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日本の年金における外国との「社会保障協定」とは?
- 2021年8月26日
米国など日本国外に居住している人が日本の年金について調べる際に、「社会保障協定」というワードが登場すると思います。これは日本と日本以外の国の間で定められた、それぞれの年金制度に関する取り決めです。今回はその内容・目的・効果について紹介します。
1.社会保障協定とは?
社会のグローバル化が進み。国際的な交流が活発化するなか、日本から派遣されて海外で働くことや将来海外で生活することを考える人が年々増加しています。海外で働く場合は働いている国の社会保障制度に加入する必要があり、日本の社会保障制度との保険料を二重に負担しなければならない状況が生じます。また、日本や海外の年金を受けるためには、一定の期間その国の年金制度に加入しなければならないため、保険料の掛け捨てになってしまうことがあります。たとえば日本の年金制度では、老後に年金を受給するためには日本の年金(国民年金または厚生年金)保険料を10年以上納める必要がありますが、9年納めたところで海外へ移住してしまうと、10年に達していないため老後の年金をもらうことはできず掛け捨てになってしまいます。社会保障協定は、こうした問題点を回避するために2国間で締結されました。日本はドイツとの締結を皮切りに、米国など20カ国と締結しています。
2021年6月20日現在。カッコ内は発効年
ドイツ(2000)、イギリス※(2001)、韓国※(2005)、アメリカ(2005)、ベルギー(2007)、フランス(2007)、カナダ(2008)、オーストラリア(2009)、オランダ(2009)、チェコ(2009)、スペイン(2010)、アイルランド(2010)、ブラジル(2012)、スイス(2012)、ハンガリー(2014)、インド(2016)、ルクセンブルグ(2017)、フィリピン(2018)、スロバキア(2019)、中国※(2019)
準備中:イタリア※、スウェーデン、フィンランド
(※部分については後述)
2.目的、効果
社会保障協定では次の2点が取り決められています。
●二重加入の防止
「保険料の二重払い」を回避するために、加入するべき制度を両国間で調整します。たとえば日系企業の駐在員はその間も本社(日本国内)で厚生年金に加入していれば、この間現地居住国の年金に加入する必要はありません。ただこの期間は5年が上限となっています。日系企業では駐在期間が5年以内というのが大体のケースだと思いますが、何か予見できない事情で5年以上駐在することになった場合、両国の年金管轄局(日本は日本年金機構、共済組合)の合意を以って5年以上の適用が認められます。
●年金加入期間の通算
保険料の掛け捨てとならないよう年金受給に必要な加入期間について、日本と相手国の年金制度の加入期間を通算(合計)し、両国の年金を受給できるようにします。たとえば日本で自営業をしていた人が9年間国民年金保険料を納めた後に海外へ移った場合、老後の年金受給に必要な保険料納付期間10年に達していませんが、現地居住国の年金に1年以上加入すれば通算で10年となり、日本の年金を受給することができるのです。
なお、上記一覧表のうち※がついた4つの国については二重加入の防止のみ適用され、年金加入期間の通算は適用されません。
3.米国との社会保障協定
米国との協定では、対象となる年金制度はSocial Security(以下「SS」)になります。SSでは老後に受給するためには最低40クレジット(約10年間)の保険料(SS Tax)の納付期間が必要ですが、40クレジットに達していない人で日本居住時に年金保険料を納めた時期があれば、その期間と通算して40クレジットあれば米国年金(SS Benefit)を受給することができます。
4.その他補足情報
■年金加入期間の通算については、似たような制度として合算対象期間(カラ期間)があります。これは海外に居住する日本人(外国籍取得者を除く)について、海外在住期間を日本の年金保険料納付期間と通算できる制度です。この制度を適用すれば主婦など居住国で年金に加入していないケースでも、通算のメリットを活かすことができます。
■さらに別の似たような制度として二国間の税金の取り決めを行う「租税条約」があります。こちらは両国での税金の二重払いを回避するためのものです。具体的には日本の年金受給時の源泉徴収税額を回避するものです。
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