自分の遺族年金を確認しよう〜愛する家族を守るため、日本の遺族年金を知る

自分が亡くなった時に、残された遺族(妻や夫、子)が遺族年金をもらえるかどうか、またもらえる場合どれくらいの金額かご存知ですか? 重い病気を患っていて余命宣告でもされない限り将来のことは予測できません。日米とも遺族年金は遺族にとって大変重要なものなのですから、今のうちに確認しておきたいものです。

1.日本の遺族年金〜種類、受給対象者、金額

(1)種類、受給対象者、金額

日本の公的年金には就労者が勤務先企業を経由して加入する厚生年金と、それ以外のすべての人(自営業者、主婦、学生など)が加入する国民(基礎)年金があります。それぞれに遺族厚生年金、遺族基礎年金がありますが、受給対象となる遺族の範囲が異なります。遺族厚生年金の受給対象者は配偶者で、金額は亡くなった加入者が受給している(する予定)の老齢厚生年金の4分の3です。一方、遺族基礎年金は子(18歳未満)がいる配偶者、または子自身で、金額は78万900円(2021年度)と一律です。子のいる厚生年金加入者が死亡した場合、配偶者には遺族厚生年金、遺族基礎年金の両方が支給されます。

種類対象となる遺族受給額
遺族厚生年金配偶者※1加入者の老齢厚生年金の4分の3の額
遺族基礎年金子のいる配偶者
又は子
子1人の場合:78万900円
2、3人目:各22万4700円が加算
(2)死亡した年金加入者の加入要件

遺族年金が支給される場合の加入者の要件として、下記のいずれかが必要です。

  1. 年金加入中の現役世代の人(厚生年金加入中の日系企業駐在員や国民年金任意加入者など)
  2. ②現在は年金に加入していない人で過去の加入期間(保険料納付または免除の期間)が25年以上の人

海外居住者の場合は、②について25年以上なくてもカラ期間または居住国(下記、日本と社会保障協定を締結している国)の年金加入期間と通算(合計)して25年以上でも要件を満たします。

ドイツ アメリカ ベルギー フランス カナダ オーストラリア
オランダ チェコ スペイン アイルランド ブラジル スイス
ハンガリー インド ルクセンブルグ フィリピン スロバキア
(3)遺族の受給要件

配偶者、こども、①死亡した年金受給者(加入者)によって生計を維持されていた、②年収が850万円以下である、といった要件が必要です。

2.日本の遺族年金〜請求方法

老齢年金同様必要書類一式を日本全国にある年金事務所で提出するか、海外から郵送で提出します。委任状を提出すれば日本にいる代理人(親族、知人、社会保険労務士など専門業者)が請求することもできます。インターネット経由でのオンライン手続きには対応していません。

3.日本の遺族年金〜提出書類

請求手続きの際に必要な提出書類では、加入者の死亡や家族関係を証明するものが必要となります。日本には戸籍や住民票、所得などに関する証明書(公文書)の交付制度が整備されていて便利なのですが、海外ではそうした制度が整備されてないケースが多く、提出書類もやや面倒です。下表は日本居住者と海外居住者それぞれの基本となる提出書類の一覧です。海外居住者でカラ期間、居住国の年金加入期間と通算するケースではその他の書類も必要となりますので、(日本年金機構や弊社へ)個別にお問い合わせください。

提出内容日本居住者海外居住者
請求書遺族年金請求書(ダウンロード可)
家族関係の証明戸籍謄本(または除籍謄本)
婚姻証明書コピー
居住地の証明住民票(除票)在留証明書
死亡・死因を確認するもの死亡診断書
遺族の所得の証明(非)課税証明書確定申告書コピー

4.関連情報

(1)死亡一時金

死亡者の加入期間が足りず遺族基礎年金は受給できないが、36カ月以上加入していた場合遺族に一時金として支給されます。ただし死亡後2年以内の請求手続きが必要です。

(2)遺族年金の権利がなくなるケース

配偶者が再婚した場合や、配偶者、子が親族以外の者の養子となった場合は権利がなくなります。

(3)配偶者が外国籍または行政手続きが苦手なケース

日本居住者と異なり海外居住者で配偶者(妻)が外国籍で日本語が苦手な場合、手続きは困難となります。あらかじめ日本で手続きしてくれる代理人を見つけておくと良いでしょう。

※1:配偶者が夫の場合、60歳まで支給停止されます。


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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、介護・葬儀・相続など日本在住の老親のサポート)を行う。

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