われていくといわれています。この時期にどれだけ基盤をしっかり作っておくかが重要なのです。
現地校か、日本人学校か
米国内のほとんどのエリアでは現地校しか選択肢がないと思いますが、日本人学校が近くにある場合、どちらに入れるか悩むご家庭も少なくありません。この場合、状況に応じた適切な学校選びが大切です。
カリフォルニア州の現地校に関していうと、保護者のいずれかの第一言語が英語ではない場合、入学する前に英語のテストを受けます。ネイティブと同等の言語力と判断されれば普通学級に入れますが、初めて駐在するご家庭であれば、レベル別に分けられた基礎英語の学級に入るケースが多いです。
1、2年生の場合は要求される言語力が少ないので、比較的早く普通学級に移行できるでしょう。しかし、3年生以上の場合は、授業についていけるだけの英語力を習得するまでに時間がかかります。駐在が3年の場合、入学の年齢によっては、基礎英語の学級だけで帰国となるケースもあるのです。また、この時期は第一言語での学習も重要。特に低学年は学習方法や習慣を身につける学齢なので、日本語での学習が継続できるよう、ご家庭で教育方針を見定めて支援していきましょう。
一方、日本人学校では日本の学校と同じカリキュラムで授業を受けるので、帰国後の授業に遅れをとる心配はありません。英語教育に関しては学校にもよりますが、西大和学園カリフォルニア校では英語30%、日本語70%でカリキュラムを組んでいます。現地校に準じた基礎英語クラス、副教科の英語イマージョン、英検対策を行うとともに、文科省研究委託校として日本文化を英語で発信するなど、総合的に英語力を育成します。
家庭でのサポートが大切
現地校に通うこどもたちは、高学年になるとアイデンティティの確立が課題になります。価値観の差や語彙力不足により、家庭内で意思疎通が困難になることも少なくありません。重要なのは、日本人としてお子さんの核に残すべきポイントを決めておくことです。日本式の挨拶や礼儀、上下関係の概念など、最低限維持したい項目を具体化しておきましょう。
また、定期的に日本語力を測ることをおすすめします。特に学年が上がると新出漢字の数も増え、覚えにくくなるため、5年次には2学年分が習得できていない場合もあります。最低限、教科書の音読ができる力を維持するよう努力しましょう。漢字検定の模擬試験をウェブサイトからダウンロードして解いてみるのも手段の一つです。お子さんの日本語力を把握しておくことは、帰国する際の学校選びの指標になります。
英語力に関していうと、プレゼンテーションができる力をつけておくと将来に役立ちます。学校や地域で開催されるフェア、コンテストといった行事に積極的に参加しましょう。お稽古に通ったり、発表会で舞台に立ったり、語彙や知識を増やすために図書館を活用してさまざまな本を読んだりすることも有効です。地域で友達を作り、英語を活用する豊かな体験ができると良いでしょう。いずれにせよ、自主性を育てるためにも、お子さんが好きなことに取り組める環境作りが重要です。
取材協力
西大和学園カリフォルニア校(NAC)
平日校 小倉佳恵校長
9年間の米国駐在を経て、2000年前帰国子女センター校目黒区東山小学校教諭、2001年同区教育委員会情報教育指導員、2010年同教育委員会国際理解教育支援員。目黒区・神奈川県内約35校のALT研修・英語科研究・カリキュラム編成に関わった後、2014年NACカリキュラム改革に携わる。WebsterUni.EduTech修士、CSUSM インターナショナルバカロレア、UCI Ext.TESL.、津田塾数学科卒。
https://www.nacus.org
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