- Home
- ライフ
- アメリカ不動産最前線
- 【ニューヨーク不動産最前線】 集合住宅の売買時はご注意
【ニューヨーク不動産最前線】
集合住宅の売買時はご注意
- 2022年3月11日
ニューヨーク市の物件は大きく分けて3つあります。集合住宅ではコンドミニアムとコープ、それとタウンハウスと呼ばれる3〜4階建ての独立した建物です。通常コンドミニアムとコープにはビルの運営を担うボードと呼ばれる役員会があり、アパートの売買には必ずボードの承認が必要となります。売り手と買い手が合意したからといっても即クロージングとはならないのです。ボードの承認手続きには1カ月から3カ月かかります。
では、ボードに承認されるための条件とは何でしょうか。コンドミニアムの場合は買い手の資金力があれば基本的にOKなのですが、コープの場合は独自の審査基準があり、購入を拒否されることがあります。そのため、申請を始める前にそのコープが買い手に向いているかどうかの判断が必要になります。ここまではご存知の方も多いのではないでしょうか。
ところが、資金力があってもクレジットヒストリーが良くても、ボードが要求する書類がすべて完璧に用意できても、ボードに断られる場合があります。それは、購入価格が低すぎる場合。さまざまな理由で、売り手と買い手がとても低い値段で売買契約に同意することがありますが、この金額があまりにもマーケットプライスからかけ離れていると、ビルの価値を下げるという理由でボードは売買申請を却下する場合があるのです。
コンドミニアムの場合は却下というより、厳密には買い手ではなくコンドミニアム(ボード)に購入の権利が移ります。売り手と買い手が合意していた金額でコンドミニアムがアパートを買い取ることになるので、売り手にとっては実質的な損失にはなりません。買い手が変わっただけです。ただし、売り手が家族や友人に安く譲ろうと思っていたような場合には、そのプランは成功しないということです。
余談ですが、コンドミニアムはFirst Right of Refusal(第一拒否権)という売買申請を拒否する権利を持っています。審査で問題なければ、ボードはこの権利を放棄することによって、実質的に売買申請を認めるという決定がなされます。コンドミニアムの承認がApprovalではなくWaiverと呼ばれるのはこのためです。First Right of Refusalの権利を行使する場合はコンドミニアムがアパートを買い取ることになります。
コープの場合は単純に却下となります。最終的に却下を言い渡す前にコープが売値を指定してきて、その値段かそれ以上で買い手が購入することに同意すれば契約を進めることができまるので、買い手に資金力があることが前提です。買い手が指定の値段に同意しなければ、コンドミニアムと違ってコープが買い取るということはないので、売り手は申請にかかった数カ月間が無駄になった挙句、また一からのやり直しとなります。もちろん買い手からのペナルティ等はありません。
ということで、ニューヨークの集合住宅の場合は他と比べてちょっとお得かな……という程度の物件はあっても、基本的に超お買い得物件というのは存在しません。売り手が安く売ってもいいよと思っても、最終的にビルの許可が下りない可能性があるからなのです。
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします