Vol.16 遥かな時の流れを感じる
ウォータートン・グレイシャー国際平和自然公園
− モンタナ州およびカナダ −

文/齋藤春菜(Text by Haruna Saito)

世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2019年7月現在、167カ国で1121件(文化遺産869件、自然遺産213件、複合遺産39件)が登録されている。

絵画のように美しいセントメアリー湖

モンタナ州の北部に位置するグレイシャー国立公園と、カナダのアルバータ州南部に位置するウォータートン湖国立公園。国境をまたいで接するこの2つの国立公園は、1932年に世界で初めて国際平和自然公園に指定された。きっかけは、地元住民たちが起こした小さな運動。人間が定めた境界とは無縁に続く豊かな自然を守るために、政府に呼びかけたことで設立された。

ロッキー山脈に沿って広がる自然公園には、標高1万フィートもの峰々が連なっている。ここには「北米大陸の冠」との異名がある。山の頂に降る雨が川となり、遥かなる旅を経て、西は太平洋、東は大西洋、北は北極海と3つの海に流れ出す、北米大陸で唯一の場所なのだ。グリズリーやビッグホーンシープ、高山植物など、さまざまな動植物の楽園を生み出した世界的に珍しいこの環境が評価され、1995年に世界自然遺産に登録された。

氷河が織りなす絶景

Go-to-the-Sun Roadは全長約50マイル、片道車で2時間ほど

グレイシャー国立公園には、東西を横断するGo-to-the-Sun Roadという道がある。ドライブしながら変化に富んだ美しい景色を楽しめるほか、ハイキングトレイルや各種アクティビティの拠点も点在している。グレイシャー国立公園の特有の見どころといえば、やはり氷河。この地の壮大で美しい景観は、気が遠くなるような長い年月をかけて氷河によって形成された。年々、温暖化によって山を覆う氷河の面積は縮小しているものの、今なお昔と変わらない姿が一部残っている。

ほとんどの氷河は険しい山の上にあって近づくことはできないが、ハイキングで見に行ける氷河もある。グリンネル氷河はその一つだ。往復で5〜7時間のトレイルは起伏があり険しい道のりだが、目の前に氷河が広がる光景はここでしか体験できないもの。体力的に難しい場合は、Go-to-the-Sun Road沿いから肉眼で望めるジャクソン氷河をお見逃しなく。

公園内にはマクドナルド湖や、高山植物や野生動物が見られるローガン・パス、氷河が多く残っているメニー・グレイシャーなどに約150ものハイキングトレイルがある。のんびりと日光浴をする固有種マウンテンゴートや、目の覚めるようなエメラルド色の湖など、非日常の贅沢な時間が楽しめるはず。

グレイシャー国立公園の東側の入口から車で1時間ほど北上すると、ウォータートン湖国立公園にたどり着く。青く澄んだ大きな湖を中心に、なだらかな平原や岩山、美しい滝などの豊かな自然が広がっている。ハイキングはもちろん、クルーズやカヤック、湖畔に広がる小さな村でショッピングも楽しめる。公園の敷地は小さいので、サイクリングもおすすめだ。

夏の間の暖かいわずかな期間には、緑広がる神秘的な景色が見られる2つの国立公園。行き来する際は、パスポートをお忘れなく。

断崖で暮らすマウンテンゴートはロッキー山脈の固有種

遺産プロフィール
ウォータートン・グレイシャー国際平和自然公園
Waterton Glacier International Peace Park

登録年 1995年
遺産種別 世界自然遺産
https://www.nps.gov/glac/index.htm
https://www.pc.gc.ca/en/pn-np/ab/waterton/
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齋藤春菜 (Haruna Saito)

齋藤春菜 (Haruna Saito)

ライタープロフィール

物流会社で営業職、出版社で旅行雑誌の編集職を経て渡米。思い立ったら国内外を問わずふらりと旅に出ては、その地の文化や人々、景色を写真に収めて歩く。世界遺産検定1級所持。

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