Vol.18 
クルアーニー/ランゲル-セント・イライアス/グレイシャー・ベイ/タッチェンシニー-アルセク
− アラスカ州・カナダ −

文/齋藤春菜(Text by Haruna Saito) 写真提供/NPS Photo

世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2020年7月現在、167カ国で1121件(文化遺産869件、自然遺産213件、複合遺産39件)が登録されている。

今も拡大し続けている、グレイシャー・ベイ国立公園のマージェリー氷河 ©︎S. Neilson

アラスカ州とカナダの国境地帯に広がるのは、世界最大規模の自然保護区。北米大陸最高峰の山々に世界最大級の氷河、広大なツンドラ地帯など、ほかでは見られないユニークな大自然が悠久の時を刻んでいる。ここは厳しい自然が人間を寄せつけず、多種多様な動植物がのびのびと暮らせる土地。1979年にアラスカのランゲル-セント・イライアス国立公園とカナダのクルアーニー国立公園が世界自然遺産に登録され、1992年にアラスカのグレイシャー・ベイ国立公園、1994年にカナダのタッチェンシニー-アルセク州立自然公園が追加登録された。

フィヨルドの彫刻を見に

ランゲル-セント・イライアス国立公園のセント・イライアス山

1番最初に登録を果たしたランゲル-セント・イライアス国立公園は、アメリカ最大の国立公園。その広さはなんと1320万エーカー、イエローストーン国立公園とヨセミテ国立公園、さらにスイスの国土を足した広さに匹敵する。ここには標高約1万8000フィートのアメリカで2番目に高いセント・イライアス山を筆頭に、ブラックバーン山、サンフォード山、ランゲル山など9つの高峰があり、どれもドライブウェイから姿を望むことができる。また、内陸を流れる氷河としては世界最大級のナベスナ氷河をはじめとする、数々の氷河も見どころ。この広大な大自然の美しさを実感したいなら、エアタクシーで上空から眺めるのがベストな方法だ。

氷河を目前で見たいなら、同じくアラスカに位置するグレイシャー・ベイ国立公園を訪れよう。観光に人気なのが、1日かけてじっくりと回るクルーズ船。港を出発した船は、氷河の観賞ポイントを目指してフィヨルドを奥へと進んでいく。周囲を囲む複雑に入り組んだ地形は見もので、絶滅危惧種であるザトウクジラが狩りをする姿や、シャチ、トド、アザラシ、ラッコなどの海洋生物、さらには対岸を歩くブルー・グレイシャーベア、グリズリー、マウンテンゴート、ハクトウワシなどの生き物が見られるチャンス。

グレイシャー・ベイの巨大な湾は、複数の氷河が注ぐいわば密集地帯。世界中で氷河が後退しているなか、ここでは今も成長し続ける氷河を見ることができる。氷河とは、山に積もった雪が氷に変わり、斜面に沿って流れ出したものだ。長い時間をかけて山を下ってきた氷河は海に到達すると、轟音を立てて海面に崩れ落ちていく。海上60メートルもの高さから崩壊する氷河の貴重な一瞬は、まさに圧巻。

近年見られる氷河の減少・後退は地球温暖化が原因と考えられてきたが、実は氷河には前進と後退を繰り返す複雑なサイクルがあり、その仕組みはまだ解明されていないという。ここアラスカとカナダの氷河地帯には、地球の未来を解き明かす鍵が秘められているのかもしれない。

グリズリーをはじめ、野生動物の宝庫

 

遺産プロフィール
クルアーニー/ランゲル-セント・イライアス/グレイシャー・ベイ/タッチェンシニー-アルセク
Kluane / Wrangell-St Elias / Glacier Bay / Tatshenshini-Alsek

登録年 1979年登録、1992・1994年範囲拡大
遺産種別 世界自然遺産
https://www.pc.gc.ca/en/pn-np/yt/kluane
https://www.nps.gov/wrst/index.htm
https://www.nps.gov/glba/index.htm
http://bcparks.ca/explore/parkpgs/tatshens/

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齋藤春菜 (Haruna Saito)

齋藤春菜 (Haruna Saito)

ライタープロフィール

物流会社で営業職、出版社で旅行雑誌の編集職を経て渡米。思い立ったら国内外を問わずふらりと旅に出ては、その地の文化や人々、景色を写真に収めて歩く。世界遺産検定1級所持。

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