【ニューヨーク不動産最前線】
ニューヨークのこれから

売買・賃貸ともにNYCアパートの値段がかなり下がりました。特にマンハッタンでは、コロナ禍で通勤の必要がなくなった人々が生活費の高いマンハッタンにいる必要はなくなったため、アパートを引き払う人が多いです。こどもがいる家庭では、もっと広いスペースを求めて郊外へと越して行っています。そのため、ロングアイランド、コネチカット、ニュージャージーといったニューヨーク郊外は不動産ブームで逆に値段が上がっているようです。私の住んでいるビルでも明らかに人が減っています。夜になっても電気が点いている部屋は少なく、夏頃までは郊外に避難しているのかなと思っていたのですが、最近では引っ越してしまったのかなと思うようになりました。

ただ、オフィス街が閑散として閉店してしまった店舗やレストランが目立つ一方で、住宅地や公園にはけっこう人が溢れています。屋内での飲食が制限されているので、代替措置として市はレストランが路上にテーブルを出して食事スペースを設けることを許可しています。そのせいでエリアによっては一見以前よりも活気があるようにさえ見えます(ただし、レストランの中はガラガラですが)。公園も人でいっぱいです。私も家から近いのでセントラルパークによく行くのですが、コロナの前よりも明らかに利用者が増えています。ランニングをする人、サイクリングをする人も激増です。

実際にマンハッタンから人が出て行っているのは確かですが、限定的ではあってもこのように人々が外に出ているのを見ると少しほっとします。以前はどこに行っても人が多くて、ランチを買うにも列に並んで順番待ちという生活で鬱陶しいと思っていたのですが、こうなってみて改めて社会は人で成り立っているというのを再認識させられます。

人が出て行った分、入ってこないと空室は埋まらないのですが、入ってくる人が激減してしまい、当然空室が増えています。レンタルもセールも空室が増える一方で、マーケットには物件がダブついています。当然値段も下がっていますが、買い手が付きません。値段が下がっているうえに史上最低金利となっている今は、方程式通りだと買いのマーケットなのですが、やはり先が読めない以上、しばらくこの状態が続くのでしょう。ただし、コロナが収まった場合でも、このまま在宅勤務が主流となるケースが想定されます。そうなった場合に人々はマンハッタンに戻ってくるのでしょうか。

私は多くのニューヨーカーがそう言っているように、戻ってくると思います。通勤の必要はなくても、レストランやショップ、劇場が再開し、活気を取り戻した街に、やはりマンハッタンに住みたいと思う人はたくさんいるのではないでしょうか。ここは特別な街です。早々に郊外に引っ越した人たちの中には、早まったと後悔している人も多いと聞きます。あまりにも生活スタイルが違いすぎてストレスになってしまうそうです。マンハッタンはやっぱりマンハッタンなのです。

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柏原知子 (Tomoko Kashihara)

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

ライタープロフィール

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2021年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

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