Vol.17 先住民が残した宗教集落
チャコ文化
− ニューメキシコ州 −
文/齋藤春菜(Text by Haruna Saito) 写真提供/NPS Photo
- 2020年6月2日
- 2020年6月号掲載, ニューメキシコ州
世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2019年7月現在、167カ国で1121件(文化遺産869件、自然遺産213件、複合遺産39件)が登録されている。
アメリカ先住民族であるプエブロ族は2000年以上もの間、アメリカ南西部の広大なエリアで生活を営んできた。なかでもニューメキシコ州の北西部に位置するチャコ・キャニオンは、古代プエブロ文化のルーツであり、中心として発展した場所。850〜1250年の間に徐々に築かれ、1020〜1110年に最盛期を迎えたこの地は、宗教儀礼や政治、貿易が行われる古代中心都市だった。
チャコの文化で特筆すべき点は、古代プエブロ族が築いた無数の集落群だ。チャコ・キャニオンでは現在、大きいものが12、小さいものだと400以上の集落が発見されている。それぞれの集落は日干しレンガ造りの集合住宅、公共施設、宗教儀式に使われたキヴァと呼ばれる施設などで構成されている。複数階層を持つ建築物や、地面を円形に掘って造られた巨大なキヴァは、古代プエブロ独自の建築様式。また、すべての集落は放射状に広がる道でつながっている。
このよく整備された大規模で洗練された建築様式や、集落間をつなぐ緻密な設計は、チャコの人々が高度な建築技術を持っていたことを示している。古代プエブロ族の歴史と宗教概念を解き明かす重要な考古学的資料として、1987年に世界文化遺産に登録された。
チャコ文化の構成資産となっているのは、チャコ文化国立歴史公園、アズテック遺跡国立モニュメント、そしていくつかの小規模な史跡。集落跡には2〜5階建ての日干しレンガ造りの壁や松で作られた梁などがどれも良好な保存状態で残っており、構造の複雑性と緻密性、また当時の暮らしぶりを今もうかがうことができる。
チャコ文化国立歴史公園へ
チャコ文化国立歴史公園には、ビジターセンターを起点に約9マイルのキャニオン・ループ・ドライブがあり、この道路沿いに6つの主な史跡が点在している。まずはビジターセンターからすぐのウナ・ヴィダへ。1マイルのトレイルを歩いて集落跡を見たらさらに奥へ進み、岩壁に動物や人の絵が彫られた象形文字、ペトログリフもお見逃しのないように。
ループ・ドライブの折り返し地点に位置するプエブロ・ボニートは、チャコ・キャニオンでもっとも規模が大きく、もっとも重要な宗教儀礼が行われていた集落跡。約5エーカーの広さに650ほどの部屋と30以上のキヴァが備えられている。まさにここがチャコ文化の中心地であり、ここを起源としてコロラド州やユタ州、アリゾナ州までプエブロ族の文化が広がったと考えられている。すぐ近くには、チェトロ・ケトルと呼ばれる3エーカー以上の広さの2番目に大きな集落跡もある。プエブロ・ボニートとチェトロ・ケトルの間をつなぐペトログリフ・トレイルでも、岩壁に残ったペトログリフを見ることができる。
そのほか、プエブロ・デル・アロヨ、カサ・リンコナダ、ハンゴ・パヴィも主な集落跡なので、必ず押さえておこう。
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