第18回 「八百八橋はないけれど」

文&写真/小野アムスデン道子(Text and photos by Michiko Ono Amsden)

2層になった高さが目立つ「鉄橋Steel Bridge」Photo © Michiko Ono Amsden

2層になった高さが目立つ「鉄橋Steel Bridge」
Photo © Michiko Ono Amsden

東西に川で分かれる
町を繋ぐのは12の橋

 ポートランドは、町を東西に分けるようにウィラメット川が真ん中を流れている。そこに中央部だけで9つ、合計だと12もの橋がかかっていて、「ブリッジタウンBridgetown」というニックネームがあるぐらい。ポートランド国際空港があるのは町の東側なので、空港から自宅のある西側に向かうのに、ウィラメット川にかかるいずれかの橋を渡っていく。隣の橋もいくつか見えて、あーポートランドに戻って来たなという感じがする。

 川によって東西に分かれるポートランドを、さらに南北に分けている道路バーンサイドから続く橋が「バーンサイド橋Burnside Bridge」。1926年に出来た跳ね橋で、2012年にアメリカの国家歴史登録財となった。橋には、イタリア・ルネサンススタイルの塔が立ち、橋を渡った西側にポートランドのアイコンの一つでもあるホワイトスタッグ(Portland Oregon)のサインがかかっていて、夜には光り輝く。クリスマスには、鼻が赤くなって、この赤鼻のトナカイはポートランドのこの季節の風物詩だ。

 また、世界でもユニークな鉄製の二重橋で、立ち姿が目立つ「鉄橋Steel Bridge」は、上層が車やMAXというライトレール(軽量軌道交通)用、下層がアムトラックと歩行者および自転車用。

 この鉄橋の横で赤く塗られて目立つ橋が「ブロードウェイ橋Broadway Bridge」。世界一長いバスキュール橋(跳開橋)として造られ、かつては黒い色の橋だったのが1963年に目立つ金門橋の赤に塗り直された。

オレゴン富士のフッド山が向こうに見える「ロス・アイランド橋Ross Island Bridge」も美しい。Photo © Michiko Ono Amsden

オレゴン富士のフッド山が向こうに見える「ロス・アイランド橋Ross Island Bridge」も美しい。
Photo © Michiko Ono Amsden

橋を愛するイベントも
エコなポートランド流

 
 近年、新たに加わった橋が、2015年に出来た「ティリカム・クロッシング Tilikum Crossing」。“Tilikum”は、この地のネイティブアメリカン、チヌーク族の言葉で“人々”という意味。この橋は、歩行者、自転車、バスやライトレールなどの公共交通機関のための橋で、自家用車は通れないという、とてもサスティナブルなポートランドらしい“人々のための橋”なのである。

 これらの橋は、Tシャツやコーヒーマグ、コースターなどや、デザイナーズジュエリーのモチーフにまで使われている。そして、毎夏に「ブリッジペダルBridge Pedal」という自転車で橋を渡るイベントがあって、いくつかコースはあるが最長は橋すべてを60km走って渡るというもの。ウィラメット川にかかるいくつもの橋を愛するポートランド市民のまことにポートランドらしいお祝いイベントだと言えるだろう。

参考/Travel Portland 記事
https://www.travelportland.com/article/bridges-portland/

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小野アムスデン道子 (Michiko Ono Amsden)

小野アムスデン道子 (Michiko Ono Amsden)

ライタープロフィール

世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスへ。東京とポートランドを行き来しつつ、世界あちこちにも飛ぶ。旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、翻訳多数。日本旅行作家協会会員。

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