海外教育Navi 第57回
〜日本へ帰国受験をする際に気をつけるべきこと〜〈前編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。

Q.中学・高校・大学を受験する場合、帰国のタイミングなど気をつけるべきことを教えてください。

はじめに

国内の中学・高校・大学に進学する予定のお子さんがいるご家庭では、帰国後にどの学校を選ぶか、どの時点で子どもを帰国させるかというのは悩ましい問題です。今回は帰国して国内の中学・高校、さらには大学を受験するうえで、帰国のタイミングを含め考慮しなければならない点についてお伝えします。

帰国後の学校選択

帰国生が選ぶ学校は全国的に見ると、小学生では約93パーセント、中学生では約62パーセント、高校生では約26パーセントが公立学校に入学・編入学しています。

日本の教育制度では、中学校卒業までの9年間が義務教育になっているため、中学3年までの年齢で帰国する場合、国立や私立、公立の中高一貫校で入学選抜を行っている学校を選択しなければ、受験(検)をしなくても住民登録をした地域の公立学校の年齢相応の学年に入ることができます。

このように中学生までは選抜試験のない学校に入学・編入学することができますが、「高校入試がなく6年間の一貫した教育課程や学習環境のもとで学べる」「帰国生のために特別な受け入れ体制を持っている」「国際バカロレア(IB)のカリキュラムを導入している」等の理由で、中学に入学する時点で中高一貫校を受験するケースが近年増加しています。

中学校の帰国生入試

私立中学校の一般入試では、関西圏と埼玉県、千葉県においては1月中旬から下旬、東京都と神奈川県においては2月上旬に入試が行われる場合が多いですが、帰国生対象の入試では、海外での入試を含めると、早い学校では9月から始まり2月中旬まで続きます。ごくわずかですが3月に実施する学校もあり、帰国生入試は一般入試に比べて長期間にわたるため、日程調整が大切です。

帰国生入試の受験資格の多くは、海外での滞在期間が1〜3年以上、帰国後の期間が1〜2年以内となっています。

また選考方法は一般入試と同様の「国語・算数・社会・理科」のほかに、「国語・算数」「算数・英語」や「国語・算数・英語」、あるいは「英語」か「算数」の1科目のみ、面接や作文のみ、教科を超えた総合的な思考力や表現力などを見るための「適性検査」と多種多様です。ただし中学校では一般入試においても、2020年度から始まる大学入試改革の影響を受け、21世紀のグローバル社会に対応していくための資質・能力を問う「英語入試」「思考力型入試」「適性型入試」「自己アピール(プレゼンテーション)型入試」などを実施する学校がここ数年、増加しています。

このように、中学校入試は帰国生入試に限らず、一般入試も多様になっているため、幅広く受験校を選択することができます。各学校の入試制度についてはホームページなどを通じて早めに情報収集し、計画を立てるといいでしょう。

高等学校への進学

高等学校は義務教育ではないため、入学・編入学するには、選抜試験に合格しなければなりません。また高等学校の受験では、日本の義務教育修了(中学校卒業資格)、もしくは海外で学校教育の9年の課程を修了しているか、入学する年の3月末までに修了見込みであることが出願資格として求められます。

海外の現地校やインターナショナルスクールでは学年の修了時期が日本と異なります。たとえば翌年の6月に9年生(中3)を修了する場合、日本の高等学校への出願資格がありません。このような場合は遅くとも前年の12月ころには帰国し、日本の中学3年生に編入することによって、その学校の「卒業見込み」で受験することができます。9年生を6月に修了したあとに帰国する場合は、高校1年生の9月編入学試験を目指すことになります。ただし、9年の課程が3月末に未修了でも柔軟に対応してくれる学校もありますので、まずは学校に直接問い合わせてください。

高等学校の帰国生入試

私立の高等学校の一般入試は1月中旬から2月中旬、国公立の一般入試は1月下旬から3月中旬ですが、帰国生入試の多くは11月から3月中旬に行われます。帰国生入試に出願するための海外での滞在年数、帰国後の年数の条件は中学校の場合とほぼ同じです。

帰国生入試の選考方法は、学科試験を行う学校の多くは「国語・数学・英語」の3教科か「国語・数学・社会・理科・英語」の5教科と面接、学科試験を行わない学校では、海外の在籍校での成績や活動歴を評価する書類審査や日本語または外国語での面接、作文となっている場合が多いです。

中学・高校の編入学

はじめにも述べましたが、公立中学校への編入学は基本的にいつでも可能ですが、そのほかの学校では受け入れ体制が学校によってそれぞれ異なります。編入生の受け入れについては、欠員が生じたときに募集する学校が多いのですが、学期ごとに募集したり、随時相談により受け入れたりする学校もあります。

ただし、中学・高校においてはそれぞれ3年生の2学期以降は募集する学校が少ないです。

編入学試験の選考方法は、編入学後の授業についていける学力があるかどうかを見るために、「国語・数学・英語」と面接を行う学校が多い一方で、帰国生に対しては「英語」のみや「英語」の作文と面接、書類審査と面接を実施する学校もあります。

→「第58回 〜日本へ帰国受験をする際に気をつけるべきこと〜〈後編〉」を読む。

今回の相談員

海外子女教育振興財団 教育相談員
植野 美穂
東京学芸大学附属高等学校大泉校舎の開設に携わり、以降数学の教師として帰国子女教育にかかわる。同大学附属国際中等教育学校の開校に開設準備室長としてかかわり、2007年から同校教諭。09年より海外子女教育振興財団の教育相談員、14年より教育相談室長。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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