第56回 GPAと大学

文&写真/福田恵子(Text and photo by Keiko Fukuda)

3月のある日の午後、自宅の電話が鳴った。ニナが通う高校からのいつもの録音メッセージだった。内容は校長からの「今日、1学期の成績に関するeメールを一斉送信した。その中には我が校の学年別、男女別などのGPAの表が含まれている。よく読んで今後の対策に役立ててほしい」といったもの。個別の成績表ではなく、学校全体のGPAの傾向をまとめたものを送った、という意味だ。

GPAとは? 各科目でAを取ると4、Bは3、Cは2、Dは1となり、それらを全科目分足して平均値を出したもの。つまり、オールAだと4.0になる。そしてオナー(優等)クラスやAP(大学1年程度で学ぶ内容)クラスで良い成績を取ると、エクストラクレジットになり、4.0以上のGPAにもなる。

このGPAとSATなどの統一テストの結果、さらに課外活動やボランティア経験などが大学合否の判断材料になる。そこで有名大学の場合、どの程度のGPAの高校生が進学しているのかを、プリントンレビュー(princetonreview.com)でチェックしてみた。

地元の人気大学UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)は4.33。高くてびっくり(私が無知なだけ)したので、UCLAの公式サイトに行って調べたところ、その内訳も書いてあった。カリフォルニア州内からの入学生の平均が4.29、州外からの入学生が4.56、留学生が4.07。4.56って一体? ということはつまり、州外からUCLAに入学している学生はとてつもない成績優秀者なのだ。

次にUCLAのライバル校、ロサンゼルスにある私立大学USC(南カリフォルニア大学)もチェック。すると3.73と出た。北カリフォルニアの私学の雄、スタンフォードは3.95。こうしてGPAだけ見ると、UCLAの難関レベルが伝わってくる。

科目の選択で分かれる

話を高校からのeメールに戻そう。録音メッセージを聞いた数分後、メールが到着。長い文面を読む前にさっさと学校全体のGPAの表を開いた。4学年全生徒の平均は3.17。これはつまり、平均でB以上の成績を取っているということになるのでは? アメリカでは高校までが義務教育であり、日本のような中学受験や高校受験がないことを考えると「非常に素晴らしい」というのが、まるで素人の保護者の私の感想である。

さらに表には、「1以下」「1.0から1.49」、上は「4.0以上」といったGPAのスコアを細かく分けたゾーンが設定され、各ゾーンの分布人数とパーセンテージも書いてある。下の方のゾーンは真っ赤に色分けされ、上の方は緑色。実にシビアだ。

学校としては、こうして生徒が今、どこのゾーンにいるのかを本人と保護者に把握させ、奮起させようという意図があるのだろう。

本人の成績、及びGPAの学年での順位は、学校のサイトにログインすればいつでもチェックできる。学校側は「毎週、できれば毎日、サイトに行き、自分の成績を確認すること。納得できない科目に関しては担当教師にすぐになぜその成績なのかを聞くこと」と推奨している。鉄は熱いうちに打て、なのである。

そして今、ニナの高校2年目の選択科目の申込締め切りが迫っている。科目や担当教師によって、当然GPAは変わってくる。科目の選択でGPAの生死が分かれる(大げさか)と言ってもいい。学校のことにほとんど口を出さない私だが、珍しく「カウンセラーのところに行ってどの科目にするか相談した方がいいんじゃない?」とニナに言ってみた。すると「わかってる。ちゃんと考えてやるから」と突き放されてしまったのだった。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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