日本入国と二重国籍問題

文&写真/福田恵子(Text and photo by Keiko Fukuda)

この号が出る頃、私とニナは日本での3週間の滞在を終えてアメリカに戻っているはずだ。ニナにとっては4年ぶりの日本。3年前の夏、ニナは高校の最終学年を前に数学のサマースクールに通うことにした。「日本に行くのは高校を卒業してからでいい」と言う本人の決断を尊重したわけだが、ご存知のように2年前からパンデミックによって日本の入国規制のハードルが上がった。九州にある私の実家に向かうためには、2週間、羽田または成田の空港近くで自主隔離しないと日本国内の公共交通機関を利用できないというルールに阻まれ、「コロナが収まったら日本に行こう」と我慢した。しかし、コロナはなかなか収まらなかった。

2022年の3月、事態は進展した。ワクチンを3回接種していれば日本入国後の自主隔離が免除になったのだ。そこで私は夏休みにニナと日本へ行くことを視野に入れ、4月に単独で日本に帰省して予行演習をした。そして、日本から戻った私はすぐに在ロサンゼルス日本国総領事館にニナのためのパスポート申請の予約を入れた。そう、現在、日本は外国からの入国者をビザ取得者に限定している。ニナのようにアメリカで生まれ育った二重国籍者は日本のパスポートを取得しないと日本には入国できない。実はニナの日本のパスポートを申請したのは過去に一度きり。赤ちゃんの時に申請しただけで、あとは毎年のように日本に行くたびアメリカのパスポートで往復していた。それでまったく不便はなかった。今回のパンデミックを迎えるまでは……。

出していて良かった在留届

ロサンゼルスの総領事館は申請者の密を回避するために、いつからか予約制になった。オンラインで予約を入れようとすると2週間先しか空いていない。それでもなんとか予約を取り、大学のクラスがあるニナに代わって私が代理申請に行くと、総領事館の職員は非常に親切に対応してくれた。しかも在留届を提出しているかどうか聞かれ、長男のノアが日本に在住していることを伝えると在留届の内容を更新してくれた。

こうして申請の2週間後、ニナは日本のパスポートを無事に取得。それと同時に日本行き航空券も購入した。そして、次なるミッションはJRパス(一定期間中JRが乗り放題のパス。利用資格者は外国人か外国に10年以上在住している在外邦人)の購入だ。JRパスは公式サイトでも旅行代理店でも買えるが、今回の問題は「日本のパスポートで入国するために、グリーンカード保持者同様にアメリカに10年住んでいる証明書」が必要だということだ。これ、パスポート申請時にやっておけば良かったのに、後で知ったので二度手間になった。

それにしても、19歳の女の子が10年間海外に在住している証明とは一体何か? 悩む前に総領事館に電話して聞くと「10年前の運転免許証か、買い物をしたレシート」と言われた。当時9歳の子どもにそんなものはない。そこで言われたのが「在留届は提出していますか?」と、窓口でされたのと同じ質問。つまり在留届が10年以上前に提出されていて、そこにニナの名前があれば「10年在住している証拠」になるというわけだ。そこで在留届の写しを取り寄せることで問題解決。

大坂なおみ選手でにわかにクローズアップされた二重国籍問題。海外生まれの邦人が二重国籍を所有しても、いつかは国籍選択届けを提出しなければならないと、日本の国籍法では定められている。今回、ニナのための準備で日本の国籍法の存在を再認識させられた。そして私はアメリカと日本、両方のアイデンティティーを持っている子どもの親として、アメリカが多重国籍を認めているように、日本も二重国籍、いや多重国籍を認めてくれる日が来ることを願っている。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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