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海外教育Navi 第107回
〜日本の小学生の習い事事情〜〈前編〉
記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)
- 2022年9月1日
海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育アドバイザー等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。
Q.小学生の子どもを連れて帰国します。日本の小学生は塾や習い事で忙しいと聞きますが、その現状と帰国に際しての留意点を教えてください。
海外で生活していたご家族にとって、帰国してからのお子さんの学校生活については、さまざまな面から不安があることと思います。特に、海外生活が長かったり、日本での学校生活が初めてだったりする場合はなおさらのことと思います。
帰国に際して、どんなことに留意してお子さんの生活を考えていくか、小学生段階を中心にお伝えしたいと思います。
生活適応・学校適応を第一に
日本人学校に通われていた場合は学校生活のリズムが大きく変わらないので、比較的適応への壁は低いといわれています。しかし現地校やインターナショナルスクールに通われていた場合は大きく異なりますので、帰国前に日本の学校生活の様子、特に授業の様子や学習習慣の違いなどを確認して、そのつどお子さんが理解できるように保護者のかたがサポートしてあげてください。
たとえば日本の一般的な学校であれば、掃除当番や給食当番などがあります。海外の学校にはほぼない習慣です。また、持ち物が多かったり、学校の決まり事なども細かかったりします。このような学校文化の違いに慣れるまで時間がかかる場合があります。
また、学校の行き来も基本的に徒歩になります。近所に友達がいたとしても、しばらくは送り迎えをして、道の歩き方や交通ルールについて教えてあげましょう。
例を挙げればきりがありませんが、まずは学校や日本の生活に慣れること、お子さんの生活基盤を安定させてあげることを大切にしてください。
どうしても保護者のかたは学習のことに目が行きがちで、「授業についていかれるかしら」、「遅れをとっていないかしら」とすぐに塾通いなどを始めさせたがる傾向があります。それはお子さんにとっては大きな負担になります。学習についての心配は生活が安定してからです。
まずはお子さんが一日の学校生活を終えて帰ってきたら「お帰り!」と笑顔で出迎え、根掘り葉掘り話を聞き出そうとするのではなく、お子さんが自分から話すことを丁寧に聞いてあげてください。そしてそのなかで気になることがあれば見逃さず、「困っていることはない?」と声をかけたり、担任の先生に相談したりして早めに心配事がなくなるようにしてあげるとよいでしょう。
「塾」や「習い事」は必要に応じて
ご相談の内容に「日本の小学生は塾や習い事で忙しいと聞きますが」とありましたが、そのようなことはありません。確かに、塾または習い事等、学校外の活動を行っている子どもは日本の小・中学生の約80パーセントにあたるという調査結果が出ています。年齢が低い方が習い事が多い傾向にあり、年齢が高くなると塾の割合が増えてきます。
この数字だけ見るとかなりの子どもたちが学校外の活動をしているように見えますが、塾だけに限って調査すると、塾通いをしている小学生の数は全体の約25パーセントほどです。これは1年生から6年生までの平均です。高学年になるとこの割合が少し高くなり、30〜40パーセントほどになります。
一方習い事は、小学校に上がる前から始めている場合も多く、小学1年生の段階で約70パーセントに上ります。そしてこの割合は年齢が上がるにつれて下がっていく傾向にあります。
「忙しい」というほど週に何日も塾や習い事に通っている子どもはごくわずかで、1〜2つくらいのケースがほとんどだということです。
そもそも塾や習い事というのは学校外の活動ですから、通うのか通わないのかの判断は、家庭の教育方針によるものです。決して周りの人がやっているから行かなければと考えるものではありません。お子さんが塾での学習を必要としているのか、その習い事をほんとうにやりたいと思っているのか等、特に小学生や幼児の場合は保護者がしっかり考える必要があります。
※次回に続きます。次回記事は9月15日(木)に掲載予定です。
海外子女教育振興財団 教育アドバイザー
中村昌子
1984年から帰国生だけの特設学級(国際学級)を併設する東京学芸大学附属大泉小学校に35年間勤務する。その間、国際学級主任、担任を経験し、帰国生への相談・面接等も担当する。2012年より同校主幹教諭。退職後19年より、同校非常勤講師、東京学芸大学非常勤講師を務める。20年10月より海外子女教育振興財団の教育相談員。
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