海外教育Navi 第91回
〜一時帰国が困難ななかでの帰国後の学校の選び方〜〈前編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。


Q.一時帰国がままならず、帰国後の子どもの学校をどう決めたらよいのかわかりません。受け入れ校の選び方などについて教えてください。

はじめに

新型コロナウイルス感染症の影響が世界中に広がり、保護者の皆さんはお子さんの感染予防、オンラインでの学習や帰国後の学校選択について等、さまざまな不安を抱えていることと思います。日本の教育制度では、中学校卒業までの9年間が義務教育になっているため、その間の年齢で帰国する場合、入学選抜を行っている学校を選択しなければ、受験(検)をしなくても住民登録をした地域の公立学校の年齢相応の学年に入ることができます。

今回は、帰国後に国内の中学・高校を受験するうえで、「海外からできる有効な学校選択の方法」について留意すべき点をお伝えします。

「帰国生受け入れ校」とは


帰国生受け入れ校とは入学・編入学試験の方法や入学後の指導において帰国生に対して特別な配慮をする学校で、それぞれ帰国生への配慮の仕方が異なります。

「帰国生への適応教育を重視するか」、「帰国生の海外生活を重視するか」により、大きく4つのタイプに分かれます(分類図参照)。このように帰国生受け入れ校といっても特色は学校によってさまざまです。入試方法だけで判断せず、帰国生に対してどのように指導・配慮しているかを見ていく必要があります。

つまり、どのタイプの学校が帰国後に指導・支援を受ける学校としてお子さんにとってよいかを考えることが大切です。

帰国生入試の特徴

帰国生入試は海外で学んできたことに配慮して一般入試とは別枠で実施されます。そのおもな特徴は「出願資格」「選考方法」「入試日程」等です。

(1)出願資格・条件
海外滞在年数、現地校・インターナショナルスクールもしくは日本人学校の在籍年数が1〜3年以上、帰国後の期間が1〜2年以内という条件が多くの学校で定められていますが、条件が異なる学校も少なくないので入試要項等で事前に確認しておきましょう。

高校を受験する場合は義務教育ではないため、入学・編入学するには選抜試験に合格しなければなりません。また日本の義務教育修了(中学校卒業資格)、もしくは海外で学校教育の9年の課程を修了しているか、入学する年の3月末までに修了見込みであることが出願資格として求められます。

海外の現地校やインターナショナルスクールでは学年の修了時期が日本と異なります。たとえば翌年の6月に9年生(中3)を修了する場合、日本の高等学校への出願資格がありません。このような場合は遅くとも12月ごろには帰国し、日本の中学3年生に編入することによって、その学校の「卒業見込み」で受験することができます。9年生を6月に修了したのちに帰国する場合は、高校1年生の9月編入学試験を目指すことになります。ただし9年の課程が3月末に未修了でも柔軟に対応してくれる学校もありますので、学校に直接問い合わせてみるとよいでしょう。

(2)選考方法
私立中学校や公立の中高一貫校の入試では2教科(国語、算数)だったり4教科(国語、算数、社会、理科)からの選択だったり、あるいは、英語か算数の1教科のみ、面接や作文のみ、教科を超えた総合的な思考力や表現力などを見るための「適性検査」のみなどと多種多様です。ただし中学校では一般入試においても、2020年度から始まった大学入試改革の影響を受け、21世紀のグローバル社会に対応し得る資質・能力を問う「英語入試」「思考力入試」「適性型入試」「自己アピール(プレゼンテーション)型入試」などを実施する学校がここ数年、増加しています。

公立高校の選考方法は一定の配慮のもと、都道府県ごとに違いがあります。そのため、帰国する地域の入試要項を事前によく調べておくことが重要です。

私立高校では、選考方法は学校ごとに異なり特色ある入試が行われています。多くの学校が3教科と面接を基本としていますが、書類選考や面接のみにしている学校も複数あります。

(3)入試日程
私立学校の帰国生枠入試の時期は一般入試よりも早く、9月から始まり2月中旬まで続きますので、まえもって計画を立てておきましょう。

(4)編入学
各学校での受け入れ体制はさまざまです。編入生の受け入れについては、欠員が生じたときに募集する学校が多いのですが、学期ごとに募集したり、随時相談により受け入れたりする学校もあります。ただし、中学・高校においてはそれぞれ3年生の2学期以降は、募集を行う学校が少なくなりますので注意が必要です。編入学試験の選考方法の詳細については、公立高校は各都道府県教育委員会へ、国立・私立は各学校へお問い合わせください。

→「第92回 〜一時帰国が困難ななかでの帰国後の学校の選び方〜〈後編〉」を読む。

今回の相談員

海外子女教育振興財団教育相談員
橋本 芳登

大阪府の公立小・中学校で教諭、教頭、校長を歴任。大阪府大東市教育委員会指導主事として3年間勤務。1995年の広州日本人学校(中国)創立時に教諭として、2016年からはヨハネスブルグ日本人学校(南アフリカ)に校長として勤務。2019年より海外子女教育振興財団の教育相談員を務めている。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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