Vol.043:アメリカでの販促プロモーションアイデア&注意点

例年、ハロウィンが終わって11月となれば一気にホリデーシーズン突入!な雰囲気のアメリカ。サンクスギビングデーやクリスマスなどのビッグイベントを中心に街が盛り上がり、気持ちも軽くなった消費者のお財布の紐が緩む時期。

そこにブラックフライデーセールやサイバーマンデーセール、クリスマスセールが続き、思わぬ衝動買いも増え、クリスマスギフトを贈る目的(理由)で開放的な気分になってショッピングを楽しむ人が必然的に多くなる。

ビジネス視点で考えて、とても大切な時期ですね!特に小売りビジネスであれば、オンライン・店舗を問わず年間で一番売り上げが上がるという企業も多いはず。

ここで一つ大きく日本と違う注意点として知っておきたいのが、お正月や三が日という概念は無いということ。年始はほぼ休まずに元旦や1月2日から通常営業している会社や学校がほとんどなので、この11月、12月後半までがアメリカでの年末・ホリデー商戦期間となります。

もう一つ注意すべき点としてあるのが、アメリカでは返品が当たり前の文化であること。返品率は、実店舗5〜10%に対し、オンラインショップでは15〜40%にも上ると言われています。と考えると、年始は返品などの対応や処理作業に対してのコストを考えておくべきかもしれません。もしくは年末・ホリデー商戦のセール時に限っては、Final Sale Item! としっかり銘打って返品は受け付けないということをしっかり伝えるという対策も必要になりますよね。

そんなことを踏まえつつ「アメリカでよくある販促プロモーションアイデア&注意点」をいくつか紹介していきたいと思います。毎年、この時期になって焦ることのないように自社に適した販促プロモーションアイデアを考えるヒントや参考になれば幸いです。

#1, BUY ONE, GET ONE ディール

頭文字をとってBOGOディールと呼ばれたりもするこのプロモーションは、特にアメリカで人気の方法ですね。もっとも多い形としてBUY ONE, GET ONE FREE、つまり”一つ購入すれば2個目は無料”というのがあります。または ”一つ購入で2個目を50%OFF” や ”二つ購入で3個目からは$1/each”など。 ファストフード店やグロッサーリーストア、あらゆる業種の小売店でこのプロモーションを見かけます。

また、食品や小売りに限らずサービスを提供している企業でも活用が可能です。例えば、ヨガクラスのレッスンを提供しているとして、「チケットを5回分購入で1回分は無料」や「お友達の紹介で1回分無料プレゼント」などの形で応用することもできますよね。

!ポイント!
このプロモーションのポイント(注意点)は、ただ割引をするのではなく少なくとも2個または複数個を買ってもらうこと、にあると思います。在庫処理の助けになることはもちろん、割引をしたとしても確実に販売数1個の利益よりも2個の利益の方が上がると言う試算があっての戦略。

ワインや消耗品など、複数購入してもストックしておける商品などに適しているかもしれませんね。

#2, フラッシュセール

日本ではタイムセールと呼ばれているようですが、定番のセールスプロモーションですね。

主に「期間限定の特別価格」によって消費者の購買意欲を掻き立てます。予告なくキャンペーンが開始されたり、「今日だけ40%OFF!」、「セール終了まであと5時間!」や「先着10名限定!」などと期限や品数を限定することで、消費者に対し心理的に購入決定を促しやすい方法です。消費者の立場からすれば「今買わないと損しちゃう!」という切迫感が煽られますよね。

アメリカでフラッシュセールを企画しやすいのは、やっぱりブラックフライデーですね。日本で言うところの年末年始やお正月にあたる年間行事のイメージで、家族がみんなで集まってお祝いをするサンクスギビングホリデーの週末に大々的にセールが開催される日と認識されいます。消費者が初めから前向きにショッピングを楽しむ体制が既に出来上がっているので、商品が売りやすく最もフラッシュセールに適した時期になります。

!ポイント!
その後も、サイバーマンデー、クリスマスセールと続いていきますが、ここでのポイントになるのがそのセール開催の告知とフォローアップです。そもそもセールをしていることを知らせないと意味がないので、ソーシャルメディアやEメールによるマーケティングキャンペーンを利用して既存客へのセール開催の告知をしたり、広告を活用して新規客へリーチするなどを踏まえた戦略が必要です。

そして、一旦お店に来てくれたお客さんへのフォローアップが肝心。一旦はショッピングカートに入れたけどやっぱり買うのやめた、という人に何度もアプローチする仕組みを作ることで購入決定までの後押しが可能になります。特にオンラインストア(E-Commerce)上での販売促進には欠かせない施策となり、そして大きく売り上げに関わってくるポイントかと思います。

