海外教育Navi 第8回
〜帰国生受け入れ校の選び方〜〈後編〉

記事提供:『月刊 海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団に所属するプロの相談員たちが一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。

Q.帰国生を受け入れる学校は多いと聞きます。学校をどのように選べばよいのでしょうか。

前回のコラムでは、帰国生受け入れ校に関する小・中・高校の特徴をそれぞれ紹介しました(前回記事へ)。今回はその続きをお話しします。

帰国生受け入れ校の入学・編入学試験

帰国生としての資格・条件を設定して行われる帰国生入試は一般入試よりも早く行われることが多く、私立では11月ごろから実施する学校もあります。

帰国生入試の出願資格
保護者の海外勤務に伴って海外に滞在した年数と、帰国後の年数で出願資格を決めている学校が多いです。私立では公開されている資格・出願条件に合わなくても、個別相談に応じてくれる場合もあるので、学校に問い合わせてみましょう。

中学校の帰国生入試形態
中学校の帰国生入試の多くは、国語や算数を主とした筆記試験と面接(一般的には保護者同伴)、そのほか在学していた学校の成績証明書や海外での活動報告書などを、総合的に判断して合否が決められます。学校によっては、社会・理科を含めた4教科の筆記試験や作文などを加えている場合もあります。また現地校やインターナショナルスクールからの受験者には、英語の試験や作文を行う学校も増えています。

高校の帰国生入試形態
高校の帰国生入試の選抜方法は大きく分けると、
①学科試験重視型
②書類審査・面接重視型
③外国語・作文・面接重視型
となります。①では、国語・数学・英語の3教科が多いですが、社会・理科を含めた5教科の筆記試験を行う学校もあります。

編入学
編入学は一般的に欠員が生じたときに実施されていますが、4月、9月、1月等の学期始め等に行ったり、随時相談により受け入れたりする学校もあります。ただし中学・高校では、それぞれ3年生の2学期以降は募集する学校が少なくなります。また入学後の授業についていける学力があるかを見るために、国語・数学・英語の試験を課すのが一般的です。

学校選択のポイント

学校選びでは、お子さんと学校の相性をしっかり見極めることが大切です。お子さんの特性(性格、興味・関心、学習に対する姿勢、将来への希望、海外での学習経験・生活体験等)から、「学校生活で育んでほしいものは何か」「どのような学校生活を送らせたいか」を家族でよく話し合い、お子さんにとって重視すべき点をはっきりさせましょう。

学校を選ぶうえでのチェックポイントは以下の項目です。

教育目標と教育方針
教育課程と学習内容・授業の進度
部活動や学校行事
校則や生徒指導
帰国生の在籍数
入学・編入学の選抜方法
卒業生の進路/施設設備・寮の有無
通学時間等

教育目標と教育方針を確認すると、どのような子どもの育成を目指す学校であるかわかります。カリキュラムと授業内容、授業のレベルと進度、日々の課題や予習の量、補習の有無、進路選択の方法、学校行事への生徒の取り組み状況、部の活動状況等を調べると、ふだんの学校生活が見えてきます。

また入学・編入学の選抜方法から、学校が帰国生に何を期待しているかが推しはかれます。インターネットや書籍等で情報を収集するほか、学校説明会に参加したり、実際に学校を訪問して担当の先生の説明を聞いたり在校生の様子を見学したりすると、学校の雰囲気を肌で感じることができます。海外滞在中の方には一時帰国等を利用して学校に足を運ぶことをお勧めします。

本財団ホームページの「国内の学校をお探しの方」のサイトから、帰国生受け入れ校を検索できます。都道府県を選択すると、各学校のホームページにリンクした一覧となり、「学校詳細ページ」をクリックすると、各校の担当者が帰国生受け入れにかかわる特徴を紹介する<担当者からのメッセージ>がご覧いただけます。学校の様子をビデオ映像で紹介している学校もありますので、学校選択の第一歩にご活用ください。

今回の相談員
教育相談員
植野 美穂(うえの みほ)

東京学芸大学附属高等学校大泉校舎開設以来、数学の教師として帰国子女教育に携わる。同大学附属国際中等教育学校の開校に開設準備室長としてかかわり、2007年から同校教諭。09年より海外子女教育振興財団の教育相談員。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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