留学が転機になった!

文&写真/福田恵子(Text and photo by Keiko Fukuda)

屋形船に乗るという日本ならではの体験も

2021年7月末、ロサンゼルス名古屋姉妹都市委員会(LANSCA)と名古屋市との共催による、両都市間の交換留学生のイベントに出席した。オンライン開催の同イベントは、60年にわたって夏休みに実施されてきた高校生留学プログラムの同窓生たちのリユニオン(再会)が目的だった。

毎年、双方の都市が交替で4名の高校生と1名の引率教師を派遣している同プログラム。つまり、ロサンゼルスの高校生が名古屋に留学した翌年には、名古屋の高校生がロサンゼルスに留学してくる。実は私は、2019年にロサンゼルスから名古屋に向かう高校生たちをロサンゼルス空港で取材したことがある。日本に行ったらあれもしたいこれもしたいと、期待を胸に希望を語っていたアメリカの高校生たち。聞けば、彼らは制服を着て名古屋市立名東高等学校に通い、ホストファミリーと過ごし、名古屋での滞在が終わった後は全国各地を旅して回るのだという。

LANSCAの青いシャツを着て出発した彼らの笑顔が、今も脳裏に焼き付いている。しかし、その年を最後に、2020年と2021年の留学プログラムはパンデミックのために休止となった。そこで、プログラム自体が休みの間にこそ旧交を温めようと、LANSCAの委員長、照子ワインバーグさんの発案で今回のリユニオンイベントが企画されたのだ。

当日、連絡が付くのは過去10年に遡った同窓生ということで、2011年以降に同プログラムに参加した人たちが画面越しに再会して近況を報告し合うとともに、多くの人がこのプログラムがその後の人生にどう影響を与えたかについて話してくれた。

2015年参加、当時ロサンゼルスの高校生だったカール・リンさんは、現在在住している東京から画面に登場した。「名古屋に滞在した時にホストファミリーと作った思い出は非常に貴重なものだった。しかし、当時の僕は日本語を話すことができず、ホストファミリーと十分なコミュニケーションが図れなかった。そのことが残念で仕方なくて、僕はアメリカで進学した大学でサイエンスと日本語のダブルメジャーで卒業した。そして今はフルブライト留学生として東京大学に籍を置いている。確実にあの高校時代の夏休みの間の日本滞在が、その後の人生の転機になった」とカールさん。私は、実際に会ったことがない彼の話に感動で胸が熱くなった。

異文化体験の意義

転機は学生だけでなく、引率教師にも訪れていた。2019年、まさに私が空港で取材した年の引率教師だったシンディ・マルチネスさんは次のように語った。「私にとっては、名古屋のホストファミリーとの出会いが宝物だ。日本にも新しい家族ができた。彼らと一緒に料理したり、出かけたりしたことが楽しくて今も忘れられない。名古屋の好きなところはどこかと聞かれたら、それは人の素晴らしさだと即答する」。

名古屋からロサンゼルスに高校生を引率してきた日本の教師の次の話も印象的だった。「私はそれまで教師の仕事一筋だった。ロサンゼルスに滞在していた時は、ロサンゼルスの高校教師のモニカの家でお世話になった。そして、彼女が仕事の後にダンスに出かけたり、レストランに行ったりと人生を謳歌する姿を間近で見て、連れて行ってもらった私も一緒になって楽しんだ。仕事に打ち込むのもいいけれど、自分の時間を満喫すべきだということに、モニカと過ごして気付かされた。あの時のロサンゼルスでの経験が私を変えた」。十分に大人だったはずの引率教師の価値観さえ変えてしまった異文化体験は、まだ柔軟な思考の高校生には計り知れない影響を与える可能性があるというわけだ。人は、自分が行ったこともない国や触れ合ったこともない人に対して、先入観でレッテルを貼ることがある。そのような偏見をなくす一番の方法は、実際に文化が違う国で生活し、人々と交流するということだと再確認させてくれた今回のイベントだった。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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