海外教育Navi 第56回
〜日本人学校で不適応を起こすケース〜〈後編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。


Q.子どもを日本人学校に行かせるつもりなのですが、不適応を起こすケースについて教えてください。

前回のコラムでは、日本人学校の特長をご紹介しました(前回記事へ)。今回は、その続きをお話しします。

日本人学校という異文化

人間関係
小規模の日本人学校では、たとえば1学年が3名というようなこともあります。そのようなときには、よい人間関係づくりに細心の注意が必要です。

ただし、前からいる子どもたちも、新しい仲間を大歓迎する気持ちを持っています。

まず自分を表に出し、その輪の中に飛び込んでいくちょっとした勇気が望まれます。自分を説明すると同時に、その場所で新しい自分をつくっていく道のりも前向きに考えれば楽しいものです。

日本でのいままでの自分を知っている人は新しいクラスにはいません。親としても、周りの親同士の関係を上手につくっていくことで、お子さんを支援することになると思います。

学力
いままで日本の学校では成績がトップクラスだったお子さんも、中・大規模の日本人学校に入ると、周りも優秀で相対的な成績が思ったようには出ず、一時的に自信をなくす場合があるようです。多くの日本人学校では、人を蹴落としてでもよい成績を取ろうと考える子より、みんなでいっしょにわかるようになっていこうと考える子がとても多いように思います。自信をなくさないで、毎日の学習を着実に続けていけば確実に力がついていきます。ご家庭でも励ましてあげてください。

運動不足
日本での中学校の部活、小・中学校のスポーツ少年団などにあたる部分がなく、体を動かす機会が少ない日本人学校も多くあります。特に小学部高学年から中学部のお子さんには、運動不足は肉体的にだけではなく、精神的にも悪影響を与えることが多いようです。そのような場合、環境的に可能であれば地元のスポーツクラブに入って、定期的に体を動かす時間を持つことを考えなければなりません。

以前の生活も大切に

日本人学校に入った直後はお子さんにとって新しいことばかりがどんどん身の周りで起きています。それと同時に、日本での以前の生活がぷっつりと切れ(強制的に切られ)てしまうので、ふとしたときに、お子さん自身の心に何か空虚なもの、割り切れないものが湧いてくるのではないでしょうか。

思い出すのは日本で親しくしていた友達のこと。

どうしてるかなあ……あんなに気の合う仲間だったのに、また、こっちで新しい友達づくりかあ……。

そんなとき、保護者のかたは「いいお友達だったねえ。そうだ、こっちでの生活を、ときどき日本の友達に伝えてあげたらどうかな?」などと、旧友との心のつながりもキープできるということに気づかせてあげられます。

またモノの面でもお子さんは切り離しを余儀なくさせられています。たとえば、日本で使っていた自転車、ちょっとした自慢のコレクション、お気に入りの食器、など。親としては新しい生活なので、「新しいものを」という気持ちで、あるいは限られた船便スペースの都合でなどと理由はいろいろですが、日本に置いてこざるを得なかったモノもあるでしょう。大人から見たらつまらないモノでも、お子さんにとっては生活の一部となっていた大事なモノがあるかと思います。

日本人学校では、習字もあれば、音楽でリコーダーも使うでしょう。日本の学校で使っていた学用品は多くの日本人学校でそのまま使えます。ぜひ、持っていかれることをお勧めします。

そうやって学校に慣れていき、今度は新しい転校生に、自分が編入時に受けた優しいことばをかけてあげられるようになったお子さんも、日本人学校から羽ばたく日がやってきます。日本に帰国するにせよ、他国に移動するにせよ、そこで得た、日本語で学習する着実な学力、明るく爽やかで優しい多くの友達などとの出会いはかけがえのない果実となり、いつまでもお子さんの人生を豊かに彩ってくれると思います。

いちばんおいしい果実はなによりお子さんが日本人学校で安心して学習を継続しながら異文化体験をしっかり楽しみ身につけることができること。物事の多様な見方(ああ、これもアリなんだなあ……)、好奇心、寛容性などいっぱい手に入ります。

日本人学校、いいところですよ!

今回の相談員

海外子女教育振興財団 教育相談員
奥田 修也

ドイツのデュッセルドルフ日本人学校教諭、ベルギーのブラッセル日本人学校校長、中国の北京日本人学校校長として海外で多くの子どもたちや保護者に接した。2018年から海外子女教育振興財団の教育相談員として、渡航前・赴任中・帰国後のご家族の教育に関するさまざまな相談を受けている。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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