フラッシュセールは、特にブラックフライデー等の理由がなくても可能です。特に、ニュースレターなどで告知がしやすい既存客に向けて「創業●周年!お客様感謝セール」「VIP限定特別セール」など様々なタイミングで開催が可能ですね。

#3, 送料無料・返品無料キャンペーン

オンラインショッピングが当たり前になったこの時代、ショッピング時に必ずかかるコストが送料。消費者の中には、購入の最終決定の直前になって送料が高いという理由で購入を諦める人もいます。

逆に言えば、「送料無料!」はそれほど魅力的なオファーにもなり得るということ。「$100以上の購入で送料無料」や、「初回購入に限って送料無料」というプロモーションコードを作成する方法もあるかと思います。

商品の利益率や平均購入単価、実際の送料コストなどを計算して、送料無料にした時に増加する購入数を想定します。そこから損益分岐点が予想できたら、テストプロモーションを繰り返し行うことで最終的に売り上げ増に繋げることができると思います。

また「返品無料!」とすることで、消費者の心理的ハードルを下げるという方法もあります。これは販売する商品により適しているかどうかの判断をするべきかと思います。返品されても再販や転売ができる商品なのか、または元々返品率がかなり低い商品であるかなどが判断基準になると思います。

!ポイント!
ここでのポイントは、送料コストの変動と、梱包や発送にかかってくる作業コストなどの試算を忘れないこと。そして、返品に対する対応作業のコストも数値化することが重要かと思います。

その他、以下のような販促プロモーション方法もありますので、商品の特徴や販売方法、サービスの提供方法などを考慮して、自社に適したプロモーションを年間を通して計画、準備できれば良いと思います。

・クーポン、バウチャー
・無料サンプル、ギブアウェイ
・リワード、ロイヤリティープログラム
・VIP、アーリーアクセス
・キャッシュバック
・リファーラル(紹介割引など)
・ギフト進呈
・ラッフル(抽選)

最後に備考として、「一切、セールをしない」というプロモーション方法(=ブランディング)もあることをお伝えしておきます。分かりやすいところで言えば、アップルの製品は基本的に割引をしないというのが周知されていますし、アウトドアのPatagoniaなどは「商品を買わないで!」と発信し、地球環境保護の観点から修理やリユース、リサイクルを推奨しています。

ちょうどこれを書いているこの時期(11月後半)も、ブラックフライデーセール!の販促メールが色んなお店からたくさん送られてくる中、件名 “Just Another Friday” (いつもの金曜日)で来たアパレルブランドのメールがありました。”セールはしません。いつも質の高い商品をフェアな料金で提供しています” という逆説的な意味を込めたメッセージがあり、粋だなぁと感じてしまったのは僕だけではないはず。

結局のところ、ブランディングもマーケティングも両方大切。

会社や商品の生産体制、在庫状況、流行や時代の流れなどトータル的に俯瞰して考えた上で、一つ一つ実行してみるしかないのですが、最良の方法を探し改善し続けることがマーケティングであり、お客様とのコミュニケーションを通して積み上げて構築されるものがブランドとなるんだと思います。

アメリカでの販促プロモーション施策を含め、デジタルマーケティングに関してのご相談はこちらからお気軽にどうぞ。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

板倉光孝 (Mitsu Itakura ゼロハチロック:CEO)

板倉光孝 (Mitsu Itakura ゼロハチロック:CEO)

ライタープロフィール

カリフォルニア州レドンドビーチ在住。愛知県豊田市生まれ。21歳で渡米後、レストランでアルバイトをしながら、バンド活動とサーフィンに没頭。メディア運営に興味を持ち始め、ビジネスの世界へ。
全米最大級の日系オンラインメディア運営会社にて、広告販売を中心とした営業部の立ち上げ、新規エリア開拓、マーケティング戦略・イベント企画の立案、遂行など、営業/販売サイドの統括責任者として実績を残す。11年連続売上増に貢献した後退社。2016年1月、米国法人 Zero-Hachi Rock, Inc.を設立。ロサンゼルスを中心に、起業支援、日系企業のセールス/マーケティング支援、日本企業のアメリカ進出支援を主な事業として活躍中!

この著者への感想・コメントはこちらから

Name / お名前*

Email*

Comment / 本文

この著者の最新の記事

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  2. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  3. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  4. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
  5. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  6. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  7. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  8. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
ページ上部へ戻る