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海外教育Navi 第78回
〜高校生を連れて海外赴任する際の留意点〜〈後編〉
記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)
- 2021年6月15日
海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。
Q.高校生を連れて海外赴任をします。留意点を教えてください。
前回のコラムでは、アメリカでの高校生活や保護者の関わり方についてご説明しました(前回記事へ)。今回は、高校卒業後や帰国に向けて考えるべきことについてご説明します。
④帰国に向けて考えておくべきことは何でしょうか。
これは高校を卒業する前に帰国するのか、卒業してから帰国するのか、それとも現地の大学に進むのかによって異なります。
(1)卒業前に帰国する場合
卒業を前に海外赴任が終了し急遽帰国する場合や、卒業を待たずに帰国を早める場合は要注意です。
中学段階では義務教育ですから公立中学に復学できますが、高校は違います。前在籍校がある場合は相談のうえ、復学できることもあります。
復学できる高校がない場合には、編入学試験を受けることになります。私立でも公立でも編入学制度はありますが、上級学年になるほど狭き門になり、高校3年生で編入学できる学校は限られています。
ほかの選択肢としては通信制高校への編入学(帰国前から可能)や高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定)を受験する方法も考えられます。
なお高校に編入した場合も大学の帰国枠入試を受験できる例があります。
(2)現地校・インターナショナルスクールの卒業資格
高校の卒業制度は国によって異なります。アメリカ(米系インターナショナルスクールを含む)の場合は必修科目を含む卒業に必要な単位数を取れば(統一試験がある場合もあります)卒業資格を得ることができます。
個人差はありますが、卒業するにはできれば3年以上の滞在が望ましいといわれています。
イギリス(英系インターナショナルスクールを含む)では、Year11でGCSEの試験を受け、さらにYear13までにGCS・Aレベルの資格を取ることで高校卒業と見なされます。
(3)海外の高校を卒業してから日本の大学を目指す場合
日本の大学に入学するためには、外国における正規の教育の12年目の課程を修了することが条件となります。原則としてその国の大学入学資格があれば日本の大学入学資格があると考えてください。
資格があれば志望する日本の大学の入学試験を受験することができます。条件が合えば、帰国生枠入学試験を受験できます。帰国生枠入学試験は海外の学校で学んだ生徒があまり不利にならないように配慮された入学試験ですから、英語を重視していたり、科目数が少なく面接を重視していたりします。
資格条件や試験内容は大学、学部、学科、コースによってさまざまな違いがありますから、受験が近づいたらインターネットなどを利用して情報を集めることが大切です。
(4)卒業後、海外の大学に進学する場合。
アメリカでは、高校の成績と学校内外での活動実績とSATなどの共通試験の結果で大学の合否が決められる場合が多いです。選考方法は国や地域で違いますから、学校のガイダンスカウンセラーとよく相談して高校の科目選択のときからの準備が必要です。
⑤高校生活がうまくいかないときはどうすればよいのでしょうか。
高校の生活がいろいろな理由で期待通りいかないこともあるでしょう。ことばと学習の問題は時間と努力が解決します。慌ててはいけません。
人間関係については、海外では相互理解が十分でないので国内のときより気をつける必要があります。
まず何が問題なのかお子さんとよく話したうえで、学校(カウンセラーや校長、いれば担任)に相談してください。この段階で乗り切ることができた例はたくさんあります。
それでも学校生活を続けていくのが難しいようであれば、転居してほかの学校に転校したり、帰国して寮のある学校に入ったりすることなどが考えられます。また、数は多くありませんが私立在外教育施設(海外にある日本の私立学校)もあります。寮のある学校が多いので選択肢に入れることができます。
海外生活の体験はお子さんにとってたいへんなことが多いですが、ほかでは得られない素晴しい体験でもあります。精神的にも大きく成長することができるよう願っています。
海外子女教育振興財団教育相談員
中山 順一
帰国子女の受け入れを目的に設立された国際基督教大学高等学校で創立2年目から38年間勤務。6000人以上の帰国生徒とかかわった。2008年より教頭。教務一般以外に入試業務(書類審査を含む)も担当した。2017年より海外子女教育振興財団で教育相談員を務める。
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