「ガブリチキン」加藤弘康氏、アメリカ進出の舞台裏

Business Close Up アメリカで新たな事業を手がける人物をクローズアップするインタビューシリーズ。
名古屋で事業を展開した「ガブリチキン」をカリフォルニア州トーランスにオープンし、経営、運営を行なっている社長加藤弘康氏に話を聞く。

ガブリチキンオーナー 加藤弘康氏

アメリカ進出のきっかけ 

2011年に名古屋で創業した「ガブリチキン」は、日本全国で最大96店舗まで拡大。その後イタリアン、フレンチ、和食、ラーメン、焼肉など、多彩な業態へと展開しました。
長年ロサンゼルスでの出店を夢見ていた加藤さんは、日本の経営を後任に託し、アメリカ市場への進出準備を開始。そして2024年、ついに「Gaburi Chicken」をオープンしました。  ロサンゼルス・トーランスに位置するこの店舗は、多国籍な顧客基盤を意識しながら、日本の食文化の魅力を発信。現地の人々に本場の味を届けています 。

自分好みに仕上げる楽しさが魅力 

ガブリチキンの人気の秘訣は、味の良さだけでなく、トッピングのカスタマイズが可能な点にあります。「わかりやすい味とシンプルなメニュー、そして自分好みのトッピングが楽しめるのが強みです」と加藤さん。 
骨付鶏(写真上)には、激辛ソース、タルタル、おろしポン酢など全13種類のトッピングを追加でき、自分だけのオリジナルメニューが楽しめます。 
「アメリカでは『自分で選ぶ』文化が根付いており、スターバックスやサブウェイのようにカスタマイズ可能なメニューが主流。カスタマイズの自由度が成功のポイントです」と加藤さんは述べます。

日本食の需要とターゲット層 

「カリフォルニアの日本食需要は大きい。ただし、日本人だけでなくローカルの人々にも愛される店作りが重要です。客層は日本人が約1〜2割で、時間帯によって異なる傾向があります」と加藤さんは語ります。今後は、総合型レストランから専門型への移行が進むと予測されており、寿司、ラーメン、焼き鳥など特化型店舗が増加。本格的な味や質を追求する流れが、さらに強まっていくでしょう。 

消費者ニーズの変化 

「消費者は価格に敏感です」と加藤さん。20ドルでは売れにくいが、16〜18ドルにすると売り上げが増加したといいます。「景気の影響で外食の回数が減っているのでは」と分析。 
また、ロサンゼルスの飲食市場では「高価格帯の少人数おまかせスタイル」と「手軽な低価格帯」の二極化が進行。中間価格帯の店舗は競争が激しく、価格戦略が重要になっています。 

アメリカでの経営課題 

加藤さんは「住みたい場所でビジネスをしたい」との思いからロサンゼルスを選びました。しかし、言語の壁や文化の違いを課題に感じると語ります。 
「アメリカでは役割分担が明確で、日本のような柔軟性は少ないが、その分、責任感やサービス精神が高い」と分析。また、食材の仕入れや配送のシステムの不便さもあるものの、「その不便も楽しむことが大事」と前向きです。 

日本食レストラン成功の条件 

加藤さんは「アメリカでは、一度支持を得た店は長く続く傾向があります。そのため、個性を打ち出し、明確なストーリーやコンセプトを持つことが重要です」と語ります。 
日本とは異なり、アメリカでは流行の模範が少なく、時間をかけて業態を育てられるのが魅力。そのため単に本格的な味を追求するだけでなく、ブランドの価値を伝え、顧客との関係を深めることが成功の鍵となります。

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