世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2023年1月現在、167カ国で1157件(文化遺産900件、自然遺産218件、複合遺産39件)が登録されている。
カナダの北西部、ノースウェスト準州に広がるナハニ国立公園は、カナディアン・ロッキーの最北端に位置する秘境の大峡谷。地殻変動で海底が隆起したことによって形成されたナハニの中央部にはサウス・ナハニ川が流れており、大地を引き裂くかのように切り込んだ深さ3000フィート以上の大峡谷が広がっている。
ここが未開の秘境とされる所以は、その奇跡的な環境によるもの。サウス・ナハニ川流域は北緯60度以北の寒冷地にもかかわらず、約30万年間続いた氷河期に浸食を受けることがなかった珍しい場所だ。最終氷河期、北米大陸は東西から押し寄せる2つの大きな氷床に覆われていた。ナハニ国立公園はこの2つの氷床の間に位置しており、氷河は最後までこの地に到達することはなかった。そのためナハニは氷河に浸食されることなく、原始の自然の姿をそのまま残す貴重な場所となったのだ。
雨や川で浸食された峡谷沿いには巨大な滝や複雑な鍾乳洞、カルスト地形、温泉などが点在しており、北アメリカでもっとも美しい峡谷の一つに数えられている。ほかでは見ることのできない変化に富んだ美しい地形が評価され、1978年に世界自然遺産に登録された。
ダイナミックな大自然の中へ
47万ヘクタールにも広がるナハニ国立公園の1番の見どころとなっているのは、ヴァージニア滝。サウス・ナハニ川の行き着く先にあるこの滝は、落差約300フィートもあり、その規模はナイアガラの滝の2倍。豊富な水量が地響きを立てるように流れ落ちる様子は圧巻だ。ここからサウス・ナハニ川に沿って4つの大峡谷が連なっており、周辺には大小さまざまな川が流れている。特にサウス・ナハニ川とフラット川は周辺の山脈よりも歴史が長く、渓谷の成り立ちを知るうえで世界的にも貴重な見本とされている。
ハイキングにおすすめなのが、ラビットケトル湖周辺。湖畔にはハイキングトレイルが複数あるほか、周辺にはキャンプグラウンドが2カ所ある。また、ラビットケトル・ホットスプリングスでは、約1万年前に形成されたカナダ最大級の石灰石を見ることができ、温泉に浸かることも可能だ。
また、ナハニ国立公園は野生動物が多く生息していることでもよく知られている。オオカミやグリズリー、カリブーといった珍しい動物のほか、高山地帯でハイキングをすれば、ドールシープやマウンテンゴートに出会えるチャンスも。野生動物をじっくり見たいなら、ツアーに参加すると良いだろう。
そのほか、オーロラ鑑賞やボート・カヌーツアー、ヘリコプターでの上空からの鑑賞ツアーなど、さまざまなアクティビティがあるナハニ国立公園。この地にひと足踏み込めば、そこには非現実の世界が待っている。
遺産プロフィール
ナハニ国立公園
Nahanni National Park
登録年 1978年
遺産種別 世界自然遺産
parks.canada.ca/pn-np/nt/nahanni
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