日本で暮らす老親の終活 ~米国在住の子が考えておくべきこと~

文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)

インターネットの普及により、外国間においても簡単に電話、メールで音声、ビデオ交信ができる世の中になりました。ビジネス、プライベートにかかわらず、世界各地の人とのやりとりはインターネットを介して安く、そして瞬時に行えます。しかし、そうしたなかでも冠婚葬祭についてはインターネットで……、というわけにはいきません。それが身近な親族の最期に関わることとなれば、なおさらです。

今回は老後日本へ帰国した後、いずれ迎えるであろう最期の場面で頼れる親族がなく、必要となる手続きを米国在住の子に託す場合のお話です。もし将来自分が帰国後日本で亡くなってしまったら……、はたして米国に住む子にその後の手続きを任せられるでしょうか? または現在米国在住者で老親が日本で暮らしているが、日本に兄弟姉妹など頼れる親族がいない場合、親に何かあったら自分ひとりで対処できるでしょうか?

なお、一般的に「終活」とは「人生の終わりのための活動」で生存中からの活動を意味しますが、ここでは死亡時の手続き(「死後事務手続き」といいます)のことを指します。

難しい日本の手続き・習慣

当然のことですが、日米の手続きや習慣は異なります。長年米国で暮らしていた人にとって、日本の終活のことは分かりません。たとえ知っていたとしても「何となく覚えている」程度であって、いざ手続きしようと思っても何から始めれば良いか迷ってしまうかもしれません。まして、米国育ちで日本語も十分理解できない子であればなおさらでしょう。

そこで重要なことは、今のうちから日本の終活に関する手続きを調べ、日本への訪問を含めやるべき項目や連絡先(日本の親族、役所、候補となる専門業者など)を事前に確認しておくことです。

一般的な死後事務手続き

日本で人が亡くなった時の手続きを、以下表にまとめました。これは一般的なものになりますので、人によってはさらに必要な手続きがあるかもしれません(ペットや債務処理など)。

表の「死亡時」については死亡直後の手続きであり、時間的な猶予はあまりありません。特に役所への届け出や葬儀の手配は数日以内が求められますので、海外から駆けつける場合は航空券や宿泊の手配のほか、関係者への連絡など、慌ただしく十分な準備ができないかもしれません。

事前の準備が大事

終活手続きを米国の子に託すのであれば、各手続きの内容や役所、専門業者へ依頼する場合の連絡先などを確認しておくことが望ましいでしょう。手続きの流れや(仏式など)葬儀の慣習などを知っておくだけでも慌てることなく、また気分的にも落ち着いた対処が可能です。できればマニュアルにするのが良いでしょう。せっかく準備しても、いつ来るか分からない「その時」までに忘れてしまっては意味がありません。

いかがでしょうか? ここでは死後事務手続きを取り上げましたが、終活にはたとえば、親が認知症になった場合の介護や金銭管理なども含まれます。興味のある人はこの機会に調べてみてはいかがでしょうか?

<参考記事>
■本コラム2017年9月7日10月11日掲載
「家族や身近な人が亡くなった時の手続き(前・後編)」

■本コラム2019年6月19日7月18日掲載
「老親の資産を守る~日本の成年後見制度~(前・後編)」

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、成年後見など日本在住の老親のサポート)を行う。

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